患者教育・学習の原則
基礎看護学 / 看護過程・看護理論
解説
今回は患者教育・学習の原則について解説します。患者教育は、患者が病気と向き合い、生活の中で必要な行動を獲得していけるよう支援する重要な看護行為です。国試では学習の定義、自己効力感、集団指導と個別指導の使い分けが繰り返し問われています。
学習とは
学習とは、心理学的には「経験によって生じる比較的永続的な行動の変容」と定義されます。新しい情報を一時的に覚えただけでは学習とはいえず、その経験を通して行動が持続的に変化することが学習成立の条件です。看護師が指導を行う際も、知識を伝えるだけで終わらせず、患者の生活行動が実際に変わったかどうかで評価することが大切です。
代表的な学習理論
パブロフが提唱した古典的条件づけは、ある刺激と反応が結びつく学習です。スキナーのオペラント条件づけは、行動の結果として得られる報酬や罰によって行動頻度が変わる学習を指します。バンデューラの社会的学習理論では、他者の行動を観察することでも学習が成立するとされ、これを観察学習(モデリング)と呼びます。
成人学習の特徴
成人を対象とした学習理論をアンドラゴジーといいます。成人は自らの経験を学習資源として活用でき、自分が必要だと感じる課題に対して主体的に学ぶ特徴があります。患者教育では、これまでの生活経験を尊重し、本人の問題意識を引き出しながら指導を進めることが効果的です。
自己効力感
自己効力感(self-efficacy)とは、「自分にもできる」という見通しの感覚のことで、バンデューラが提唱した概念です。自己効力感が高い患者ほど療養行動を継続でき、生活習慣の改善が進みやすいため、慢性疾患のセルフマネジメント支援で重視されます。
自己効力感を高める4つの源
自己効力感は4つの情報源から形成されます。第一は遂行行動の達成で、実際に自分でやってみて成功した体験であり、もっとも強く自己効力感を高めます。第二は代理的経験で、自分と似た立場の人が達成している姿を見ることです。第三は言語的説得で、他者から励まされることです。第四は生理的・情動的状態で、体調や気分の安定が自信につながります。
看護師による支援の原則
自己効力感を高める基本は、小さな成功体験を積み重ねられるよう目標を細かく設定し、達成できた点を肯定的にフィードバックすることです。できなかった点を指摘するのではなく、改善できた部分を具体的にほめることで、患者は次の行動への意欲を持ち続けられます。
集団指導と個別指導
患者教育の方法には集団指導と個別指導があり、内容や対象に応じて使い分けます。
集団指導が適する場面
集団指導は、同じ疾患や課題を持つ人々が集まって学ぶ方法で、糖尿病教室、母親学級、禁煙教室、ストーマ患者会などが代表例です。利点は、体験共有によるピアサポート効果、情報交換、動機づけの向上、指導の効率性です。共通の課題を持つ仲間の存在は、孤独感を和らげ自己管理を続ける力となります。
個別指導が適する場面
プライバシーへの配慮が必要な内容や、個別性が高く一人ひとり状況が異なる内容は個別指導が原則です。性に関する事柄、排泄、感染症の告知など他者の前で話しにくい内容は必ず個別に行います。
まとめ
学習とは経験による比較的永続的な行動の変容であり、患者教育では行動の定着まで支援することが求められます。自己効力感は「自分にもできる」という感覚で、遂行行動の達成を中心とした成功体験と肯定的フィードバックによって高まります。集団指導はピアサポートが得られる場面で有効ですが、プライバシーに関わる内容は個別指導が原則です。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
心理学において学習とは、経験によって生じる比較的な行動の変容と定義される。
- 2.
他者の行動を観察することで学習が成立するという社会的学習理論を提唱したのはである。
- 3.
成人を対象とした学習理論で、学習者自身の経験を活用し主体的に学ぶことを重視する考え方をという。
- 4.
「自分にもできる」という見通しの感覚で、バンデューラが提唱した概念をという。
- 5.
自己効力感を形成する4つの源のうち、もっとも強く自己効力感を高めるのはである。
- 6.
自己効力感を高める支援の基本は、小さな成功体験を積み重ね、改善できた点を見逃さずにフィードバックすることである。
- 7.
同じ疾患や課題を持つ人々が集まり、体験を語り合うことで得られる仲間同士の支え合いの効果をという。
- 8.
性・排泄・感染症などプライバシーへの配慮が必要な指導は、集団指導ではなくを原則とする。
