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お風呂イヤ!認知症の方の入浴拒否に看護師はどう向き合うか

看護師国家試験 第115午後59

国試問題にチャレンジ

115午後59

Aさん(77歳、男性)は妻(80歳)と2人で暮らしている。5年前に認知症と診断された。最近、Aさんが妻の介助を拒否し、怒鳴ることが多くなったため、通所介護を利用するようになった。通所施設の看護師が入浴を勧めると「今日はやめておく」「今は忙しくて時間がない」と答えた。 Aさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。

  1. 1.今後は全身清拭を行う。
  2. 2.浴槽の使い方を説明する。
  3. 3.自宅で入浴することを勧める。
  4. 4.時間をおいてから再度入浴を勧める。

対話形式の解説

博士博士
今日はAさんの事例から、認知症の方の介護拒否への対応を学ぶぞ。77歳で5年前に認知症と診断、最近は奥さんの介助も拒んで怒鳴るようになり、通所介護を始めたんじゃ。
サクラサクラ
通所施設で看護師さんがお風呂を勧めたら「今日はやめておく」「忙しい」って断られたんですよね。これって本当に忙しいわけじゃないですよね?
博士博士
うむ。これは認知症の方によくみられる「取り繕い反応」じゃな。なぜ拒否するのか自分でも明確に説明できないとき、その場をしのぐためにもっともらしい理由を口にするのじゃ。
サクラサクラ
じゃあ、本当の理由は別にあるってことですか?
博士博士
そう考えるのが自然じゃ。背景には、裸になる羞恥心、浴室の寒さや滑る恐怖、過去の失敗体験、何をされるか分からない不安、体調不良、疲労感など、いろいろな要因が隠れていることが多いのじゃよ。
サクラサクラ
なるほど…。じゃあ無理にお風呂に入れようとすると、もっと嫌がりますよね。選択肢で「今後は全身清拭を行う」とありますが、これはどうですか?
博士博士
それも考えものじゃ。たった1回の拒否で入浴援助を諦めて清拭に切り替えるのは早すぎる。入浴には清潔保持だけでなく、温熱効果、リラックス、全身観察の機会という多くの意味があるからのう。
サクラサクラ
「浴槽の使い方を説明する」はどうでしょう?分からないから拒否してるのかなと思って…。
博士博士
Aさんは使い方が分からないから断ったわけではない。理屈で説明されても本人の納得にはつながらず、かえって「そんなこと分かっとる!」とプライドを傷つけてしまうかもしれんのじゃ。
サクラサクラ
「自宅で入浴することを勧める」は?お家の方が落ち着くかなと…。
博士博士
それも違うのう。Aさんが通所介護を始めたのは、家で奥さんの介助を拒否して怒鳴るようになったからじゃ。自宅入浴を勧めると、80歳の奥さんにまた負担をかけることになり、通所を導入した意味がなくなるのじゃよ。
サクラサクラ
あ、そうか…!家族の介護負担を減らすことも目的だったんですね。じゃあ正解は「時間をおいてから再度入浴を勧める」ですね。
博士博士
その通りじゃ。認知症ケアの基本は、否定せず・強制せず・受け止める、じゃ。いったん「そうですか、わかりました」と引き下がり、別の話題を挟んだり、おやつや散歩を入れたりして気分が変わったタイミングで再度誘うと、すんなり応じてくれることが多いのじゃよ。
サクラサクラ
同じことでも、タイミングや声かけ次第で受け取り方が変わるんですね。
博士博士
うむ。これは「パーソン・センタード・ケア」という考え方で、その人の感情・体験・尊厳を中心に据えるケアじゃ。「お風呂上がりに冷たい麦茶を用意してますよ」と楽しみと結びつけたり、馴染みのタオルを使ったり、足浴から段階的に進めたりと工夫の幅は広いぞ。
サクラサクラ
怒鳴ったり拒否したりするのも、本人なりに何かを伝えようとしているサインなんですね。
博士博士
その通り。BPSDは「困った行動」ではなく「困っている本人のサイン」と捉えるのが現代の認知症ケアの基本姿勢じゃ。看護師にはその背景を読み解く力が求められるのじゃよ。

