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認知症BPSDへの対応

老年看護学 / 認知症ケア

解説

今回は認知症BPSDへの対応について解説します。

BPSDとは

BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:認知症の行動・心理症状)とは、認知症の中核症状である記憶障害・見当識障害・遂行機能障害などに対し、二次的に生じる行動面・心理面の症状の総称です。具体的には、帰宅願望、徘徊、興奮、暴言、暴力、入浴拒否、ケア拒否、幻視、妄想、不安、抑うつ、夕暮れ症候群、昼夜逆転などが含まれます。中核症状そのものは治療が難しい一方、BPSDは環境調整やかかわり方の工夫によって軽減できる余地が大きく、看護介入の主たる対象となります。

夕暮れ症候群

夕暮れ症候群(sundowning)は、夕方から夜にかけて帰宅願望や不穏、興奮が強まる現象で、認知症患者の20〜40%にみられます。照度の低下、日中の疲労蓄積、家事や育児など過去の役割記憶の喚起が誘因とされます。照明を早めに点ける、温かい飲み物を提供する、なじみの活動に誘うといった対応が有効です。

日常生活自立度判定基準

認知症高齢者の日常生活自立度判定基準は7段階で評価されます。は何らかの認知症があるが日常生活はほぼ自立、Ⅱaは家庭外で支障、Ⅱbは家庭内でも支障(服薬管理ができない、電話応対ができない等)、Ⅲaは日中介護を要する状態、Ⅲbは夜間も介護を要する状態、はほぼ常時介護を要する状態、Mは専門医療を必要とする状態を指します。

BPSDへの具体的対応

入浴拒否への対応

入浴を強要せず、本人の感情が落ち着くまで待ち、時間を改めて再度声をかけることが基本です。声をかける人を替える、誘い文句を「お風呂」から「温まりましょう」に替える、時間帯をずらすといった工夫が有効です。過去に冷水をかぶった等の不快体験がある場合は、本人と一緒に湯が温かいことを確認します。脱衣所の室温調整、他者からの視線への配慮、好きな音楽や温かい飲み物の提供も拒否を和らげます。

帰宅願望・徘徊への対応

「家に帰りたい」という訴えを否定せず傾聴することが重要です。バリデーション療法の考え方を取り入れ、本人の感情を受け止めて安心感を与えます。安全を確保したうえで一緒に散歩する、お茶を勧める、関心のある話題に誘うなどして自然に別の行動につなげます。説得や強制、身体拘束はBPSDを悪化させるため避けます。

排泄ケア

不慣れな環境ではトイレの場所が分からず、ゴミ箱に排尿するなどの誤行動が生じます。そわそわする、股間を触るといった排泄サインに早めに気づきトイレへ誘導します。トイレ入口の目印やピクトグラム、表札の工夫など環境整備も欠かせません。

BPSDのアセスメント

ABC分析(Antecedent先行事象・Behavior行動・Consequence結果)を用いて、症状が生じる前後の状況を整理すると引き金が見えてきます。身体要因(空腹・痛み・便秘・脱水)、環境刺激、介護者の口調や焦りなど多面的に検討します。興奮した状況を介護者と一緒に振り返り、原因を同定して対応策を共有することが大切です。

パーソンセンタード・ケア

パーソンセンタード・ケアは、認知症の人を一人の人格として尊重し、本人の視点と生活史に基づいてケアを組み立てる考え方です。嗜好や習慣を尊重し、なじみの関係づくり、本人の好みに合った活動選択を行います。

昼夜逆転への非薬物的対応

体内時計の障害が背景にあるため、朝に2500ルクス以上の光を浴びる、起床・就寝時刻を一定にする、日中に散歩・体操・レクリエーションで活動量を確保する、昼寝は15時までに30分以内とする、夕方以降はカフェインやアルコールを控えるといった生活リズム調整が中心となります。光療法や活動療法も有効です。

介護者支援

介護者の健康は「隠れた患者」と呼ばれ、介護うつや虐待のリスクがあります。ショートステイ、通所、訪問サービスを活用したレスパイトケアで休息を確保することが不可欠です。また、認知症の短期記憶障害の特性を活かし、いったん時間を置けば本人の気持ちが変わるため、柔軟に再アプローチする姿勢を介護者にも伝えます。

確認問題(穴埋め)

空欄をタップすると答えが表示されます。

  1. 1.

    BPSDとは、認知症の中核症状に対して二次的に生じるである。

  2. 2.

    夕暮れ症候群は認知症患者の%にみられる。

  3. 3.

    認知症高齢者の日常生活自立度判定基準で、家庭内でも支障が生じる段階はである。

  4. 4.

    入浴拒否への対応では、強要せず時間を改める、声をかけるを替える、誘い方を変えるなどの工夫を行う。

  5. 5.

    帰宅願望に対し、本人の感情を受け止め安心感を与えるかかわり方をという。

  6. 6.

    BPSDのアセスメントには、先行事象・行動・結果を整理する分析が有用である。

  7. 7.

    認知症の人を一人の人格として尊重し本人の視点と生活史に基づくケアをという。

  8. 8.

    昼夜逆転への対応では、朝にルクス以上の光を浴びることが望ましい。

  9. 9.

    ショートステイや通所サービスで介護者の休息を確保するケアをという。

  10. 10.

    認知症介護者は介護うつや虐待リスクを抱えるためと呼ばれる。

認知症BPSDへの対応」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。