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与薬の方法(点眼・坐薬等)

基礎看護学 / 注射・与薬・輸液・輸血

解説

今回は与薬の方法(点眼・坐薬等)について解説します。看護師が日常的に行う与薬は、経口投与・注射・点眼・坐薬・吸入・経皮吸収など多岐にわたります。それぞれの投与経路には解剖学的・薬物動態学的な根拠があり、正しい手技を理解することが患者の安全と治療効果を支える基盤となります。

与薬経路と薬物動態の基礎

薬物が血中に到達する速さは投与経路によって大きく異なります。一般に吸収速度は静脈内注射>直腸内投与>筋肉内注射>皮下注射>経口投与の順となります。静脈内注射は薬液を直接血管内に注入するため、消化管や組織を介した吸収過程を省略でき、投与とほぼ同時に全身循環へ移行します。これに対して経口投与は消化管で吸収された後、門脈を経て肝臓を通過する際に代謝を受けるため、血中濃度の立ち上がりが最も遅くなります。この肝臓での代謝を初回通過効果と呼び、薬物のバイオアベイラビリティ(生体利用率)を低下させる主な要因です。一方、坐薬・舌下錠・バッカル錠・経皮吸収薬などは肝臓を経由せずに全身循環へ入るため、初回通過効果を回避できる利点があります。作用持続時間は逆に、皮下注射<筋肉内注射<経口投与<経皮投与の順で長くなる傾向があります。静脈内注射は即効性がある反面、副作用も急激に出現するため、希釈・投与速度・観察の3点が看護上の安全管理の要となります。

服薬タイミングの用語

経口与薬では指示された服薬タイミングを正確に理解する必要があります。食前は食事の約30分前、食直前は食事の直前、食後は食事終了後30分以内、食直後は食事終了直後を指します。食間は食後と次の食事の間、すなわち食後約2時間が経過した空腹時を意味し、食事中という意味ではない点に注意が必要です。頓服は症状が出現したときに必要に応じて服用することを指します。これらの用語は薬剤の吸収速度や胃粘膜への刺激、食事内容との相互作用を考慮して定められています。

点眼薬の正しい投与手技

点眼薬は眼科領域で最も頻用される与薬方法であり、国試でも繰り返し問われる重要項目です。正しい手技は次の手順で行います。まず手指衛生を徹底し、患者を上向きまたは座位で軽く顔を上向きにします。下まぶたを軽く下方に引いて下眼瞼結膜(結膜嚢)を露出させ、容器の先端が睫毛や眼瞼・結膜に触れないよう注意しながら、眼から1〜2cm離して下眼瞼結膜の中央に1滴を滴下します。点眼後は静かに閉眼させ、涙嚢部(目頭の内側)を1〜2分間軽く圧迫します。涙嚢部圧迫は薬液が涙道を通って鼻腔・咽頭へ流れ込み全身吸収されることを防ぐと同時に、眼局所での薬効を高める意義があります。眼から溢れた薬液は皮膚刺激や色素沈着の原因となるため、清潔なガーゼやティッシュで拭き取ります。複数の点眼薬を使用する場合は薬液が洗い流されないよう5分以上の間隔をあけて投与し、眼軟膏は最後に使用します。容器先端の汚染を防ぐため患者間での共用は禁忌であり、交差感染防止の観点からも個別管理が原則となります。

坐薬の投与方法

坐薬は直腸下部の粘膜から吸収され、下大静脈を経由して全身循環へ入る薬剤で、門脈を介さないため初回通過効果を回避できることが大きな特徴です。経口投与が困難な小児・高齢者・嘔吐患者にも使用でき、解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン坐薬など)や制吐薬、抗炎症薬として臨床で広く用いられます。挿入時は患者を側臥位とし、片方の膝を曲げてもらいます。坐薬の先端を少量の潤滑剤または温水で湿らせると挿入時の摩擦が減り、患者の苦痛を軽減できます。成人では肛門から約3〜4cm、外肛門括約筋を越えるまで挿入します。挿入後は薬剤が直腸内にとどまるよう、1〜2分ほど肛門部を軽く押さえることで脱出を防止します。患者にも数分間は排便を我慢するよう説明します。

