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気管内吸引

基礎看護学 / 創傷管理・呼吸ケア

解説

気管内吸引とは、人工気道(気管チューブや気管切開チューブ)を留置している患者、あるいは自己排痰が困難な患者に対して、気道内に貯留した分泌物をカテーテルで吸引除去する処置です。今回は気管内吸引について解説します。

目的

気管内吸引の目的は、気道の開通性を維持し、ガス交換を保つことにあります。気道内分泌物が貯留すると換気不全や無気肺、肺炎の原因となるため、自力での喀出が困難な患者では人為的に吸引する必要があります。とくに人工呼吸器装着患者では、咳嗽反射が減弱しており、加えて気管チューブ自体が分泌物排出を妨げるため、計画的な吸引が重要となります。

適応とアセスメント

吸引は定時実施ではなく、必要時に行うのが原則です。聴診で副雑音(水泡音や類鼾音)が聴取される、視覚的に分泌物が確認できる、SpO2の低下、気道内圧の上昇、胸郭運動の左右差、患者の咳嗽などの所見をもとに必要性を判断します。不要な吸引はかえって合併症を招くため、アセスメントに基づいた実施が求められます。

吸引圧と吸引時間

成人の気管内吸引における吸引圧は −100〜−150 mmHg(およそ20 kPa以下)が標準とされます。年齢別では新生児で−60〜−80 mmHg、乳幼児から小児で−80〜−120 mmHg、成人で−100〜−150 mmHgが目安です。設定圧が過剰になると気道粘膜の損傷や出血、無気肺、低酸素血症のリスクが高まります。

吸引時間は、1回の陰圧をかける時間が 10秒以内、カテーテルの挿入から抜去までを含めても15秒以内にとどめます。吸引中は実質的に無呼吸状態となるため、30秒以上の長時間吸引は低酸素血症を直接引き起こします。

カテーテルの選択と挿入

吸引カテーテルの外径は、気管チューブ内径の 2分の1以下 を目安に選択します。一般成人では12〜14Fr程度が用いられます。太すぎるカテーテルは気道閉塞を招き、陰圧によって肺胞が虚脱します。

挿入の深さは、気管分岐部にカテーテルが当たらない位置までとし、人工気道の長さを把握したうえで挿入長を事前に決めておきます。分岐部への接触は粘膜損傷や咳嗽、迷走神経反射による徐脈の誘因となります。

手順とVAP予防

気管内吸引を行う前に、口腔・鼻腔・咽頭部、そして気管チューブの カフ上部 に貯留した分泌物を先に吸引します。カフ上部の分泌物が気管内へ垂れ込むと人工呼吸器関連肺炎(VAP)の原因となるためです。順序としては、カフ上部および口腔・鼻腔の分泌物を除去した後に、気管内吸引へと移ります。

吸引開始前には十分な酸素化を行います。これを プレオキシジェネーション といい、100%酸素を1分間程度投与してSpO2を高めたうえで吸引することで、吸引中の酸素化低下を最小限に抑えられます。気管内吸引は無菌操作で行い、カテーテルは清潔に取り扱います。

人工呼吸器装着中は、回路を外さずに吸引できる 閉鎖式吸引システム の活用が推奨されます。閉鎖式はPEEPの維持や酸素化低下の予防、エアロゾル飛散の抑制、VAP予防の観点で有用です。

合併症

気管内吸引で最も頻度が高い合併症は 低酸素血症 です。吸引中の陰圧によって肺胞内の酸素も同時に吸引され、ガス交換が一時的に途絶えるためです。そのほか、気道粘膜の損傷や出血、迷走神経反射による徐脈や不整脈、気管支攣縮、頭蓋内圧亢進、感染、肺胞虚脱などが起こり得ます。これらは吸引圧の上限遵守、吸引時間の短縮、適切なカテーテル選択、十分な酸素化によって予防します。

観察項目

吸引の前後および実施中は、SpO2、心拍数、心電図波形、血圧、顔色、呼吸状態、咳嗽の有無、喀出物の性状・量・色を観察します。吸引中にSpO2や心拍数の著明な変動、不整脈、チアノーゼが出現した場合は速やかに吸引を中止し、100%酸素を投与して回復を待ちます。

まとめ

気管内吸引は気道の開通性を維持するために不可欠な処置ですが、低酸素血症や粘膜損傷などの合併症を伴います。成人では吸引圧を−100〜−150 mmHg、1回の吸引時間を10秒以内、挿入から抜去までを15秒以内にとどめ、カテーテル外径は気管チューブ内径の2分の1以下を選択します。実施前にはカフ上部および口腔・鼻腔分泌物を先に吸引し、プレオキシジェネーションを行ったうえで、気管分岐部に当たらないようカテーテルを挿入します。閉鎖式吸引システムの活用や、SpO2・心拍数を中心としたバイタルサインの観察によって、安全で確実な吸引を心がけることが重要です。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    気管内吸引で最も生じやすい合併症はであり、吸引中は実質的な無呼吸状態となるため酸素化が低下する。

  2. 2.

    成人の気管内吸引における吸引圧は−〜−mmHgが標準である。

  3. 3.

    1回の陰圧をかける吸引時間は秒以内、カテーテルの挿入から抜去までを含めても秒以内にとどめる。

  4. 4.

    吸引カテーテルの外径は、気管チューブ内径の以下を目安に選択する。

  5. 5.

    気管内吸引の前に、口腔・鼻腔・咽頭部および気管チューブのに貯留した分泌物を先に吸引することで、人工呼吸器関連肺炎()を予防する。

  6. 6.

    吸引前に100%酸素を投与してSpO2を高めておく操作をという。

  7. 7.

    カテーテル挿入時は、粘膜損傷や迷走神経反射による徐脈を避けるため、に当たらない位置まで挿入する。

  8. 8.

    人工呼吸器装着患者では、回路を外さずに吸引でき酸素化低下やVAPを予防できるシステムの活用が推奨される。

  9. 9.

    吸引中の観察項目には、、心拍数、心電図波形、血圧、顔色、喀出物の性状などが含まれる。

気管内吸引」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。