点滴静脈内注射の管理
基礎看護学 / 注射・与薬・輸液・輸血
解説
点滴静脈内注射とは、末梢静脈または中心静脈に留置した針やカテーテルを介して、輸液や薬剤を持続的に血管内へ注入する治療法です。今回は点滴静脈内注射の管理について解説します。
末梢静脈ルートの基本
末梢静脈ルートは、水分・電解質補給、薬剤投与、栄養補給、輸血などの目的で広く用いられます。穿刺部位の選択は安全管理の第一歩であり、原則として前腕の正中皮静脈・橈側皮静脈・尺側皮静脈を第一選択とします。前腕の血管は太く弾力があり、針が固定しやすく、患者の日常動作も妨げにくいためです。やむを得ない場合は手背を選び、上腕は最後の選択肢となります。
選択時には、利き手と反対側の上肢を優先し、関節をまたぐ部位は避けます。関節付近に留置する場合はシーネで固定して屈曲を防ぎます。創部のある側、麻痺側、乳房切除側、シャント造設側は禁忌です。高齢者は皮膚が薄く血管が蛇行しているため、駆血時間を短くし愛護的に穿刺します。
輸液の基本となる液剤
輸液製剤の代表は生理食塩水で、NaCl濃度は**0.9%(9g/L)**です。浸透圧は約290mOsm/Lで体液とほぼ等しい等張液であり、輸液の基剤、薬剤の溶解・希釈、創傷や粘膜の洗浄などに用いられます。5%ブドウ糖液も等張液ですが、糖が代謝されると自由水になるため、主に水分補給の目的で使用されます。
高濃度カリウム製剤の取り扱い
点滴管理で最も重大な医療事故につながるのが塩化カリウム(KCl)製剤の取り扱いです。15%KClなどの高濃度製剤をワンショット静注すると致死的不整脈や心停止を起こすため、必ず希釈して点滴静注します。生理食塩液や5%ブドウ糖液で希釈し、濃度は40mEq/L以下、投与速度は20mEq/時以下、1日投与量は100mEq以下を厳守します。製剤は識別のためバイアル・アンプルが赤色表示されています。
高カリウム血症ではテント状T波、QRS幅延長、洞停止などの心電図変化が現れ、治療としてGI療法、カルシウム製剤の静注、透析が行われます。
輸液ポンプとシリンジポンプ
輸液ポンプは薬液の注入速度を正確かつ一定に調整する目的で使用します。設定する項目は**1時間あたりの流量(mL/h)と予定量(積算量)**であり、薬剤名や投与時間はラベルや指示書で管理します。気泡検知、閉塞検知、流量異常などのアラーム機能と積算量表示を備え、自然滴下より確実に流量を制御できます。カテコラミン、インスリン、抗不整脈薬、抗がん薬など投与速度を厳密に保つ薬剤に必須です。
シリンジポンプはより少量・微量を高精度で投与する場合に用い、設定はmL/h単位です。使用時に注意すべき現象がサイフォニング現象で、シリンジポンプを患者の刺入部より高い位置に設置し、押し子のクラッチやスライダーフックが外れているとシリンジ内薬液が一気に流入します。予防として、ポンプを患者の心臓と同じ高さかわずかに下に設置し、クラッチとフックを確実にロックし、ライン交換時は一旦クランプします。
観察と医療安全
輸液バッグは刺入部より80〜100cm高く吊るし、点滴筒の薬液量は1/2〜1/3に保ちます。刺入部は透明フィルムで被覆して常に可視化し、発赤・熱感・腫脹・疼痛などの感染徴候や、刺入部の腫脹・痛みによる薬液漏出を観察します。
薬剤投与では**5R(正しい患者・薬剤・用量・経路・時刻)**を遵守し、指差し呼称とダブルチェックを徹底します。開始時刻のカルテ記載、定期的なルート確認も看護師の責務です。
まとめ
点滴静脈内注射の管理は、穿刺部位の適切な選択、輸液製剤の特性理解、輸液ポンプ・シリンジポンプの正しい設定と監視、そして医療安全の徹底からなります。とくにKCl製剤の希釈ルールやサイフォニング現象の予防は、患者の生命に直結する重要事項であり、看護師として確実に習得しておく必要があります。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
生理食塩水のNaCl濃度はであり、体液とほぼ同じ浸透圧をもつ等張液である。
- 2.
輸液ポンプに設定する項目は、1時間あたりの流量(mL/h)と(積算量)である。
- 3.
塩化カリウム(KCl)製剤は急速静注により致死的不整脈を起こすため、は厳禁である。
- 4.
KCl点滴投与時の濃度は40mEq/L以下、投与速度はmEq/時以下を厳守する。
- 5.
成人の持続点滴で第一選択となる穿刺部位は、の正中皮静脈・橈側皮静脈・尺側皮静脈である。
- 6.
点滴の穿刺部位として、シャント側・麻痺側・は避ける。
- 7.
シリンジポンプが患者の刺入部より高位にあり、押し子のクラッチが外れた際に薬液が一気に流入する現象をという。
- 8.
薬剤投与時に確認すべき5原則(5R)は、正しい患者・薬剤・用量・経路・である。
- 9.
高カリウム血症の心電図所見として、、QRS幅延長、洞停止がみられる。
