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看護師と患者の関係

基礎看護学 / コミュニケーション・対人関係

解説

看護師と患者の関係は、看護援助のあらゆる場面の土台となるものです。どれほど高度な技術や知識を持っていても、患者との関係がうまく築けていなければ、必要な情報を引き出すことも、安心して療養していただくこともできません。看護学では、この関係性を「専門的な援助関係」として理論化し、国家試験でも繰り返し問われる重要分野となっています。ここでは、信頼関係の基盤、協働の考え方、ペプロウやトラベルビーの理論など、押さえておきたい概念を順に整理していきます。

信頼関係の基盤となるもの

看護師と患者の間に築かれる信頼関係を、心理学・看護学ではラポール(rapport)と呼びます。ラポールとは「橋を架ける」という意味のフランス語に由来し、援助者と対象者の間に通い合う温かく信頼に満ちた関係を指す言葉です。

この信頼関係を築くうえで最も大切なのは、患者を一人の人間として尊重する姿勢です。具体的には、患者がご自身の病気をどのように受け止めているか、これからどのような生き方を望んでいるか、何を大切にしてきたかといった価値観を理解し、その価値観に沿った看護を提供することが基本となります。看護師の都合や一般論を押しつけるのではなく、目の前の患者という固有の存在に向き合う態度が、信頼関係の出発点となるのです。

信頼関係を支える3つの柱

信頼関係の構築を支える基本姿勢として、傾聴・受容・共感の3つがよく挙げられます。傾聴は患者の語りに耳を傾けること、受容はその語りを評価せずに受け止めること、共感は患者の感じていることをあたかも自分のことのように感じ取ろうとすることです。心理学者ロジャーズが提唱した「無条件の肯定的関心」「共感的理解」「自己一致」も、看護の援助関係に深く通じる概念として知られています。

協働という考え方

現代の看護では、看護師が一方的にケアを「してあげる」のではなく、患者と看護師が対等なパートナーとして共通の目標に向かう協働(collaboration)の関係が重視されています。

協働の本質は、ケアの主体はあくまで患者自身であるという点にあります。看護師は専門的な知識や技術を提供する立場ですが、目標を決めるのは患者であり、看護師はその達成を支える役割を担います。情報を十分に共有し、患者と医療者がともに意思決定を行う共同意思決定(shared decision making:SDM)や、人生の最終段階に備えて話し合いを重ねるアドバンス・ケア・プランニング(ACP)も、協働の考え方を具体化したものといえます。

自立支援の姿勢

看護の目標のひとつに、患者がその人らしい生活を取り戻し、自分の意思で健康問題に取り組めるよう支える自立支援があります。自立支援においても、患者の主体性と自己決定を尊重する姿勢は変わりません。

看護師が行うべきことは、不足している知識や技術を専門職として補うこと、そして発病前の生活習慣や価値観を尊重しながら新しい生活を再構築できるよう伴走することです。逆に、看護師が一方的に目標を決めたり、できないことばかりを指摘したり、上下関係を作ったりする姿勢は、患者の主体性を奪い依存を生むため不適切とされます。患者の強みに着目するストレングス視点や、力を引き出すエンパワメント・アプローチが基本となります。

専門的援助関係の理論

ペプロウの対人関係理論

ヒルデガード・ペプロウは1952年の著書『人間関係の看護論』の中で、看護を「意味ある人間関係のプロセス」と定義しました。ペプロウは専門職としての看護の特性のひとつに「焦点は患者にある」ことを挙げ、援助の中心軸は常に患者のニーズに置かれるべきだとしました。

ペプロウは患者−看護師関係を4つの段階に整理しています。最初は方向付け(オリエンテーション)の段階で、初めて出会った患者と看護師が問題やニードを共有し、今後の方向性を定める時期です。次の同一化の段階では患者が特定の看護師に心を寄せ、続く開拓利用の段階で看護師から提供される援助を主体的に活用するようになり、最後の問題解決の段階で関係が終結します。入院初日に患者が不安を訴え、看護師がともに対処法を考え始める場面は、典型的な方向付けの段階に該当します。

またペプロウは、看護師が「見知らぬ人」「情報提供者」「教育者」「リーダー」「代理人」「カウンセラー」という6つの役割を、場面に応じて使い分けると述べています。

トラベルビーの人間対人間の関係

ジョイス・トラベルビーは著書『人間対人間の看護』の中で、看護を「人間対人間の関係を確立する過程」と捉えました。トラベルビーの示した5段階は、最初の出会い、同一性の出現、共感、同感、そしてラポールへと進みます。ラポールは信頼関係が築かれ、患者のニーズに効果的に応えられる最終段階として位置づけられています。

まとめ

看護師と患者の関係は、患者を一人の人間として尊重し、その価値観に沿って援助を行うところから始まります。ラポールと呼ばれる信頼関係を基盤に、看護師は患者と対等なパートナーとして協働し、患者自身が自分らしく生きていけるよう自立を支える役割を担います。ペプロウは援助関係の中心は常に患者にあると示し、入院初日のような出会いの場面を方向付けの段階と位置づけました。トラベルビーもまた、人間対人間の関係の確立こそが看護の本質であると説いています。これらの理論を背景に、傾聴・受容・共感の姿勢で患者に向き合うことが、看護のあらゆる実践の出発点となります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    看護師と患者の間に築かれる相互的な信頼関係を、心理学・看護学ではという。

  2. 2.

    信頼関係の構築において最も重要なのは、患者のを理解し、それに沿った看護を提供することである。

  3. 3.

    患者と看護師が対等なパートナーとして共通の目標に向かい、ともに意思決定と行動を行うプロセスをという。

  4. 4.

    患者と医療者が情報を共有しともに意思決定を行うプロセスを、共同意思決定またはという。

  5. 5.

    看護を「人間関係のプロセス」と定義し、対人関係理論を提唱した看護理論家はである。

  6. 6.

    ペプロウは患者−看護師関係を、方向付け・同一化・開拓利用・の4段階に整理した。

  7. 7.

    入院初日に患者と看護師が初めて出会い、患者のニードを共有して今後の方向性を定める時期は、ペプロウの示したの段階に該当する。

  8. 8.

    『人間対人間の看護』を著し、看護過程の最終段階としてラポールを位置づけた看護理論家はである。

  9. 9.

    患者の主体性を尊重し、その人らしい生活を送れるよう援助することをという。

看護師と患者の関係」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。