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高齢者のセクシュアリティ

老年看護学 / 高齢者の精神・心理・看取り

解説

セクシュアリティとは、性別や性的指向、性自認、身体的接触や親密さへの欲求などを含む、人間存在の根幹に関わる広い概念をいいます。今回は高齢者のセクシュアリティについて解説します。

セクシュアリティの定義

WHO(世界保健機関)は、セクシュアリティを「人間の中心的側面をなすものであり、性・ジェンダー・性的指向・エロティシズム・喜び・親密さ・生殖を含むもの」と定義しています。つまりセクシュアリティとは単に性交や生殖だけを指す言葉ではなく、自分は男性か女性かといった性自認、誰に対して恋愛感情を抱くかという性的指向、誰かに触れたい・触れられたいという親密さへの欲求、喜びや愛情を分かち合いたいという思いまでを包み込む、極めて広い人間的な営みを意味します。

セクシュアリティは思春期や生殖年齢にだけ存在するものではありません。高齢になっても消え去ることはなく、その人らしく生きるための重要な要素として最期まで保たれます。したがって看護師は、高齢者のセクシュアリティを尊重することがそのまま**QOL(生活の質)**の向上につながると理解する必要があります。

加齢に伴う生殖器・生殖機能の変化

女性の変化

女性では閉経に伴い卵巣からのエストロゲン分泌が著しく低下します。その結果、腟壁や外陰部の粘膜が薄く乾燥して萎縮し、萎縮性腟炎や性交痛が生じやすくなります。エストロゲン低下は骨吸収を促進するため骨密度が低下し、脂質代謝にも影響を及ぼします。さらにホットフラッシュ(ほてり・発汗)や、頻尿・尿失禁などを含む閉経関連泌尿生殖器症候群(GSM)も出現します。

男性の変化

男性では加齢とともに精巣からのテストステロン分泌が緩やかに低下し、加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)と呼ばれる状態を生じます。筋力低下、易疲労感、抑うつ気分、性欲低下、勃起機能の低下などがみられますが、女性の閉経のように急激な変化ではなく、精子産生自体は生涯続くことが特徴です。

エイジズムの排除

「年寄りに恋愛感情や性的関心などあるはずがない」という思い込みは、高齢者差別すなわちエイジズムにあたります。看護師自身がこうした偏見を持っていないかを常に省みる姿勢が求められます。高齢者にとっての恋愛や再婚の希望は、生きがいやQOLに直結する大切なテーマです。

看護の基本

看護師は、自分や家族の価値観を本人に押し付けることなく、傾聴と共感の姿勢で接します。本人の恋愛や交際の希望に対して家族が反対する場合でも、本人の意思を尊重したうえで関係者間の調整を図ります。日常ケアでは、可能な限り異性介助を避け、陰部洗浄や更衣の際にはカーテンやタオルで露出を最小限にしてプライバシーを守ります。パートナーが面会できる時間や空間を確保することも、セクシュアリティを尊重したケアの一環です。LGBTQの高齢者についても、その性自認や性的指向を否定せず受け止める姿勢が大切です。

まとめ

高齢者のセクシュアリティは加齢によって失われるものではなく、QOLや生きがいの根幹をなすものです。閉経後のエストロゲン低下による萎縮性変化や、男性のテストステロン緩徐低下によるLOH症候群といった生物学的変化を理解したうえで、エイジズムを排し、本人の意思とプライバシーを守る看護を提供することが求められます。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    WHOはセクシュアリティを、性・ジェンダー・性的指向・エロティシズム・喜び・・生殖を含む、人間の中心的側面をなすものと定義している。

  2. 2.

    閉経後の女性では卵巣からの分泌が低下し、腟壁の萎縮や性交痛が生じる。

  3. 3.

    加齢に伴う男性ホルモンの低下により生じる、性欲低下・抑うつ・筋力低下などを特徴とする病態をという。

  4. 4.

    「高齢者に性的関心はない」といった高齢者に対する偏見や差別をという。

  5. 5.

    陰部洗浄を行う際には、カーテンやタオルを用いてを保護する。

  6. 6.

    高齢者の介助において、可能な限り介助を避けることが望ましい。

  7. 7.

    本人の恋愛や再婚の希望と家族の意向が対立した場合は、本人のを尊重したうえで調整を図る。

  8. 8.

    男性では加齢によりテストステロンは漸減するが、産生は生涯続くとされる。

高齢者のセクシュアリティ」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。