インフォームド・コンセント
基礎看護学 / 看護倫理・看護師法規
解説
医療現場では、患者さんが自分の体に何が起きているのか、これからどのような検査や治療が行われるのかを理解した上で、自分自身で「受ける」「受けない」を決められることがとても大切にされています。この考え方の中心にあるのがインフォームド・コンセントです。看護師国家試験では医療倫理の基本中の基本として頻出する概念ですので、用語の意味から関連概念までしっかり整理しておきましょう。
インフォームド・コンセントとは
インフォームド・コンセント(informed consent)は日本語で「説明と同意」と訳されます。「informed」とは「十分な情報を与えられた」という意味で、「consent」は「同意」を指します。つまり、医療従事者が患者に対して病状、検査や治療の内容、期待される効果と起こりうるリスク、ほかにどのような選択肢があるか、治療を行わなかった場合の見通しなどを、患者が理解できる平易な言葉で十分に説明し、患者が自由意思に基づいて同意または拒否することを意味します。
単に同意書にサインをもらえばよいというものではなく、説明から理解、納得、意思決定までの一連のプロセス全体を指す点が重要です。患者は納得できるまで何度でも質問したり追加の説明を受けたりする権利を持ち、いったん同意した内容でもいつでも撤回することができます。
倫理的・法的根拠
インフォームド・コンセントは、患者の自己決定権を尊重するための医療倫理の基本原則です。生命倫理の4原則である「自律尊重」「善行」「無危害」「正義」のうち、特に「自律尊重原則」を具体的な形で実現する仕組みといえます。
国際的には1964年のヘルシンキ宣言(世界医師会)や1981年のリスボン宣言で患者の権利として明文化されました。日本では1997年の医療法改正により、医療法第1条の4第2項に「医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない」と規定され、医療提供者の努力義務として位置づけられています。
看護師の役割
説明そのものは主に医師が行いますが、看護師はインフォームド・コンセントが真に成立するように支援する重要な役割を担います。具体的には、説明の場に同席して患者の表情や反応を観察し、患者が説明をどの程度理解できているかを確認します。理解が不十分であれば医師による追加説明を調整したり、医学用語を生活言語に置き換えてわかりやすく補足したりします。患者が迷っているときには気持ちを傾聴し、価値観を整理する手助けをしながら意思決定を支援します。
判断能力のある成人患者に対しては、家族や医療者の意向ではなく患者本人の意思を最優先に尊重することが原則です。
関連する概念
インフォームド・コンセントを発展させた概念も国試では問われます。インフォームド・チョイスは複数の選択肢の中から患者が自分に合うものを選ぶこと、シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM、共同意思決定)は医療者と患者が情報と価値観を共有しながら一緒に方針を決めるプロセスです。小児では発達段階に応じた同意を意味するインフォームド・アセントが用いられます。
また、判断能力が将来失われる可能性を見据え、あらかじめ希望を表明しておく事前指示書(アドバンス・ディレクティブ)や、人生の最終段階の医療・ケアを話し合うアドバンス・ケア・プランニング(ACP)も重要です。患者が医療に主体的に参加することを示すアドヒアランスは、医療者の指示に従うという従来の「コンプライアンス」に代わって近年重視されています。
臨床研究における倫理委員会
臨床研究は医学・看護学の進歩に不可欠ですが、研究対象者に身体的・精神的負担を強いる可能性があります。そこで研究計画の倫理的妥当性、科学的妥当性、対象者の人権と安全の保護状況を第三者の立場から審査するのが倫理委員会(IRB:Institutional Review Board)です。倫理委員会は医療・看護の専門家だけでなく法律家や一般市民など多様な立場のメンバーで構成され、研究対象者へのインフォームド・コンセントの取り方、個人情報保護、リスクと利益のバランス、同意撤回権の保障などを審査します。
まとめ
インフォームド・コンセントは「説明と同意」と訳され、医療従事者が患者に十分な情報を理解できる言葉で提供し、患者が自由意思で同意・拒否・撤回できる一連のプロセスを指します。患者の自己決定権を守るための医療倫理の核心であり、医療法にも医療提供者の努力義務として明記されています。看護師は説明への同席や理解度の確認、意思決定の支援を通じてこの原則の実現を支える役割を担います。臨床研究の場では倫理委員会が対象者の権利を守る仕組みとして機能していることも、合わせて押さえておきましょう。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
インフォームド・コンセントは日本語で「」と訳される。
- 2.
インフォームド・コンセントは患者の権を尊重するための医療倫理の基本原則である。
- 3.
生命倫理の4原則のうち、インフォームド・コンセントが具現化するのは原則である。
- 4.
日本では第1条の4第2項により、医療提供者の説明と理解を得る努力義務が規定されている。
- 5.
患者はいったん同意した後でも、いつでもその同意をすることができる。
- 6.
医療者と患者が情報と価値観を共有しながら共同で方針を決めるプロセスを(共同意思決定)という。
- 7.
臨床研究の倫理的妥当性や研究対象者の人権を審査する第三者組織をという。
- 8.
人生の最終段階における医療・ケアについて、患者・家族・医療者が繰り返し話し合うプロセスを(ACP)という。
