直腸癌術後の看護
成人看護学 / 消化器系
解説
直腸癌術後の看護とは、骨盤内手術に特有の合併症を予測し、早期回復を支援するケアです。今回は直腸癌術後の看護について、排尿障害、早期離床と疼痛管理、縫合不全の三本柱を中心に解説します。
排尿障害と骨盤神経
直腸の周囲には、膀胱や性機能を支配する骨盤神経叢が密に走行しています。具体的には、交感神経である下腹神経、副交感神経である骨盤神経、体性神経である陰部神経が膀胱と性機能を支配しています。直腸全間膜切除(TME)では、神経温存の程度により全温存・片側温存・部分温存・非温存に分類され、自律神経部分温存術式では温存しきれなかった神経枝が損傷されることで排尿障害が高頻度に発生します。症状としては尿意低下、排尿困難、残尿の増加、尿閉などがみられ、男性では勃起障害を併発することもあります。
排尿障害への看護
術後は導尿カテーテルを留置しますが、抜去後は残尿量測定や排尿日誌の記録を行い、排尿状態を客観的に評価します。残尿が持続する場合は間欠的自己導尿を指導し、尿路感染や上部尿路への逆流を防ぎます。長期的な経過観察も必要であることを患者へ十分説明します。
早期離床と疼痛管理
術後の早期離床は、腸蠕動の回復促進、無気肺などの肺合併症予防、深部静脈血栓症の予防に有用です。創部痛を理由に離床を遅らせず、術後第1病日からの離床を推奨するERAS(術後回復強化)プロトコルが広く取り入れられています。疼痛、嘔気、点滴ラインといった離床阻害因子を取り除くことが看護師の役割です。
疼痛評価とコントロール
疼痛はNRSやVASを用いて客観的に評価し、硬膜外鎮痛のレスキュー投与や自己調節鎮痛法(PCA)のボタン使用方法を再指導します。患者が痛みで歩けないと訴える場合は、安易に安静を続けるのではなく、鎮痛薬の追加使用を提案して歩行を促す姿勢が重要です。
縫合不全の早期発見
低位前方切除術後の合併症で特に注意すべきが縫合不全です。吻合部の縫合不全は術後3〜7日が好発時期で、危険因子として低栄養、糖尿病、ステロイド使用、喫煙、低位吻合が挙げられます。ドレーンから茶褐色で悪臭を伴う排液がみられた場合は、腸内容物の腹腔内漏出を強く示唆します。発熱を伴えば腹腔内感染による腹膜炎の徴候とも合致します。
観察と対応
看護師はドレーン排液の量・性状・におい、発熱、CRPや白血球の上昇、腹部所見をセットで評価します。縫合不全が疑われたら絶食とし、抗菌薬投与、ドレーン洗浄を行い、重症例では再手術や人工肛門造設が選択されます。
まとめ
直腸癌術後の看護では、骨盤神経損傷による排尿障害への長期的支援、ERASに沿った早期離床と適切な疼痛管理、そして術後3〜7日に好発する縫合不全の早期発見が要となります。ドレーンや創部、全身状態の観察を継続し、合併症の徴候を見逃さないことが患者の回復を支える鍵です。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
直腸の周囲には膀胱や性機能を支配する( )神経叢が走行している。
- 2.
直腸全間膜切除の英語略語は( )である。
- 3.
自律神経損傷により術後に高頻度で発生する合併症は( )障害である。
- 4.
残尿が持続する場合に指導する自己管理法は間欠的( )である。
- 5.
術後回復強化を目的とした周術期管理プロトコルを略語で( )という。
- 6.
早期離床は腸蠕動回復、肺合併症予防に加え、( )静脈血栓症の予防にも有用である。
- 7.
直腸低位前方切除術後の縫合不全の好発時期は術後( )日である。
- 8.
ドレーンから茶褐色で悪臭のある排液と発熱がみられた場合に疑うべき合併症は( )である。
- 9.
縫合不全の危険因子には低栄養、糖尿病、ステロイド使用、喫煙、( )吻合がある。
