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フィンクの危機モデル

基礎看護学 / コミュニケーション・対人関係

解説

今回はフィンクの危機モデルについて解説します。看護の現場では、突然の病気・障害・喪失体験によって患者の心が大きく揺らぐ場面に立ち会います。こうした心理的危機がどのような経過をたどって落ち着いていくのかを段階的に整理した代表的な理論が、フィンク(Fink, S. L.)が提唱した危機モデルです。看護師国家試験では各段階の名称と順序、そして看護援助の方向性が繰り返し問われます。

危機モデルの背景

フィンクの危機モデルは、外傷性の脊髄損傷患者を対象とした臨床観察から導かれた理論です。突然の事故などで重大な障害を負った人が、衝撃を受けてから新しい現実を受け入れて生活を再構築するまでの心の動きを、4つの段階で説明しています。

このモデルはマズローの欲求階層説(動機づけ理論)を理論的基盤としており、危機の初期には安全の欲求を満たす関わりが、回復期には成長の欲求に向けた支援が中心になると説明されます。脊髄損傷に限らず、がんの告知や突然の家族の死、災害による喪失体験など、急激な状況変化に直面した患者の心理理解にも広く応用されています。

危機モデルの4段階

フィンクの危機モデルは「衝撃→防御的退行→承認→適応」の4段階で進行します。この順序を正確に覚えることが国試対策の出発点です。

第1段階 衝撃

第1段階は衝撃の段階です。危機的な出来事に直面した直後の時期で、強い不安・パニック・無力感に襲われ、現実認識が混乱します。思考がまとまらず、頻脈・血圧上昇・吐き気などの身体症状を伴うこともあります。この時期はまだ事態を理解する余裕がなく、自己保存が脅かされていると感じる段階です。看護では、患者のそばに静かに寄り添い、安全な環境を保証することが最優先となります。

第2段階 防御的退行

第2段階は防御的退行の段階です。あまりに大きな現実に圧倒されないよう、心が自分を守るために働く時期で、否認・抑圧・逃避・現実逃避といった防衛機制が前面に現れます。患者は「何かの間違いだ」「そのうち元に戻る」などと言い、一時的に表面上は落ち着いて見えることもあります。この段階で無理に現実を直視させると患者を追い詰めてしまうため、看護では防衛を否定せず受け止め、心理的安全を保証する関わりが求められます。

第3段階 承認

第3段階は承認の段階です。防衛機制では現実を覆い隠せなくなり、変えられない事実を直視せざるをえなくなる時期です。患者は深い悲嘆や抑うつ、無気力、絶望感を体験し、ときには「死にたい」という訴えが出現することもあります。第3段階は危機過程のなかでもっともつらく、自殺リスクが高まる危険な時期として知られています。看護師はそばに寄り添い、感情の表出を促し、悲嘆作業を支えるとともに、自傷・自殺の兆候を慎重に観察する必要があります。

第4段階 適応

第4段階の適応は危機モデルの最終段階です。喪失した能力や役割を嘆くだけでなく、残された機能や新しい価値観に目を向け、新しい自己像と現実を受け入れて建設的に生活を再構築していく時期です。リハビリテーションや社会資源の活用への意欲が高まり、将来の目標を立てられるようになります。看護では現実的な目標設定への援助、社会資源との連結、家族を含めた生活再構築への支援が中心となります。

他の危機・障害受容モデルとの整理

国試では他の危機モデルと混同しやすいため、セットで整理しておくと安心です。アギュララは出来事の現実認知・社会的支持・対処機制の3要素からなる問題解決モデルを示しました。コーンは身体障害の受容過程をショック→回復への期待→悲嘆→防衛→適応の5段階で説明しています。キューブラー=ロスは死の受容過程を否認→怒り→取り引き→抑うつ→受容の5段階で示しました。フィンクは「衝撃→防御的退行→承認→適応」の4段階である点が他と区別する鍵となります。

まとめ

フィンクの危機モデルは、脊髄損傷患者の観察とマズローの欲求階層説をもとに、突然の喪失体験から適応に至る心理過程を「衝撃→防御的退行→承認→適応」の4段階で示した理論です。第1段階は強い不安と混乱、第2段階は否認などの防衛機制による一時的安定、第3段階は現実を直視するなかで抑うつや自殺リスクが高まる時期、第4段階は新たな自己像で生活を再構築する適応の段階と整理できます。各段階の名称・順序と、特に第3段階「承認」の自殺リスクへの注意は国試頻出のポイントです。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    フィンクの危機モデルは外傷性の患者の臨床観察から導かれ、マズローの欲求階層説を理論的基盤としている。

  2. 2.

    フィンクの危機モデルは「衝撃→防御的退行→承認→」の4段階で進行する。

  3. 3.

    フィンクの危機モデルの第1段階はであり、強い不安や無力感を伴い現実認識が混乱する時期である。

  4. 4.

    フィンクの危機モデルの第2段階はであり、否認や抑圧などの防衛機制によって一時的な安定が図られる。

  5. 5.

    フィンクの危機モデルの第3段階はであり、現実を直視することで抑うつや無気力が出現し自殺リスクが高まる危険な時期である。

  6. 6.

    フィンクの危機モデルの最終段階である第4段階はであり、新しい自己像と現実を受け入れて生活を再構築していく時期である。

  7. 7.

    フィンクの危機モデルにおいて、防御的退行の段階で患者の心を守るために働く心理的な仕組みをという。

  8. 8.

    フィンクの危機モデルの理論的基盤となっているのは、生理的欲求から自己実現の欲求まで5段階で人間の欲求を説明したの欲求階層説(動機づけ理論)である。

フィンクの危機モデル」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。