POINT

認知症高齢者が入浴を拒否した際の対応として、否定や強制をせず、時間や場面を変えて再度働きかけるという認知症ケアの基本姿勢を問う問題です。

解答・解説

正解は4です

問題文:Aさん(77歳、男性)は妻(80歳)と2人で暮らしている。5年前に認知症と診断された。最近、Aさんが妻の介助を拒否し、怒鳴ることが多くなったため、通所介護を利用するようになった。通所施設の看護師が入浴を勧めると「今日はやめておく」「今は忙しくて時間がない」と答えた。 Aさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。

解説:正解は 4 です。Aさんは認知症と診断されて5年が経過しており、最近は妻の介助を拒否したり怒鳴ったりする行動・心理症状(BPSD)が出現しています。通所介護の場でも入浴を「今日はやめておく」「今は忙しくて時間がない」と拒否しましたが、この発言は本人なりの理由づけや、その瞬間の気分・タイミングを反映した一時的な反応である可能性が高いと考えられます。認知症ケアの基本原則は、本人の尊厳と意思を尊重し、否定や強制を避けることです。拒否があった場合には、いったん受け止めて引き下がり、時間や場面、声かけの工夫を変えて再度提案することで、本人が「やってみよう」と思えるタイミングをつくり出すことができます。したがって「時間をおいてから再度入浴を勧める」が最も適切な対応です。

選択肢考察

  1. ×1.  今後は全身清拭を行う。

    1回の拒否で入浴援助そのものを諦め、清拭に切り替えてしまうのは早計です。入浴は清潔保持だけでなく、温熱効果による循環促進・リラックス・観察の機会という多面的な意義があります。一時的な拒否を理由に方針を固定化すると、本人の楽しみや皮膚の清潔保持の機会を奪うことになります。

  2. ×2.  浴槽の使い方を説明する。

    Aさんは浴槽の使い方が分からなくて拒否しているわけではなく、その時の気分や心理的抵抗から拒否しています。手順を理屈で説明しても本人の納得には繋がらず、かえって「分かっている」というプライドを傷つけ、抵抗を強める可能性があります。

  3. ×3.  自宅で入浴することを勧める。

    通所介護を利用している背景には、自宅で妻の介助を拒否し怒鳴る場面が増えたという家族介護者の負担軽減という目的があります。自宅入浴を勧めることは、介護者である高齢の妻に再び負担を強いることになり、通所介護を導入した意義に反します。

  4. 4.  時間をおいてから再度入浴を勧める。

    認知症の人の拒否(介護拒否)に対しては、否定や強制をせず、本人の言葉をいったん受容することが基本です。時間をおいて気分や周囲の状況が変わってから、声かけの工夫(散歩のあとで/お風呂上がりの飲み物を用意したと伝えるなど)をして再提案すれば、本人が受け入れやすくなることが多くあります。

認知症高齢者の入浴拒否は介護現場で頻繁にみられる課題です。背景には、①裸になることへの羞恥心、②浴室の温度差や床のすべりへの恐怖、③過去の失敗体験(転倒・冷水など)、④何をされるのか分からないことへの不安、⑤体調不良や疲労などさまざまな要因があります。対応のポイントは「パーソン・センタード・ケア」の考え方に基づき、本人の世界観・感情・体験を尊重することです。具体的には、(1)拒否を否定せずいったん受け止める、(2)時間や担当者を変えて再アプローチする、(3)入浴を「気持ちよさ」「楽しみ」と結びつく言葉で誘う、(4)馴染みの物(自宅で使っていたタオルや石鹸)を活用する、(5)部分浴や足浴から段階的に導入する、などが有効です。怒鳴る・介助を拒むといったBPSDは、本人の不安・混乱・身体的不調のサインであることが多く、行動の背景にある「ニーズ」を読み取る姿勢が求められます。

認知症高齢者が入浴を拒否した際の対応として、否定や強制をせず、時間や場面を変えて再度働きかけるという認知症ケアの基本姿勢を問う問題です。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。