肺切除術の術前・術後看護
成人看護学 / 呼吸器系
解説
肺切除術とは、肺癌などの治療を目的として、病変のある肺組織を外科的に取り除く手術のことをいいます。今回は肺切除術を受ける患者さんへの術前・術後看護について解説します。
肺切除術の術式
肺切除術には、切除する範囲によっていくつかの種類があります。最も狭い範囲を切り取るのが楔状切除(くさびじょうせつじょ)で、病変部を楔形に切除する方法です。次に肺の区域単位で切除する区域切除があり、より広い範囲では肺葉単位で切除する肺葉切除術が行われます。右肺は上葉・中葉・下葉の3つ、左肺は上葉・下葉の2つの肺葉に分かれており、肺癌の手術では肺葉切除術が標準術式とされています。さらに広範囲では、片方の肺をすべて摘出する片肺全摘術もあります。近年では身体への負担が少ない胸腔鏡下肺葉切除術が主流となっています。
術前呼吸機能検査
肺を切除すると術後の呼吸機能が低下するため、手術に耐えられるかを評価する必要があります。そのために行うのがスパイロメトリーによる呼吸機能検査です。
%VC(肺活量比)は、年齢や身長から算出される予測肺活量に対する実測肺活量の比率で、基準値は80%以上です。80%未満の場合は、肺が十分に膨らまない拘束性換気障害と判定されます。間質性肺炎、胸郭の異常、神経筋疾患などが原因として挙げられます。
FEV1.0%(1秒率)は、努力性肺活量のうち最初の1秒間で吐き出せる量の割合で、基準値は70%以上です。70%未満では空気を吐き出しにくい閉塞性換気障害と判定され、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や気管支喘息で見られます。
両方とも基準値を下回る場合は混合性換気障害と呼ばれます。
術前看護
術前看護で最も重要なのが禁煙指導です。喫煙は術後の呼吸器合併症のリスクを著明に高めるため、最低4週間前、できれば8週間前からの禁煙が望まれます。
呼吸訓練として、インセンティブスパイロメーターを用いた深呼吸訓練、横隔膜を使う腹式呼吸、気道虚脱を防ぐ口すぼめ呼吸を指導します。また、術後の痰の喀出に備えて、ハフィングや効果的な咳嗽法を練習します。口腔ケアも誤嚥性肺炎の予防として重要です。
術後合併症
肺切除術後には特有の合併症が起こります。胸膜の切開や肺実質の操作により空気が漏れる気胸や、残存肺が十分に膨らまない再膨張不全が生じます。痰の貯留や創部痛による浅い呼吸から無気肺が起こりやすく、これが進行すると肺炎を引き起こします。皮膚の下に空気が漏れる皮下気腫、胸管が損傷されると乳び胸が生じます。さらに、心房細動などの不整脈、術後出血、肺水腫にも注意が必要です。
胸腔ドレーン管理
術後は胸腔内の空気と滲出液を排出するため胸腔ドレーンが留置されます。観察ポイントは、エアリーク(気漏)の有無、排液量、排液の性状です。ドレーンが屈曲・閉塞しないように固定し、必要に応じてミルキングを行います。抜去基準は、エアリークがなく、排液量が少なく、X線で肺の再膨張が確認できることです。
高齢者の術後リスク
高齢者では呼吸予備能が低下しており、咳嗽反射や気道の線毛運動も弱くなっているため、術後の排痰が困難になります。嚥下機能も低下しているため誤嚥性肺炎のリスクが高まります。そのため呼吸機能訓練が最優先の看護介入となります。
退院後の生活指導
退院後は段階的に活動量を増やし、禁煙を継続するよう指導します。感染予防として手洗い・マスク着用・ワクチン接種を勧めます。深呼吸、腹式呼吸、排痰訓練は退院後も継続することが大切です。創部痛の管理方法を伝え、発熱・呼吸困難・喀血・創部の発赤などの異常徴候がある場合はすぐに受診するよう説明します。術後1〜3か月で残存肺が代償的に機能を補うため、その間の生活管理が回復の鍵となります。
まとめ
肺切除術の看護では、術前の呼吸機能評価と禁煙・呼吸訓練、術後の胸腔ドレーン管理と呼吸器合併症の予防が中心となります。%VC80%以上・FEV1.0%70%以上という基準値、拘束性と閉塞性の換気障害の違い、そして気胸や無気肺といった術後合併症の機序を理解しておくことが国家試験対策として重要です。高齢者では誤嚥性肺炎の予防として呼吸機能訓練を最優先に行い、退院後も禁煙継続と異常徴候の早期発見につながる生活指導を続けることで、患者さんの安全な回復を支援していきます。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
肺癌に対する手術で、肺葉単位で切除する標準術式をという。
- 2.
術前の呼吸機能検査で、%VCが%未満の場合は拘束性換気障害と判定される。
- 3.
術前の呼吸機能検査で、FEV1.0%(1秒率)が%未満の場合は閉塞性換気障害と判定される。
- 4.
COPDや気管支喘息で見られる換気障害はである。
- 5.
術前の禁煙指導では、最低週間前からの禁煙が望まれる。
- 6.
術後に痰の貯留や疼痛による浅い呼吸から起こる、肺胞が虚脱した状態をという。
- 7.
肺切除術後に胸管が損傷されることで生じる合併症をという。
- 8.
胸腔ドレーンの抜去基準は、がなく、排液量が少なく、X線で肺の再膨張が確認できることである。
- 9.
高齢者では咳嗽反射や線毛運動の低下、嚥下機能の低下からのリスクが高まる。
