看護の基本概念と理論家
基礎看護学 / 看護過程・看護理論
解説
今回は看護の基本概念と理論家について解説します。 看護理論とは、看護とは何か、看護師は何をするのかを体系的に説明する枠組みのことです。理論を学ぶことで、目の前の患者に対して根拠ある実践(エビデンスベーストプラクティス)が可能となり、ケアの質と一貫性が保たれます。国試では、各理論家の名前と代表的なキーワードを結びつける問題が頻出です。
看護教育史の節目
看護が専門職として確立される過程で、二つのレポートが大きな転機となりました。 一つ目は1923年のゴールドマークレポートです。アメリカで看護教育を病院附属の徒弟制から切り離し、大学教育として行うべきだと提起しました。 二つ目は1948年のブラウンレポート(エスター・ルシール・ブラウン著『これからの看護』)です。看護を独立した専門職として位置づけ、大学における看護教育の必要性を改めて示しました。看護専門職化を推進する決定的な契機となった報告書です。
主要な看護理論家
国試で問われる代表的な理論家とキーワードを順に整理します。
ナイチンゲール
ナイチンゲールは近代看護の祖と呼ばれ、『看護覚書』を著しました。換気・清潔・採光・静かさなど、患者を取り巻く環境を整えることが看護であると説いた環境理論が中心です。
ヘンダーソン
ヘンダーソンは、人間に共通する14の基本的ニードを提示し、患者がそれらを自力で満たせるよう援助することが看護の本質であるとしました。基本的看護の定義づけとして国試頻出です。
オレム・ロイ・その他
オレムはセルフケア理論を提唱し、看護はセルフケア不足を補う行為であるとしました。ロイは人間を環境に適応する存在ととらえる適応モデルを示しました。メイヤロフは『ケアの本質』でケアリング論を、ペプロウは看護師-患者の関係過程を分析した人間関係看護論を、ベナーは看護師の技能習得過程を『初心者から達人へ』として段階的に示しました。
ストレスと危機の理論
セリエの汎適応症候群
セリエは1936年にストレス学説を提唱しました。外部から加わる刺激をストレッサー、それに対する生体の非特異的反応をストレス反応と呼びます。 セリエはストレッサーが持続したときの適応過程を汎適応症候群(GAS)と名づけ、次の3段階に分けました。第一が警告反応期で、ショック相に続き反ショック相で生体防御が立ち上がります。第二が抵抗期で、生体がストレッサーに適応し安定する時期です。第三が疲憊期で、適応エネルギーが尽き、胃潰瘍や免疫機能の低下など破綻症状が現れます。
ラザルスとその他
ラザルスはセリエ理論を発展させ、ストレスは刺激そのものではなく個人の認知的評価によって決まるとしました。フィンクは危機モデルとして「衝撃→防御的退行→承認→適応」の4段階を示し、キューブラー・ロスは死の受容過程を「否認→怒り→取引→抑うつ→受容」の5段階で説明しました。エリクソンはライフサイクルを8段階に分け各時期の発達課題を提示し、マズローは人間の欲求を生理的欲求から自己実現欲求まで階層化しました。
個別性を支える現代概念
現代看護では、患者一人ひとりの違いを尊重する考え方が重視されます。 ダイバーシティとは「多様性」を意味し、年齢・性別・人種・宗教・性的指向・障害・文化的背景・価値観など人間の違いを認め合い尊重する概念です。看護では個別性のあるケアを提供する基盤となり、通訳の手配、宗教上の食事配慮、LGBTQ+への対応、聴覚障害者へのコミュニケーション支援などに応用されます。 一方で、医療者が一方的に治療方針を決めるパターナリズムは現代では批判的にとらえられ、患者中心のケアや患者と医療者がともに方針を決める**共同意思決定(SDM)**が推奨されています。
まとめ
看護理論は実践の根拠となる枠組みです。ゴールドマークレポート(1923年)とブラウンレポート(1948年)は看護専門職化の節目であり、ナイチンゲールの環境論、ヘンダーソンの14ニード、オレムのセルフケア、ロイの適応モデルなど各理論家のキーワードは確実に押さえましょう。セリエの汎適応症候群は警告反応期・抵抗期・疲憊期の3段階で構成されます。さらにダイバーシティを基盤とした患者中心のケアと共同意思決定が現代看護の柱です。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
1923年に発表され、看護教育を病院附属の徒弟制から大学教育へ移すべきだと提起したのはである。
- 2.
1948年にエスター・ルシール・ブラウンが著し、看護を専門職として位置づけて大学での看護教育の重要性を示したのはである。
- 3.
『看護覚書』を著し、換気や清潔など患者を取り巻く環境を整えることを看護の本質とした環境理論の提唱者はである。
- 4.
人間に共通する14の基本的ニードを示し、基本的看護を定義した理論家はである。
- 5.
人間を環境に適応する存在ととらえる適応モデルを提唱した看護理論家はである。
- 6.
1936年にストレス学説を提唱し、汎適応症候群を3段階で示した生理学者はである。
- 7.
汎適応症候群は警告反応期、抵抗期、の3段階からなる。
- 8.
死にゆく過程を「否認→怒り→取引→抑うつ→受容」の5段階で示したのはである。
- 9.
年齢・性別・人種・宗教・性的指向など人の違いを認め合い尊重する、多様性を意味する概念をという。
- 10.
医療者主導で治療方針を決定するパターナリズムに対し、患者と医療者がともに方針を決定する考え方をという。
