StudyNurse

「自分ならできる」が禁酒を支える――バンデューラの自己効力感を読み解く

看護師国家試験 第115午前33

国試問題にチャレンジ

115午前33

禁酒を指導されている患者が「禁酒できたらもっと健康的な生活になるね。自分は我慢強いところがあるからやれると思う」と話し、3週間禁酒を続けている。患者の行動変容を促したのはどれか。

  1. 1.自己洞察
  2. 2.自己効力感
  3. 3.自己中心性
  4. 4.自己同一性

対話形式の解説

博士博士
今日は行動変容の鍵となる「自己効力感」について学んでいくぞ。国試では事例問題で頻出のテーマじゃ。
サクラサクラ
問題文の患者さんは「我慢強いところがあるからやれると思う」って言っていますね。これってただの自信のことですか?
博士博士
ただの自信よりももう少し具体的な概念じゃ。自己効力感(self-efficacy)はカナダの心理学者バンデューラが提唱した概念で、「ある特定の行動を、自分はうまく遂行できる」という主観的な見込み感を指すんじゃよ。
サクラサクラ
なるほど、「漠然とした自信」ではなく「この行動はできる」という具体的な確信なんですね。
博士博士
その通り。患者の発言は「禁酒という行動を、自分の我慢強さを根拠としてやれる」と語っているから、まさに自己効力感の表現じゃ。しかも3週間続けられていることで、その確信はさらに強化されておる。
サクラサクラ
他の選択肢が紛らわしいです。自己洞察と自己効力感ってどう違うんですか?
博士博士
良い質問じゃ。自己洞察は「自分はどういう人間か」を客観的に理解する能力。一方、自己効力感は「自分はこの行動をやれる」という遂行可能性の確信。洞察は気づきの段階、効力感は実行の見通しと整理するとよい。
サクラサクラ
自己中心性は発達心理学の用語ですよね?
博士博士
うむ、ピアジェの理論で、幼児が他者視点に立てない段階を指す用語じゃ。行動変容を説明する概念ではないから、ここでは違う。自己同一性も、エリクソンが言う青年期のアイデンティティ確立の概念で、健康行動の直接の駆動力ではない。
サクラサクラ
では、自己効力感を高めるにはどうしたらいいんですか?看護師としても支援に活かしたいです。
博士博士
バンデューラは4つの情報源を挙げておる。1つ目は遂行的達成、つまり実際に成功体験を積むこと。2つ目は代理的経験で、似た立場の人の成功を見ること。3つ目は言語的説得、つまり他者からの励まし。4つ目は生理的・情動的喚起で、心身の状態が良好だと自信も湧きやすい。
サクラサクラ
この患者さんは3週間禁酒という成功体験、まさに遂行的達成を積んでいるんですね。
博士博士
その通りじゃ。看護師は「3週間も続いていますね、すごいですね」と具体的にフィードバックして、その達成感を言語化してあげると効果的じゃ。曖昧に褒めるより、できた事実を具体的に伝えるのがポイントじゃよ。
サクラサクラ
逆に、再飲酒してしまったときはどうしたらいいでしょう?自己効力感が下がってしまいそうで…。
博士博士
鋭い視点じゃ。失敗を「自分はダメだ」と一般化させず、「今回はこの状況が引き金だった」と具体的に振り返らせるのが大切じゃ。これは認知行動療法でいう再発防止プログラムにもつながる考え方じゃな。
サクラサクラ
行動変容ステージモデルと組み合わせるのも有効そうですね。
博士博士
その通り。プロチャスカらのトランスセオレティカルモデルでは、無関心期→関心期→準備期→実行期→維持期と段階が分かれており、各段階に応じた介入が効果的じゃ。本事例は実行期から維持期に移る段階で、自己効力感の維持が重要になる。
サクラサクラ
心理学の用語って似ているものが多くて混乱しがちでしたが、「行動の遂行可能性への確信」が自己効力感、と覚えればよさそうですね。
博士博士
うむ、よくまとまった。臨床では患者の言葉から心理状態を読み取る力が問われるから、こうした概念をしっかり押さえておくのじゃ。

POINT

「自分ならできる」という主観的確信が行動変容を促進する概念は何かを問う問題。バンデューラの自己効力感の定義と、紛らわしい心理学用語(自己洞察・自己中心性・自己同一性)との区別がカギ。

解答・解説

正解は2です

問題文:禁酒を指導されている患者が「禁酒できたらもっと健康的な生活になるね。自分は我慢強いところがあるからやれると思う」と話し、3週間禁酒を続けている。患者の行動変容を促したのはどれか。

解説:正解は 2 の「自己効力感」です。 自己効力感(self-efficacy)はカナダの心理学者バンデューラ(Bandura, A.)が提唱した概念で、「ある状況下で、自分はその目標達成に必要な行動を遂行できるという確信・見込み感」を指します。患者は「自分は我慢強いところがあるからやれると思う」と、自分自身の特性と能力を肯定的に評価したうえで「できる」と表明しており、これがまさに自己効力感の高まりを示す発言です。さらに3週間の禁酒継続という成功体験が積み重なることで、自己効力感はより強化され、行動変容(禁酒)が維持されていると判断できます。

選択肢考察

  1. ×1.  自己洞察

    自己洞察は、自分の感情や思考、行動傾向、性格などを客観的に見つめて理解する能力のことを指す。自分を振り返って気づく段階の概念であり、「実際に行動できる」という見通しまでは含まない。本事例の患者の発言は「自分はできる」という遂行可能性の確信であり、自己洞察よりも自己効力感の表現が適切である。

  2. 2.  自己効力感

    バンデューラが提唱した概念で、「目標達成のために必要な行動をうまくやれる」という主観的確信のこと。患者の「我慢強いからやれると思う」という発言は、自分の特性に根ざした遂行可能性の確信そのものであり、3週間の継続成功という遂行的達成(成功体験)がさらに自己効力感を高めている。行動変容を開始し維持する強力な動機づけ要因となる。

  3. ×3.  自己中心性

    自己中心性はピアジェの発達理論において、幼児(前操作期)が他者の視点に立てず、自分の見方が世界の見方と同じだと考える特徴を表す用語である。発達心理学の概念であり、行動変容のメカニズムを説明する用語ではないため不適切。

  4. ×4.  自己同一性

    自己同一性(アイデンティティ)はエリクソンが提唱した青年期の発達課題で、「自分とは何者か」という連続性・一貫性のある自己像を確立することを指す。健康行動の継続そのものを直接駆動する概念ではないため、設問の状況にはあてはまらない。

バンデューラは自己効力感を高める4つの情報源として、(1)遂行的達成(自分で成功体験を得ること)、(2)代理的経験(他者の成功を見ること)、(3)言語的説得(他者からの励まし)、(4)生理的・情動的喚起(心身の状態の良好さ)を挙げている。本問の患者は禁酒を3週間継続した「遂行的達成」によって自己効力感がさらに強化される好循環に入っており、看護師は「できているところ」を具体的にフィードバックして自己効力感を支えることが重要となる。健康行動の継続支援では、トランスセオレティカルモデル(行動変容ステージモデル)と組み合わせて、現在の準備性に応じた介入を選ぶことも臨床現場で頻用される。

「自分ならできる」という主観的確信が行動変容を促進する概念は何かを問う問題。バンデューラの自己効力感の定義と、紛らわしい心理学用語(自己洞察・自己中心性・自己同一性)との区別がカギ。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。