新生児の呼吸と循環適応
母性看護学 / 新生児期・適応
解説
新生児期とは、出生後28日未満の時期を指します。今回は新生児の呼吸と循環の生理的適応、ならびに代表的な異常である呼吸窮迫症候群や低体温について解説します。
新生児の呼吸の特徴
新生児の正常な呼吸数は40〜60回/分で、成人より頻回です。横隔膜の動きが優位な腹式呼吸を行い、また鼻から呼吸する鼻呼吸が優位であるため、鼻腔の閉塞は容易に呼吸困難を招きます。経鼻胃管を挿入する際には片側の鼻孔のみを使用し、対側の気道を確保することが重要です。
周期性呼吸と無呼吸発作
新生児では、規則的な呼吸と5〜10秒程度の短い無呼吸が交互に現れる周期性呼吸がみられます。これは早産児で顕著ですが、成熟児でも生理的範囲としてみられます。一方、20秒以上続く無呼吸やチアノーゼ・徐脈を伴うものは病的であり、無呼吸発作と呼びます。
呼吸窮迫の徴候
呼吸障害が疑われる所見として、陥没呼吸(吸気時に胸骨や肋間が陥没する)、呻吟(うめくような呼気音)、鼻翼呼吸、多呼吸、チアノーゼが挙げられます。これらは新生児の呼吸状態を観察するうえで重要な指標です。
胎児循環から新生児循環への移行
胎児は肺呼吸を行わず、ガス交換は胎盤で行われています。そのため胎児循環には、肺を経由しないための3つのバイパスが存在します。すなわち、右房と左房を直接つなぐ卵円孔、肺動脈と大動脈をつなぐ動脈管(ボタロー管)、臍静脈を下大静脈につなぐ静脈管(アランチウス管)です。
出生後の循環適応
出生して臍帯が結紮されると胎盤循環が途絶し、体血管抵抗が上昇します。一方、肺呼吸の開始により肺胞内の酸素分圧が上昇し、肺血管抵抗が低下して肺血流が急増します。その結果、左房への還流が増え左房圧が右房圧を上回り、卵円孔の弁が押し付けられて機能的閉鎖します(解剖学的閉鎖は生後数か月〜1年)。動脈管は動脈血酸素分圧(PaO2)の上昇によって収縮し、生後約12〜24時間で機能的に閉鎖、2〜3週間で解剖学的に閉鎖します。
新生児呼吸窮迫症候群(RDS)
**新生児呼吸窮迫症候群(RDS)**は、肺サーファクタントの産生不足により肺胞の表面張力を下げられず、呼気時に肺胞が虚脱してしまう疾患です。肺サーファクタントはII型肺胞上皮細胞から分泌される脂質とタンパクの混合物で、在胎34〜35週で急速に成熟するため、それ以前の早産児で欠乏しやすくなります。
症状は出生直後から数時間以内に出現し、多呼吸、陥没呼吸、呻吟、鼻翼呼吸、チアノーゼがみられます。胸部X線では気管支透亮像を伴うびまん性の顆粒状陰影、いわゆるスリガラス様陰影が特徴です。
治療としては、早産が予測される妊婦に在胎24〜34週でベタメタゾンなどのステロイドを分娩前投与して胎児肺成熟を促進します。出生後は気管内への人工サーファクタント補充療法、CPAPや人工換気による呼吸管理が行われます。鑑別には新生児一過性多呼吸(TTN)、胎便吸引症候群(MAS)、先天性肺炎などがあります。
低出生体重児と体温管理
出生体重が2500g未満の児を低出生体重児といいます。新生児は体重に対する体表面積比が大きく、皮下脂肪が少ないため熱が逃げやすく、低体温に陥りやすい特徴があります。新生児の熱産生は主に褐色脂肪による非ふるえ熱産生に依存しています。
保温のためにクベース(保育器)を用いた環境温度管理や、母親の胸に直接抱くカンガルーケアが行われます。出生後30分以内の体温管理は予後に大きく影響するため、早期母子接触、早期授乳による低血糖予防、感染予防が重要です。出生直後の全身状態評価には、心拍・呼吸・筋緊張・反射・皮膚色の5項目からなるApgarスコアを1分後と5分後に行います。
出生後の他の生理的変化
新生児期から乳児期にかけては、消化管にも特徴的な所見がみられます。出生後最初に排泄される暗緑色で粘稠な便を胎便といい、通常は出生後24時間以内に排泄されます。24時間を超えても胎便がみられない場合は、鎖肛やヒルシュスプルング病などの消化管疾患を疑う手がかりとなります。
また、乳児は下部食道括約筋の発達が未熟であるため、学童に比べて胃食道逆流が起きやすいという特徴があります。授乳後の溢乳がみられやすいのはこのためで、授乳後は上体を高くしたりげっぷを促したりするなどの対応が必要となります。
まとめ
新生児は腹式呼吸・鼻呼吸が優位で、呼吸数40〜60回/分、心拍120〜160回/分が正常です。出生に伴い卵円孔と動脈管は機能的に閉鎖し、胎児循環から新生児循環へと移行します。早産児では肺サーファクタント不足によるRDSに注意し、低出生体重児では低体温予防のため保温とカンガルーケアが重要となります。胎便は出生後24時間以内に排泄され、乳児は下部食道括約筋の未熟さから胃食道逆流が起きやすい点も押さえておきましょう。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
新生児の正常な呼吸数は回/分、心拍数は回/分である。新生児は横隔膜優位の呼吸を行い、呼吸が優位である。
- 2.
規則的な呼吸と5〜10秒程度の短い無呼吸が交互にみられるものをといい、秒以上続く無呼吸は病的でと呼ぶ。
- 3.
新生児の呼吸窮迫を示す徴候として、吸気時に胸壁が陥凹する、うめき声のような、呼吸、多呼吸、チアノーゼがある。
- 4.
胎児循環の3つのバイパスは、右房と左房をつなぐ、肺動脈と大動脈をつなぐ(ボタロー管)、臍静脈と下大静脈をつなぐである。
- 5.
出生後、肺呼吸の開始によりが低下して肺血流が増加し、左房圧が右房圧を上回ることで卵円孔は機能的に閉鎖する。動脈管は(動脈血酸素分圧)の上昇により生後約12〜24時間で機能的閉鎖する。
- 6.
新生児呼吸窮迫症候群(RDS)は、II型肺胞上皮細胞から分泌されるの産生不足により、呼気時に肺胞がする疾患である。胸部X線ではびまん性の陰影(顆粒状陰影)を呈する。
- 7.
RDSが予測される早産では、在胎24〜34週の妊婦になどのステロイドを分娩前投与して胎児肺成熟を促進する。出生後は気管内へ人工補充療法を行い、や人工換気で呼吸管理を行う。
- 8.
出生体重がg未満の児を低出生体重児という。新生児の主な熱産生組織はであり、非ふるえ熱産生を担う。保温には保育器()や母親の胸に抱くが用いられる。
- 9.
出生直後の新生児の全身状態は、心拍・呼吸・筋緊張・反射・皮膚色の5項目からなるスコアを生後分後と分後に評価する。
- 10.
出生後最初に排泄される暗緑色の便を胎便といい、通常は出生後時間以内に排泄される。また、乳児はの発達が未熟なため、学童に比べて胃食道逆流が起こりやすい。
