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前立腺疾患と手術看護

成人看護学 / 腎・泌尿器

解説

前立腺は膀胱の真下にあり、尿道の起始部を取り囲むクルミ大の男性生殖器です。精液の一部となる前立腺液を分泌する役割を持ち、加齢やホルモンの影響を受けやすい臓器として知られています。前立腺の疾患は男性高齢者で頻度が高く、看護師国家試験では前立腺肥大症前立腺癌、そしてその代表的な手術である**経尿道的前立腺切除術(TURP)**の術後看護が繰り返し問われます。本稿では病態の意味から治療、術後の合併症と退院指導までを順に学んでいきましょう。

前立腺肥大症の病態と症状

前立腺肥大症は、加齢に伴って尿道に近い移行領域の組織が増殖し、尿道を内側から圧迫することで起こる疾患です。男性ホルモンの影響を背景に50歳以降から有病率が高まり、高齢男性の代表的な排尿障害となります。

前立腺が肥大して尿道が狭くなると、膀胱は強い力で尿を押し出さなければなりません。その結果、尿の勢いが弱くなる尿勢低下、出始めに時間がかかる排尿開始遅延、途中で尿が途切れる尿線途絶といった排尿症状が現れます。さらに膀胱内に尿を出し切れずに残尿が増えると、膀胱に貯められる実質的な容量が減るため、少量の尿でも尿意を感じてしまい頻尿や夜間頻尿、尿意切迫感などの蓄尿症状が出現します。排尿後にすっきりしない残尿感も特徴的です。これらの症状はIPSS(国際前立腺症状スコア)で点数化され、重症度評価に用いられます。

進行して尿を全く出せなくなる状態を尿閉といい、放置すると尿が腎臓側へ逆流して水腎症を引き起こし、腎機能障害に至ることもあります。

前立腺肥大症の治療

薬物療法の中心は、尿道や前立腺の平滑筋を弛緩させて排尿をスムーズにするα1遮断薬(タムスロシンなど)と、前立腺自体を縮小させる5α還元酵素阻害薬(デュタステリド、フィナステリド)です。薬物療法で改善しない場合や尿閉を繰り返す場合に行われる外科的治療の第一選択が、経尿道的前立腺切除術(TURP)です。

前立腺癌の特徴と腫瘍マーカー

前立腺癌は男性の癌罹患数の上位を占め、加齢とアンドロゲン(男性ホルモン)依存性が大きな特徴です。多くは前立腺の辺縁領域から発生するため、初期は無症状で進行してから排尿症状や血尿で気づかれることがあります。骨転移を起こしやすく、腰痛や病的骨折の原因となるため注意が必要です。

スクリーニングに広く用いられる腫瘍マーカーがPSA(前立腺特異抗原)で、前立腺上皮細胞から分泌される糖タンパク質です。前立腺癌で血中濃度が上昇し、一般に4.0ng/mL以下が基準値とされますが、前立腺肥大症や前立腺炎でも上昇するため、確定診断には前立腺生検が必要です。組織悪性度はGleason scoreで評価します。

治療は病期や年齢、全身状態に応じて、監視療法、前立腺全摘術、放射線療法(外照射・密封小線源療法)、男性ホルモンを抑制する内分泌療法などから選択されます。

経尿道的前立腺切除術(TURP)と術後合併症

TURPは尿道から内視鏡を挿入し、肥大した前立腺組織を電気メスで削り取る手術です。開腹せず行えますが、特有の合併症があります。

灌流液が血管内に吸収されることで起こるTUR症候群は、希釈による低ナトリウム血症をきたし、悪心、意識障害、血圧変動を生じます。また、切除面からの出血や血塊による尿道閉塞を防ぐため、術後は持続膀胱洗浄が行われます。膀胱頸部が広がるため射精時に精液が膀胱側へ流れる逆行性射精や、尿道狭窄も晩期合併症として知られます。

術後早期、膀胱内に尿がほとんど貯留していないにもかかわらず強い尿意を訴える場合は、カテーテルや手術操作による膀胱刺激症状が原因として最も多く、発熱や尿混濁がなければ経過観察となります。

TURP後の退院指導

術後約1か月は前立腺の創面が脆弱で、出血や感染のリスクが残ります。看護師は次の指導を行います。尿路感染を予防するため1日1.5〜2Lの水分摂取を促し尿量を確保すること、便秘で強くいきむと腹圧上昇により創部出血を誘発するため怒責を避け便通を整えること、長時間の座位や自転車・長距離運転・長湯・飲酒・激しい運動は出血リスクを高めるため控えること、散歩程度の軽い運動は回復促進のため推奨されることなどです。血尿の増悪、発熱、排尿困難があれば速やかに受診するよう説明します。

まとめ

前立腺肥大症は加齢による移行領域の肥大が尿道を圧迫し、残尿増加によって有効膀胱容量が減少することで頻尿などの下部尿路症状をきたします。前立腺癌はアンドロゲン依存性の癌でPSAがスクリーニングに用いられ、確定診断は生検によります。TURPの術後看護では、TUR症候群、出血、膀胱刺激症状の観察と、水分摂取・怒責回避・過度な運動制限といった退院指導が重要です。病態生理と合併症を結びつけて理解することが、国試で正解にたどり着く近道となります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    前立腺肥大症は加齢に伴い前立腺の領域が肥大し尿道を圧迫する疾患である。

  2. 2.

    前立腺肥大症の頻尿の主な原因は、量の増加により有効膀胱容量が減少することである。

  3. 3.

    前立腺肥大症の薬物療法では、平滑筋を弛緩させると前立腺を縮小させる5α還元酵素阻害薬が用いられる。

  4. 4.

    前立腺癌のスクリーニングに用いられる腫瘍マーカーは(前立腺特異抗原)である。

  5. 5.

    前立腺癌はアンドロゲン(ホルモン)依存性の癌であり、内分泌療法が有効である。

  6. 6.

    経尿道的前立腺切除術後に、灌流液の吸収により低ナトリウム血症を生じる合併症をという。

  7. 7.

    TURP後に膀胱内に尿が貯留していないのに強い尿意を訴える場合、最も考えられるのはである。

  8. 8.

    TURP後の退院指導では、尿路感染予防のため1日1.5〜2Lの摂取を促す。

  9. 9.

    TURP後は排便時の強いが創部出血を誘発するため、便秘を予防するよう指導する。

前立腺疾患と手術看護」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。