注射の部位と刺入角度

注射は経路により針の刺入角度と部位選択が異なります。皮内注射はほぼ平行(15度以下)で表皮直下に少量を注入し、ツベルクリン反応やアレルギー検査に用います。皮下注射は10〜30度の角度で皮下組織に注入し、インスリンやワクチン接種に用いられます。筋肉内注射は45〜90度で筋層に注入します。筋注では「大血管・神経を避ける」が原則で、成人の上腕では三角筋(肩峰から3横指下)、殿部では中殿筋を用います。中殿筋の安全な部位の選定法として、クラークの点(上前腸骨棘と大転子を結ぶ線の前方1/3)やホッホシュテッター法が用いられます。乳幼児では大腿外側の外側広筋、ワクチン接種では上腕三角筋が標準的に選択されます。

バッカル錠・舌下錠・吸入薬

バッカル錠は臼歯と頬粘膜の間に挟んで唾液で徐々に溶かす製剤、舌下錠は舌の下に置いて口腔粘膜から吸収させる製剤です。いずれも口腔粘膜の豊富な血管網から薬剤が直接全身循環に吸収されるため、初回通過効果を回避でき、ニトログリセリン(狭心症発作時)のように迅速な効果発現が必要な薬剤に適しています。噛んだり飲み込んだりせず、完全に溶けるまで保持するよう指導します。吸入薬は気管支喘息やCOPDの治療に用いられ、定量噴霧式(pMDI)ではスペーサーを併用し、吸入と噴霧のタイミングを合わせることが重要です。吸入ステロイド薬を使用した後は口腔咽頭カンジダ症や嗄声を予防するため、必ず含嗽(うがい)を行うよう指導します。

まとめ

与薬は患者の安全と治療効果を左右する重要な看護技術です。投与経路ごとの薬物動態を理解し、吸収速度は静脈内注射が最速で経口が最遅、坐薬・舌下錠・バッカル錠は初回通過効果を回避できることを押さえます。点眼薬は下眼瞼結膜の中央に1滴滴下し、容器先端を眼に触れさせず、点眼後は涙嚢部を1〜2分間圧迫することが基本です。坐薬は側臥位で挿入し、1〜2分間肛門部を押さえて脱出を防ぎます。注射は経路ごとに刺入角度と部位を正しく選択し、特に筋肉内注射では三角筋や中殿筋のクラーク点など解剖学的に安全な部位を用います。服薬タイミングの用語(食前・食間・頓服など)も国試頻出ですので正確に区別しておきましょう。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    点眼薬は下まぶたを軽く引き下げ、下眼瞼結膜の中央すなわちに1滴滴下する。

  2. 2.

    点眼後は薬液が鼻腔へ流れて全身吸収されるのを防ぐため、を1〜2分間軽く圧迫する。

  3. 3.

    複数の点眼薬を使用する場合は、薬液が洗い流されないように以上の間隔をあけて投与する。

  4. 4.

    坐薬は直腸下部の静脈から吸収され、門脈を経由しないためを受けにくいという利点がある。

  5. 5.

    成人の中殿筋への筋肉内注射の安全な部位を決定する方法で、上前腸骨棘と大転子を結ぶ線の前方1/3の部位をという。

  6. 6.

    薬物の吸収速度が最も速い投与経路はであり、投与と同時に全身循環へ移行する。

  7. 7.

    皮下注射の針の刺入角度は10〜30度、筋肉内注射は45〜90度、皮内注射はほぼ平行で度以下である。

  8. 8.

    食後と次の食事までの間で、食後約2時間が経過した空腹時に服用することを指す用語はである。

  9. 9.

    舌下錠やバッカル錠はから薬剤が直接吸収されるため、初回通過効果を受けずに速やかに全身循環へ到達する。

与薬の方法(点眼・坐薬等)」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。