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術後創傷治癒とSSI

成人看護学 / 周術期・救急

解説

今回は術後の創傷治癒過程と手術部位感染(SSI)について解説します。手術によって生じた創(きず)は、体内の生理的な修復機構によって段階的に治癒していきますが、その過程は様々な要因により遅延したり、感染を起こしたりすることがあります。看護師として術後管理を行ううえで、創傷治癒の正常経過とその阻害因子、そして感染予防の知識は不可欠です。

創傷治癒の4段階

創傷治癒は、**止血期(出血凝固期)→炎症期→増殖期→成熟期(再構築期)**の4つの段階を順に経て進行します。

止血期

受傷直後から数時間以内の段階で、血小板凝集とフィブリン網の形成により出血が止められます。これにより創部に一時的なかさぶた(痂皮)の土台ができます。

炎症期

術後おおよそ1~3日の時期にあたります。血管透過性が亢進し、好中球やマクロファージが創部に遊走して、壊死組織や細菌を除去します。この時期には発赤・熱感・腫脹(浮腫)・疼痛といった炎症の徴候が現れますが、これらは生体防御反応であり、正常な治癒過程の初期像です。術後1日目に創部周囲が赤く腫れて熱を持っていても、感染とは限らず炎症期の生理的反応であることを理解しておく必要があります。

増殖期

術後3日~2週間ごろにかけて、線維芽細胞が増殖してコラーゲンを産生し、毛細血管が新生して肉芽組織が形成されます。同時に創縁から上皮化が進み、創が閉鎖していきます。

成熟期(再構築期)

術後3週間以降から数か月~1年以上続く段階です。コラーゲン線維の再配列が起こり、肉芽組織が瘢痕組織へと置き換わっていきます。瘢痕の形成・収縮・強度獲得がこの時期の特徴で、最終的に創部の強度は元の組織の約70~80%まで回復します。

創傷治癒を遅延させる因子

創傷治癒を妨げる因子は、全身因子と局所因子に大別されます。全身因子としては、低栄養(特に血清アルブミン値が3.0g/dL未満)、糖尿病(HbA1c高値)、高齢、貧血、低酸素、ステロイドや抗がん薬の使用、循環不全、喫煙などが挙げられます。タンパク質・亜鉛・ビタミンCの不足はコラーゲン合成を障害するため、栄養評価は術前管理の重要項目です。局所因子としては、感染、壊死組織、異物、乾燥、血腫、機械的刺激などがあります。

喫煙と術後合併症

喫煙は術後合併症のリスクを大きく高めます。ニコチンによる血管収縮で末梢循環が悪化し、一酸化炭素によりヘモグロビンの酸素運搬能が低下するため、創部の血流障害とコラーゲン産生不足から感染リスクが高まります。喫煙と関連が強い術後合併症は、呼吸器合併症(無気肺・肺炎)、創傷治癒遅延・手術部位感染(SSI)、血栓性合併症です。術前4週間以上の禁煙が推奨され、8週間以上でより効果的とされます。

手術部位感染(SSI)

**SSI(Surgical Site Infection)とは手術部位に生じる感染症で、術後30日以内(インプラント留置例では1年以内)に発生したものをいいます。創部の発赤・熱感・腫脹が炎症期を過ぎても改善せず、膿性分泌物や疼痛の増強、発熱を伴う場合はSSIを疑います。予防には術前の血糖コントロール、禁煙、適切な皮膚消毒、予防的抗菌薬投与、術中の体温維持、湿潤環境を保つ創処置などが重要です。現代の創傷ケアでは湿潤環境療法(moist wound healing)**が基本となっています。

まとめ

術後の創傷治癒は止血期・炎症期・増殖期・成熟期の4段階を経て進行し、術後1日目の発赤や腫脹は炎症期の正常反応です。成熟期では瘢痕形成が主となります。低栄養や糖尿病、喫煙などは治癒を遅延させ、SSIのリスクも高めるため、術前からの全身状態評価と禁煙指導が重要です。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    創傷治癒は止血期→→増殖期→成熟期の4段階で進行する。

  2. 2.

    術後1~3日目にみられる発赤・熱感・腫脹・疼痛は、創傷治癒のにおける生体防御反応である。

  3. 3.

    創傷治癒の増殖期では線維芽細胞が増殖し、毛細血管新生とともに組織が形成される。

  4. 4.

    創傷治癒の成熟期では、肉芽組織が組織へと置き換わっていく。

  5. 5.

    血清アルブミン値がg/dL未満の低栄養は、創傷治癒遅延の代表的な全身因子である。

  6. 6.

    術前のは、呼吸器合併症・SSI・血栓性合併症のリスクを大きく高めるため、術前4週間以上の禁煙が推奨される。

  7. 7.

    手術部位に生じる感染症の略称をという。

  8. 8.

    現代の創傷ケアの基本となっている、創部を適度に湿らせて治癒を促す方法をという。

術後創傷治癒とSSI」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。