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救急トリアージと初期対応

成人看護学 / 周術期・救急

解説

今回は救急トリアージと初期対応について解説します。救急外来では、限られた時間と人員のなかで重症度と緊急度を見極め、救命に直結する処置を優先する必要があります。基本となるのはABCDEアプローチ(気道・呼吸・循環・意識・体温と全身観察)であり、これに加えて時間依存性疾患を見逃さない視点が欠かせません。

時間依存性疾患と脳梗塞の初期対応

急性脳梗塞は発症から治療開始までの時間が予後を大きく左右する代表的な時間依存性疾患であり、「Time is brain」と表現されます。突然の片側上下肢の脱力や構音障害がみられた場合は脳梗塞を強く疑い、ただちに発症時刻を確認します。スクリーニングにはFASTが用いられ、Face(顔面麻痺)、Arm(上肢の脱力)、Speech(言語障害)、Time(発症時刻の確認)の四項目を評価します。血栓溶解療法であるt-PA(アルテプラーゼ)静注療法は、発症から4.5時間以内の開始で神経学的予後を改善できるため、適応判断には正確な発症時刻が不可欠です。発症時刻が不明な場合は、最後に普段どおりであった時刻を基準として適応を検討します。

大量輸液を要する病態と循環管理

外傷や熱傷では、出血や血管透過性亢進によって急速に循環血液量が減少し、ショックに陥ります。大腿骨骨幹部骨折では一肢あたり1〜1.5L、両側で2〜3Lもの出血が周囲軟部組織内に生じうるため、出血性ショックを念頭に置いた輸液と輸血準備、牽引固定による出血制限と疼痛軽減を並行して行います。広範囲熱傷では血漿成分が血管外へ漏出してバーンショックを起こすため、パークランドの公式(4mL×体重kg×熱傷面積%)で受傷後24時間に必要な乳酸リンゲル液量を算出し、その半量を最初の8時間で、残り半量を続く16時間で投与します。熱傷面積は成人では9の法則を用い、頭部9%、片上肢9%、体幹前面18%、体幹背面18%、片下肢18%、陰部1%として概算します。一方、心原性ショックなど心機能が低下した病態では過剰輸液が肺水腫を招くため、病態に応じた輸液量の調整が重要です。

急性中毒の初期対応

大量服薬による急性中毒では、まずABCDEに沿って気道・呼吸・循環を評価し、同時に原因物質の特定を進めます。家族からの聴取に加え、お薬手帳や空き袋、残薬を確認し、薬剤の種類・量・服用時刻を明らかにすることが、解毒・吸着・拮抗薬の選択につながります。活性炭による吸着は服薬から1時間以内が目安です。代表的な拮抗薬として、ベンゾジアゼピン中毒にはフルマゼニル、オピオイド中毒にはナロキソン、アセトアミノフェン中毒にはN-アセチルシステインが用いられます。

まとめ

救急初期対応では、ABCDEアプローチで生命徴候を評価しつつ、脳梗塞のような時間依存性疾患、出血や熱傷による循環血液量減少、急性中毒など病態ごとに優先される処置を判断することが求められます。FASTやパークランドの公式、9の法則、主要な拮抗薬を正確に押さえ、時間と病態を意識した看護を実践することが重要です。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    急性脳梗塞のように治療開始までの時間が予後を左右する疾患をといい、「Time is brain」と表現される。

  2. 2.

    脳梗塞のスクリーニングに用いられる、Face・Arm・Speech・Timeの頭文字をとった評価法をという。

  3. 3.

    急性脳梗塞に対する血栓溶解療法では、発症から時間以内にt-PA(アルテプラーゼ)静注療法を開始することで予後の改善が期待できる。

  4. 4.

    広範囲熱傷で血漿成分が血管外に漏出し循環血液量が減少して生じるショックをという。

  5. 5.

    熱傷患者の必要輸液量を求める計算式で、4mL×体重kg×熱傷面積%により受傷後24時間の乳酸リンゲル液量を算出する公式をという。

  6. 6.

    成人の熱傷面積を概算する方法で、頭部9%、片上肢9%、体幹前面18%などとする評価法をという。

  7. 7.

    急性中毒で消化管からの薬物吸収を抑える目的で投与され、服薬から1時間以内が目安となる薬剤はである。

  8. 8.

    ベンゾジアゼピン系薬剤による中毒に対して用いられる拮抗薬はである。

  9. 9.

    オピオイド中毒に対する拮抗薬として用いられる薬剤はである。

  10. 10.

    救急初期対応の基本である、気道・呼吸・循環・意識・全身観察の順に評価する手順をという。

救急トリアージと初期対応」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。