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針刺し事故と感染防止

基礎看護学 / 感染対策

解説

今回は針刺し事故と感染防止について解説します。針刺し事故とは、注射針や採血針などの鋭利器材によって医療従事者が誤って自分の皮膚を傷つけ、患者の血液や体液に曝露してしまう事故のことです。看護師にとって最も身近で深刻な職業感染のリスクであり、国家試験でも頻出のテーマですので、原因・防止策・発生時の対応まで体系的に理解しておきましょう。

針刺し事故で感染する代表的な病原体

針刺し事故で問題となるのは、血液を介して感染する血液媒介ウイルスです。代表的なものは三つあり、B型肝炎ウイルス(HBV)C型肝炎ウイルス(HCV)、**ヒト免疫不全ウイルス(HIV)**です。これらは血液中に存在し、針を通じて体内に入ると感染が成立する可能性があります。

感染力の強さには大きな差があります。針刺し事故1回あたりの感染率の目安は、HBVが約30パーセントと最も高く、HCVが約3パーセント、HIVが約0.3パーセントとされています。HBVが圧倒的に感染力が強いため、医療従事者にはHBVワクチンの事前接種が強く推奨されています。

針刺し事故を防止するための基本対策

針刺し事故を防ぐ最も重要な原則は、使用後の針にリキャップをしないことです。リキャップとは、使用済みの針にキャップをかぶせ直す行為で、この動作中に手を刺してしまう事故が非常に多いため、明確に禁止されています。使用済みの針はキャップをせず、その場で耐貫通性の専用廃棄容器、すなわち感染性廃棄物容器に直接廃棄します。これは血液・体液をすべて感染性とみなして扱うスタンダードプリコーションの考え方に基づいた対応です。

廃棄容器の扱いにも注意が必要です。鋭利器材廃棄専用容器は満杯になるまで使用してはいけません。容量の7〜8割に達したら密閉し、新しい容器に交換します。満杯にすると針が突き出て事故の原因になるためです。

そのほか、安全装置付きの採血針や留置針といった安全機構付き器材を導入することも有効で、エピネット日本版などのサーベイランス制度により事故の実態を把握し、対策に役立てる取り組みも進められています。なお、手袋の着用や手指消毒は血液媒介感染のリスクを下げる標準予防策ですが、針そのものが皮膚を貫く事故を防ぐ手段ではない点に注意しましょう。

針刺し事故が発生したときの対応

万一事故が起きた場合は、落ち着いて手順通り対応します。まず受傷部位を流水と石けんで十分に洗浄し、血液を絞り出すようにします。次に直ちに所属部署の責任者や感染対策室へ報告します。報告を怠ると曝露後予防の機会を逃すため、自己判断で放置してはいけません。

続いて感染源となった患者のHBs抗原、HCV抗体、HIV抗体を検査し、曝露を受けた医療従事者側の血液検査も行います。HBVへの曝露でワクチン未接種かつHBs抗体陰性の場合は、HBIG(高力価抗HBsヒト免疫グロブリン)とHBVワクチンを接種します。HIVに曝露した場合は、できるだけ早く**抗レトロウイルス薬による曝露後予防(PEP)**を開始します。HCVには有効な曝露後予防はなく、定期的な経過観察で感染の有無を確認します。これらの一連の対応を理解しておくことが、看護師としての安全管理の基本となります。

確認問題(穴埋め)

空欄をタップすると答えが表示されます。

  1. 1.

    使用後の針には[]をせず、その場で耐貫通性の専用廃棄容器に廃棄する。

  2. 2.

    血液・体液をすべて感染性とみなして扱う標準予防策を[]という。

  3. 3.

    針刺し事故で感染する代表的な血液媒介ウイルスは、HBV、HCV、[]の3つである。

  4. 4.

    針刺し事故1回あたりの感染率が最も高いウイルスは[]である。

  5. 5.

    鋭利器材廃棄専用容器は容量の[]割で密閉・交換する。

  6. 6.

    針刺し事故発生時はまず受傷部位を[]で十分に洗浄する。

  7. 7.

    HBV曝露でワクチン未接種かつHBs抗体陰性の場合は、[]とHBVワクチンを接種する。

  8. 8.

    HIV曝露時には抗レトロウイルス薬による[]を速やかに開始する。

針刺し事故と感染防止」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。