除細動器の使用目的
基礎看護学 / 医療安全・その他
解説
今回は除細動器の使用目的について解説します。
心臓の電気的活動と洞調律
心臓は規則的に拍動することで全身に血液を送り出していますが、その拍動を作り出しているのは心臓自身が発する電気信号です。正常な状態では、右心房上部にある洞結節(洞房結節)でリズミカルに電気信号が発生し、その信号が心房から房室結節、ヒス束、プルキンエ線維を経て心室全体へ伝わることで、心房と心室が順序よく収縮します。この洞結節を起点とした正常な心拍リズムを洞調律(サイナスリズム)と呼びます。 この電気的な伝導経路に異常が生じてリズムが乱れた状態が不整脈です。不整脈には命にかかわらないものから、放置すれば数分で死亡する致死的なものまでさまざまな種類があります。
致死的不整脈とは
致死的不整脈の代表が心室細動(VF:ventricular fibrillation)と無脈性心室頻拍(pulseless VT)です。心室細動は、心室の心筋がばらばらに無秩序に興奮してけいれんするように動く状態で、心臓はポンプとしての機能を完全に失います。無脈性心室頻拍も心室が極端に速く収縮するため血液を駆出できず、脈拍が触れません。いずれも放置すれば数分以内に死亡するため、ただちに正常リズムへ戻す必要があります。
除細動器の使用目的
直流除細動器(DC defibrillator)とは、心臓に直流電流を瞬間的に流すことで、興奮している心筋全体を一度に脱分極させ、洞結節由来の正常リズムである洞調律への復帰を期待する医療機器です。つまり除細動器の使用目的は、致死的不整脈に対して電気的ショックを加え、心臓の電気活動をいったんリセットして正常な拍動を取り戻すことにあります。
適応と非適応
除細動の適応となるのは心室細動と無脈性心室頻拍です。これらは心筋が電気的に興奮している状態であるため、外部から強い電流を加えることでまとめてリセットできます。 一方、除細動の非適応となるのが心静止(asystole)と無脈性電気活動(PEA)です。心静止は心臓の電気活動そのものが消失した状態であり、電気ショックを加えてもリセットすべき興奮が存在しません。PEAは電気活動はあるものの心筋が収縮できていない状態で、これも除細動の対象外です。これらに対しては胸骨圧迫とアドレナリン投与が優先されます。
非同期モードと同期モード
除細動器には大きく2つの通電モードがあります。
非同期モード(除細動)
心電図のR波に同期させず、ボタンを押した瞬間に通電するモードです。心室細動や無脈性心室頻拍のようにR波そのものが識別できない致死的不整脈に対して用います。
同期モード(カルディオバージョン)
心電図のR波に同期して通電するモードで、カルディオバージョンと呼ばれます。心房細動や心房粗動、脈ありの心室頻拍、血行動態が不安定な心室頻拍などに用います。R波に同期させる理由は、心室の受攻期(T波の頂上付近)に通電すると逆に心室細動を誘発してしまうため、これを避ける目的があります。
エネルギー量とAED
通電エネルギーは二相性除細動器でおおむね120〜200J、AEDでも最大200J程度が用いられます。AED(自動体外式除細動器)は一般市民でも使えるように設計された簡易型の除細動器で、電極を貼ると自動的に心電図を解析し、ショックの適応リズム(心室細動・無脈性心室頻拍)を検出したときのみ通電を推奨します。心静止やPEAに対してはショックボタンが作動しない仕組みになっており、誤使用を防いでいます。
早期除細動の意義
心停止から除細動までの時間が長くなるほど救命率は急激に低下し、1分ごとに7〜10%ずつ救命率が低下するといわれています。そのため、一次救命処置(BLS)では胸骨圧迫とともに、できるだけ早期にAEDを装着し電気ショックを行うことが救命の鍵となります。
まとめ
除細動器の使用目的は、心室細動や無脈性心室頻拍といった致死的不整脈に対して直流電流を瞬間的に流し、心筋全体を一斉に脱分極させて洞調律への復帰を促すことにあります。適応はVFと無脈性VTのみで、心静止やPEAは適応外である点が国試で頻出です。非同期モードは除細動、同期モードはR波同期によるカルディオバージョンとして使い分け、AEDは市民にも使える自動解析型として位置づけられます。早期除細動こそが救命率を左右する最大の要素であることを確実に押さえておきましょう。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
心臓の正常なリズムは、右心房上部にあるから発生する電気信号によって作られ、洞調律と呼ばれる。
- 2.
心室の心筋がばらばらに無秩序に興奮し、心臓がポンプ機能を失う致死的不整脈をという。
- 3.
直流除細動器は心臓に直流電流を流して心筋全体を一斉にさせ、洞調律への復帰を期待する医療機器である。
- 4.
除細動の適応となる致死的不整脈は心室細動とである。
- 5.
心臓の電気活動そのものが消失した状態であると無脈性電気活動(PEA)は、除細動の適応外である。
- 6.
心房細動や心房粗動などに対し、R波に同期して通電する除細動モードをという。
- 7.
同期モードでR波に合わせて通電する理由は、T波付近の心室の受攻期に通電するとを誘発する危険があるためである。
- 8.
一般市民でも使用できるように設計された、自動で心電図を解析し適応リズム時のみ通電を推奨する簡易型除細動器をという。
- 9.
心停止から除細動までの時間が遅れると救命率は急激に低下し、1分ごとにおよそずつ低下するとされる。
