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軽度認知症の生活支援

老年看護学 / 認知症ケア

解説

軽度認知症の生活支援とは、認知機能が低下し始めた段階で、本人の残存機能と自己決定を尊重しながら、地域での自立生活を維持するための支援です。今回は軽度認知症の生活支援について解説します。

軽度認知症の特徴と初期症状

認知症のうち、最も頻度が高いのがアルツハイマー型認知症です。アルツハイマー型認知症では、記憶を司る海馬が早期から萎縮するため、初期症状として近時記憶障害が目立つことが特徴です。記憶は保持される期間によって、即時記憶(数秒程度)、近時記憶(数分から数日)、遠隔記憶(数か月以上)に分類されます。近時記憶障害では、数分前から数日前の新しい出来事を保持できず、同じことを何度も尋ねたり、約束を忘れたりする様子がみられます。

アルツハイマー型認知症は、海馬萎縮による近時記憶障害から始まり、時間や場所が分からなくなる見当識障害、段取りをつけて行動することが難しくなる実行機能障害、さらに進行すると失語・失行・失認へと進展します。これらは脳の障害そのものから生じる中核症状です。一方、物盗られ妄想、徘徊、抑うつ、興奮などは、中核症状に環境要因や心理要因が加わって生じる二次的な症状であり、**BPSD(行動・心理症状)とよばれます。認知機能の評価にはMMSE(Mini-Mental State Examination)**が広く用いられ、おおむね24点以上で正常、18点前後では軽度から中等度の認知症が疑われます。

権利擁護と日常生活自立支援事業

軽度の段階では判断能力がある程度保たれているため、本人の意思を尊重した契約に基づく支援が選択されます。その中心となるのが日常生活自立支援事業です。これは社会福祉法に基づく権利擁護事業で、都道府県社会福祉協議会および指定都市社会福祉協議会が実施主体となります。対象は、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者など判断能力が不十分でありながら、契約内容を理解できる程度の能力を有する人です。

支援内容は、福祉サービス利用援助、日常的金銭管理サービス、書類等預かりサービスの三つが柱です。生活支援員が月数回訪問し、公共料金の支払いや預貯金の出し入れの援助、年金証書や通帳の保管などを行います。本人との契約に基づくため、契約理解に必要な判断能力が前提となる点が重要です。

判断能力がさらに低下し、不動産処分や遺産分割など重要な法律行為が必要となる場合には、成年後見制度へと移行します。成年後見制度は家庭裁判所が関与する制度で、判断能力の程度に応じて法定後見の後見・保佐・補助の三類型と、本人が事前に契約しておく任意後見があります。本人の代理権・同意権・取消権が付与され、判断能力が著しく不十分な場合に適用されます。

在宅生活を支える服薬支援

軽度認知症で独居の在宅生活を維持するうえで、服薬管理は重要な課題です。支援の原則は、本人の残存機能を活かし、視覚的手がかりを増やし、薬の数と服用回数をシンプルにすることです。過度な介入は自尊心を傷つけるため、本人がすでに成功しているセルフケアを拡張する関わりが望まれます。たとえば、カレンダーで予定管理ができている人には、薬を飲んだらカレンダーに丸をつける方法を提案することで、自己効力感を損なわずに飲み忘れと二重服用を防止できます。

具体的な工夫として、同じ服用時点の薬を一袋にまとめて調剤する一包化があります。一包化は薬剤師に相談し、医師の指示のもとで保険適用となります。1日各服用時点で1袋取り出すだけで済むため、飲み忘れや飲み間違いが大幅に減少します。さらにお薬カレンダーや服薬ボックスの活用、家族や訪問看護師・訪問薬剤師による声かけ確認、ケアマネジャーへの情報共有による服薬モニタリングと、段階的に支援を強化していきます。

高齢者では複数の慢性疾患により多剤併用、すなわちポリファーマシーとなりやすく、6剤以上では転倒や有害事象のリスクが高まります。まず処方の見直しを医師に依頼することが重要で、在宅患者訪問薬剤管理指導や居宅療養管理指導の活用も有効です。

まとめ

軽度認知症の生活支援では、海馬萎縮による近時記憶障害という初期症状を理解したうえで、本人の判断能力に応じた制度を選択することが重要です。契約可能な段階では社会福祉協議会が実施する日常生活自立支援事業を活用し、判断能力が著しく低下した段階では成年後見制度へ移行します。服薬管理では一包化やお薬カレンダーなど視覚的手がかりを用い、本人の残存機能を活かしながら自尊心を尊重した支援を行うことが、在宅での自立生活を支える鍵となります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    アルツハイマー型認知症では、記憶を司る( )が早期から萎縮するため、初期症状として近時記憶障害が目立つ。

  2. 2.

    数分から数日前の新しい出来事を保持できない記憶障害を( )記憶障害という。

  3. 3.

    物盗られ妄想、徘徊、抑うつなど、中核症状に伴って生じる二次的な症状を( )(行動・心理症状)という。

  4. 4.

    認知機能の評価に広く用いられる、30点満点のスクリーニング検査を( )という。

  5. 5.

    社会福祉法に基づき、判断能力が不十分な人の福祉サービス利用援助や日常的金銭管理を行う権利擁護事業を( )事業という。

  6. 6.

    日常生活自立支援事業の実施主体は、都道府県および指定都市の( )である。

  7. 7.

    判断能力が著しく不十分な人について、家庭裁判所の関与のもとで代理権・同意権を付与する制度を( )制度という。

  8. 8.

    同じ服用時点の薬を1袋にまとめて調剤する方法を( )という。

  9. 9.

    高齢者で6剤以上の多剤併用となり転倒や有害事象のリスクが高まる状態を( )という。

軽度認知症の生活支援」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。