StudyNurse

滅菌・消毒法

基礎看護学 / 感染対策

解説

今回は滅菌・消毒法について解説します。医療現場では、患者を感染から守るために器具や環境を清潔に保つ必要があります。そのために行われるのが滅菌と消毒であり、両者は似ているようで意味も方法も大きく異なります。本記事では、定義の違いから具体的な方法、薬剤の使い分けまでを順に整理していきます。

滅菌と消毒の定義の違い

滅菌とは、芽胞を含むすべての微生物を死滅または除去することをいいます。滅菌の達成度を表す指標としてSAL(無菌性保証水準)10⁻⁶が用いられ、これは100万分の1以下の確率でしか微生物が生存しないレベルを意味します。一方、消毒は病原微生物を感染を起こさないレベルまで減らすことであり、すべての微生物を死滅させるわけではありません。したがって、無菌が必要な場面では消毒ではなく滅菌が選択されます。

ここで重要になるのが芽胞です。芽胞は一部の細菌が形成する休眠状態の構造で、熱や薬剤に極めて強い抵抗性を持ちます。芽胞を形成する代表的な菌には、破傷風菌、ボツリヌス菌、炭疽菌、Clostridium difficile(クロストリディオイデス・ディフィシル)があり、これらに対しては通常の消毒では不十分で、滅菌または高水準消毒が必要となります。

主な滅菌法と適応

臨床で最も汎用されるのが**高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)**です。約121℃、2気圧前後で15〜20分処理し、金属器具、ガラス、繊維、液体など熱と水分に耐えるものに用いられます。乾熱滅菌は160〜180℃の乾燥した熱を用いる方法で、水分を嫌うガラス器具や金属、油脂類に適します。

熱に弱い器材には化学的な滅菌法が選ばれます。酸化エチレンガス(EOG)滅菌は、耐熱性のないプラスチックやゴム製品に用いられますが、ガスに毒性があるため処理後に残留ガスを除去するエアレーションが必要です。低温プラズマ滅菌は過酸化水素を用いる方法で、精密機器や内視鏡など熱や湿度に弱い器材に適していますが、紙・繊維・液体には使用できません。放射線(γ線)滅菌は工業的に大量の医療材料を処理する際に用いられます。

消毒薬の作用レベル分類

消毒薬は微生物に対する効力で三段階に分類されます。高水準消毒薬にはグルタラール、フタラール、過酢酸があり、芽胞まで死滅させることができますが、毒性が強いため器具用であり人体には使用できません。中水準消毒薬には次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨード、消毒用エタノールがあり、結核菌やほとんどのウイルスに有効です。低水準消毒薬にはクロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、第四級アンモニウム塩があり、一般細菌や真菌に有効ですが、結核菌や芽胞には効きません。

商品名と一般名の対応も覚えておきましょう。ステリハイドはグルタラール、イソジンはポビドンヨード、ヒビテンはクロルヘキシジン、オスバンは塩化ベンザルコニウムです。

スポルディングの分類

器具をどのレベルで処理するかを決める指針がスポルディングの分類です。血管内や無菌組織に侵入する器具はクリティカルに分類され、滅菌が必要です。粘膜や損傷した皮膚に接触する器具はセミクリティカルで、高水準消毒を行います。健常な皮膚にのみ接触するものはノンクリティカルで、低〜中水準消毒や洗浄で十分です。なお、80℃10分間の熱水消毒もノンクリティカル器具に有効です。

ノロウイルスへの対応

ノロウイルスはエンベロープを持たない非エンベロープウイルスであり、アルコール消毒は無効です。嘔吐物や便の処理には次亜塩素酸ナトリウム0.1%(1000ppm)、環境消毒には0.02%(200ppm)を使用します。国試で頻出のため濃度まで覚えておきましょう。

無菌操作の原則

滅菌された器材を扱う際の無菌操作には三つの原則があります。第一に清潔と不潔を明確に区別すること、第二に一度不潔になったものは滅菌物として扱わないこと、第三に視野内で操作することです。鑷子は先端を閉じて取り出し、汚染を防ぐため先端を下向きに保ち、腰より高い位置で操作します。

滅菌手袋を装着する際は、素手では手袋の内側(折り返し部分)にのみ触れ、外側(滅菌面)には触れません。装着後の滅菌手は滅菌された物品のみに触れ、不潔区域には触れないようにします。

まとめ

滅菌はすべての微生物を死滅させる処理でSAL10⁻⁶を達成するレベルであり、消毒は病原微生物を感染を起こさない程度まで減らす処理です。高圧蒸気滅菌は最も汎用される滅菌法ですが、熱に弱い器材にはEOG滅菌や低温プラズマ滅菌が選択されます。消毒薬は高・中・低水準に分かれ、対象の器具がクリティカル・セミクリティカル・ノンクリティカルのどれに該当するかで使い分けます。ノロウイルスにはアルコールが無効で次亜塩素酸ナトリウムを用いる点、無菌操作の原則と鑷子の扱いは国試頻出ですので、確実に押さえておきましょう。

確認問題(穴埋め)

空欄をタップすると答えが表示されます。

  1. 1.

    滅菌とは、芽胞を含むすべての微生物を死滅または除去することであり、その達成度を表す無菌性保証水準はである。

  2. 2.

    臨床で最も汎用される滅菌法は(オートクレーブ)であり、約121℃・2気圧で15〜20分処理する。

  3. 3.

    熱に弱いプラスチックやゴム製品の滅菌には(EOG)滅菌が用いられ、処理後にエアレーションが必要である。

  4. 4.

    芽胞を形成する代表的な菌には破傷風菌、ボツリヌス菌、炭疽菌、などがある。

  5. 5.

    高水準消毒薬であるグルタラール、フタラール、は芽胞も死滅させるが、人体には使用できない。

  6. 6.

    スポルディングの分類で、血管内や無菌組織に侵入する器具はに分類され、滅菌が必要である。

  7. 7.

    粘膜や損傷皮膚に接触するセミクリティカル器具には消毒を行う。

  8. 8.

    ノロウイルスは非エンベロープウイルスのためアルコールは無効であり、嘔吐物の処理には0.1%(1000ppm)を用いる。

  9. 9.

    商品名イソジンの一般名はであり、中水準消毒薬に分類される。

  10. 10.

    無菌操作で鑷子を取り出す際は先端を閉じ、汚染を防ぐため先端を向きに保ち、腰より高い位置で操作する。

滅菌・消毒法」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。