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小児髄膜炎の看護

小児看護学 / 小児神経・運動器・発達障害

解説

今回は小児髄膜炎の看護について解説します。髄膜炎とは脳と脊髄を覆う髄膜(硬膜・くも膜・軟膜)に炎症が生じる疾患で、小児では発熱・頭痛・嘔吐に加え、意識障害や痙攣を起こすこともある重篤な感染症です。原因や合併症、看護のポイントを正しく押さえることが国試対策の鍵となります。

髄膜炎の病態と分類

髄膜炎は原因病原体により細菌性髄膜炎無菌性(ウイルス性)髄膜炎に大別されます。細菌性髄膜炎は肺炎球菌・インフルエンザ菌b型(Hib)・髄膜炎菌などが原因となり、進行が速く重症化しやすいため緊急の抗菌薬投与が必要です。一方、無菌性髄膜炎はエンテロウイルスやムンプスウイルスなどが原因で、細菌性に比べ予後は比較的良好ですが、合併症として難聴などを生じる場合があります。

小児に多い無菌性髄膜炎の代表が、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ、ムンプス)に合併して起こるムンプス髄膜炎です。流行性耳下腺炎はムンプスウイルスによる感染症で、罹患児の約1〜10%に髄膜炎を合併すると報告されています。

髄膜刺激症状と臨床所見

髄膜炎では炎症により髄膜が刺激され、特徴的な髄膜刺激症状が出現します。代表的なものに、項部を前屈させると抵抗を感じる項部硬直、仰臥位で下肢を股関節・膝関節90度に屈曲させたあと膝を伸展させると疼痛と抵抗で完全に伸展できないケルニッヒ徴候、頸部を前屈させると両膝が自動的に屈曲するブルジンスキー徴候があります。

臨床症状としては、発熱・頭痛・嘔吐の三主徴に加え、意識障害、痙攣、不機嫌、哺乳力低下などがみられます。乳幼児では大泉門膨隆が頭蓋内圧亢進のサインとなります。検査では腰椎穿刺により髄液を採取し、細胞数・蛋白・糖・病原体検索(培養・PCR)を行い、診断と原因の鑑別を行います。

流行性耳下腺炎とムンプス髄膜炎

流行性耳下腺炎はムンプスウイルスによる急性ウイルス感染症で、飛沫感染および接触感染によって伝播します。潜伏期は2〜3週間で、両側または片側の耳下腺の腫脹と圧痛、発熱が主症状です。耳下腺由来および膵臓由来の酵素である血清アミラーゼの上昇が特徴的な検査所見として知られます。

学校保健安全法では第二種感染症に指定されており、出席停止期間は「耳下腺、顎下腺または舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで」と定められています。日本ではムンプスワクチンは現在任意接種であり、定期接種には含まれていません。

ムンプスの合併症

ムンプスは比較的軽症で経過することが多いものの、合併症が国試で頻出です。代表的な合併症は、無菌性髄膜炎、ムンプス難聴、思春期以降の精巣炎・卵巣炎、膵炎です。なかでもムンプス難聴は、ムンプスウイルスが内耳に感染して生じる片側性で永続性の感音性難聴であり、聴力回復は困難です。発症頻度は0.1〜1%程度とされ、小児では本人が聞こえにくさを自覚しにくいため、退院後に保護者が呼びかけへの反応や生活上の様子を観察することが重要です。

小児髄膜炎の看護

急性期の観察と優先度

髄膜炎が疑われる小児では、頭蓋内圧亢進や脳実質への波及により急激に意識障害が進行する危険があります。傾眠傾向や意識レベル低下がみられる場合は、JCSやGCSによる継続的な意識評価が最優先となります。あわせて呼吸状態、瞳孔、痙攣の有無、頭痛・嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状を観察します。血圧上昇・徐脈・呼吸不整がそろうクッシング徴候は脳ヘルニアの徴候であり、緊急対応が必要です。

腰椎穿刺時のプレパレーション

診断・治療目的で腰椎穿刺が行われる際は、小児の発達段階に応じた説明であるプレパレーションを行います。プレパレーションとは、子どもの理解力に合わせて検査・処置の内容を事前に説明し、恐怖や不安を最小限にして対処能力を引き出す援助です。幼児期後半(4〜6歳)では「背中にお注射するよ」のように具体的でわかりやすい言葉を選び、嘘をつかず感情を否定しないことが原則です。検査後は、頑張ったことを言葉で承認することも大切です。

感染対策と面会制限

ムンプス髄膜炎で入院した小児は個室管理とし、飛沫・接触感染対策を徹底します。家族の面会については、すでにムンプス罹患歴があり免疫を有する家族は感染リスクが低く、面会制限の必要はありません。一方、ワクチン未接種で罹患歴のないきょうだいは感染のリスクが高いため、面会は控えるよう指導します。入院中の小児にとって親の付き添いや面会は分離不安の軽減と情緒安定に不可欠であり、感染対策と発達上のニーズを両立させる視点が求められます。

退院指導

退院後はムンプス難聴の早期発見のため、保護者に呼びかけへの反応、テレビの音量、発話の様子、めまいや耳鳴りの訴えなどを継続して観察するよう説明します。また、流行性耳下腺炎の出席停止期間や、ワクチン未接種のきょうだいへの感染予防にも触れます。

まとめ

小児髄膜炎では、項部硬直やケルニッヒ徴候などの髄膜刺激症状と、発熱・頭痛・嘔吐・意識障害の有無を観察し、急性期は意識レベルの評価を最優先します。流行性耳下腺炎に合併するムンプス髄膜炎では、血清アミラーゼ上昇や耳下腺腫脹といった所見、飛沫感染対策、ムンプス難聴をはじめとする合併症の観察、プレパレーションによる小児への支援、家族の免疫状態に応じた面会調整など、感染症・小児看護・家族看護を横断する知識が問われます。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    脳と脊髄を覆う髄膜に炎症を起こす疾患で、小児では発熱・頭痛・嘔吐に加え意識障害や痙攣を呈する感染症をという。

  2. 2.

    流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の原因ウイルスはウイルスであり、髄膜炎を合併することがある。

  3. 3.

    髄膜炎で頸部を前屈させると抵抗を感じる髄膜刺激症状をという。

  4. 4.

    仰臥位で股関節と膝を90度に屈曲させた後、膝を伸展させようとすると疼痛と抵抗で完全に伸展できない髄膜刺激症状を徴候という。

  5. 5.

    流行性耳下腺炎では耳下腺・膵臓由来の酵素である血清が上昇する。

  6. 6.

    ムンプスウイルスが内耳に感染し、片側性で永続性の感音性難聴を残す合併症をという。

  7. 7.

    子どもの発達段階に応じて検査・処置の内容をわかりやすく説明し、不安や恐怖を最小限にするケア技法をという。

  8. 8.

    髄膜炎が疑われ傾眠傾向にある小児で、入院時に最も優先度の高い観察項目はの評価である。

  9. 9.

    頭蓋内圧亢進が進行し脳ヘルニアに至った際にみられる、血圧上昇・徐脈・呼吸不整の三徴を徴候という。

  10. 10.

    日本において流行性耳下腺炎(ムンプス)ワクチンは現在、定期接種ではなく接種である。

小児髄膜炎の看護」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。