自閉スペクトラム症と発達障害
小児看護学 / 小児神経・運動器・発達障害
解説
発達障害とは、生まれつきの脳機能の発達のかたよりにより、行動面・情緒面に特徴が現れる状態のことをいいます。知的障害とは区別され、近年では神経の発達のしかたに由来することから「神経発達症」とも呼ばれるようになりました。今回は、看護師国家試験で頻出となる自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder:ASD)と注意欠如・多動症(attention deficit hyperactivity disorder:ADHD)を中心に、神経発達症全体の特徴と支援の考え方について解説します。
神経発達症(発達障害)の分類
精神疾患の診断基準であるDSM-5では、神経発達症群として自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、限局性学習症(specific learning disorder:SLD)、知的発達症、運動症群(チック症を含む)、コミュニケーション症群などが分類されています。これらは互いに併存することが多く、ひとりの患者さんに複数の特性がみられる場合も少なくありません。そのため、診断の際にはそれぞれの中核症状を整理して鑑別することが大切になります。
自閉スペクトラム症の中核症状
自閉スペクトラム症は、かつて自閉症・アスペルガー症候群・広汎性発達障害などと呼ばれていた状態を連続体(スペクトラム)として捉えた診断名です。DSM-5では、次の2つの領域が中核症状とされています。1つ目は社会的コミュニケーションおよび対人的相互作用の持続的な欠陥で、視線が合いにくい、表情や身振りといった非言語的コミュニケーションが乏しい、対人関係を築き維持することが難しいなどが該当します。2つ目は行動・興味または活動の限定された反復的な様式で、同一性へのこだわり、習慣やルーチンへの固執、儀式的な行動、特定の対象への強い興味、感覚刺激への過敏あるいは鈍麻などが含まれます。有病率はおおむね1〜2%で、男児に多くみられます。ADHDや知的発達症、不安症、てんかんなどの併存も多く認められます。
ADHDの中核症状
ADHDは不注意・多動性・衝動性を中核症状とする神経発達症で、不注意優勢型、多動衝動性優勢型、混合型の3つのサブタイプがあります。不注意では、課題に必要なものをよくなくす、注意を持続できない、指示に従えない、忘れっぽいなどがみられます。多動性・衝動性では、じっと座っていられない、しゃべりすぎる、順番を待てない、他人の会話に割り込むといった行動が現れます。学業や社会生活に支障をきたすため、薬物療法(メチルフェニデート、アトモキセチン、グアンファシンなど)と環境調整・行動療法を組み合わせて支援します。限局性学習症(読み・書き・計算など特定領域の困難)やチック症との鑑別が国家試験では重要です。
自閉スペクトラム症への支援とプレパレーション
自閉スペクトラム症の児は、先の見通しが立たない場面で強い不安やパニックを示しやすい一方、視覚的な情報処理は得意とすることが多いという特性があります。そのため支援の基本は構造化であり、スケジュール表や絵カードを用いて活動の流れを視覚的に示し、予測可能性を高めることが有効です。代表的な支援プログラムにTEACCHプログラムやPECS(絵カード交換式コミュニケーションシステム)、ソーシャルスキルトレーニング(SST)などがあります。
医療場面では、注射や採血などの処置に対する不安が強くなるため、プレパレーションが欠かせません。自宅で事前に絵カードを用いて検査の流れを伝える、所要時間を具体的に示す、慣れた看護師や同じ手順で実施する、頑張りを称賛するなどの工夫により、パニックを予防し処置への協力を得やすくなります。在宅で継続する治療がある場合は、就寝前など既存の日課のなかに処置を組み込み、ルーチン化することでアドヒアランスが維持されやすくなります。
就学支援と合理的配慮
発達障害のある子どもの就学先は、通常学級・通級指導教室・特別支援学級・特別支援学校など多様な選択肢のなかから、本人と保護者の意向を尊重して市町村教育委員会と相談のうえ決定されます。2016年に施行された障害者差別解消法により、公立学校を含む行政機関には障害のある子どもへの合理的配慮を提供する義務があります。刺激の少ない座席配置、視覚的スケジュールの活用、医療的ケアに必要な物品の保管場所の確保など、子どもの特性に応じた配慮を学校に求めることができ、看護師は医療面の情報を学校と共有して連携を支える役割を担います。
まとめ
自閉スペクトラム症は社会的コミュニケーションの障害と限定的・反復的行動を中核症状とし、ADHDは不注意・多動性・衝動性を中核症状とする神経発達症です。両者は併存することもあり、限局性学習症やチック症との鑑別とあわせて整理しておきましょう。看護では、視覚支援を活用した構造化とプレパレーション、生活ルーチンへの治療の組み込み、障害者差別解消法に基づく合理的配慮の説明などが重要です。子どもの特性を理解し、家族とともに長期的な発達と社会生活を支える視点をもつことが、神経発達症をもつ子どもへの看護の基本となります。
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- 1.
自閉スペクトラム症はDSM-5では群に分類される。
- 2.
自閉スペクトラム症の中核症状の一つは、社会的コミュニケーションおよび対人的相互作用の持続的なである。
- 3.
自閉スペクトラム症のもう一つの中核症状は、行動・興味または活動の限定されたな様式である。
- 4.
ADHDの中核症状は、不注意・多動性・の3つである。
- 5.
自閉スペクトラム症の児は先の見通しが立たないことに不安を示しやすいため、絵カードなどを用いた的支援が有効である。
- 6.
予測可能性を高めるためにスケジュールや環境を整える支援方法をという。
- 7.
医療処置を受ける子どもに対し、事前に手順を説明して心の準備を促す看護介入をという。
- 8.
2016年に施行され、障害のある子どもへの合理的配慮の提供を行政機関に義務づけている法律は法である。
