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抗癌薬と骨髄抑制

成人看護学 / 血液・免疫・膠原病

解説

今回は抗癌薬と骨髄抑制について解説します。

抗癌薬の作用と副作用の考え方

抗癌薬(化学療法薬)とは、癌細胞の増殖を抑える目的で用いられる薬剤の総称です。多くの抗癌薬は細胞分裂のさかんな細胞のDNA合成や分裂機構を阻害することで効果を発揮します。しかし、この作用は癌細胞だけに限定されるわけではなく、体内で分裂のさかんな正常細胞、すなわち骨髄の造血細胞、消化管粘膜、毛根細胞などにも同様にダメージを及ぼします。これが抗癌薬の副作用(有害事象)が出現する基本的な仕組みです。 副作用は出現時期によって整理すると理解しやすく、投与直後の急性の悪心・嘔吐やアレルギー反応、1〜2週間で出現する骨髄抑制、2〜3週間で目立つ脱毛、長期的に問題となる末梢神経障害や心毒性・腎毒性・二次発癌などに分類されます。なかでも骨髄抑制は生命にかかわるため、看護師が特に重点的に観察すべき有害事象です。

骨髄抑制とは

骨髄抑制とは、抗癌薬が骨髄にある造血幹細胞や血液前駆細胞の分裂を阻害することで、血球の産生が低下し、白血球・赤血球・血小板が減少した状態をいいます。骨髄は赤血球・白血球・血小板を産生する造血の場であり、ここが障害されると三系統すべての血球が減少する汎血球減少が生じます。 血球が最も減少する時期を**ナディア(nadir)**とよびます。白血球(特に好中球)は寿命が短いため最も早く減少し、投与後7〜14日でナディアを迎えます。血小板は7〜10日、赤血球は寿命が約120日と長いため数週間遅れて減少が顕在化するのが典型的な経過です。

好中球減少と発熱性好中球減少症

好中球は細菌感染に対する第一線の防御を担う白血球です。好中球が500/μL未満になると重症感染のリスクが急上昇します。好中球500/μL未満かつ38℃以上の発熱がみられる状態を**発熱性好中球減少症(FN)といい、敗血症に進展する危険があるため、血液培養を採取したうえで広域抗菌薬を速やかに開始する緊急対応が必要です。好中球の回復を促す目的でG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)**製剤が用いられます。

血小板減少と貧血

血小板は止血を担う成分で、5万/μL未満で出血傾向が増し、1〜2万/μL以下で自発性出血の危険が高まるため血小板輸血を検討します。皮下出血や歯肉出血、鼻出血などの出血症状の観察が重要です。赤血球減少による貧血では、息切れ・動悸・倦怠感・易疲労感が出現し、ヘモグロビン7g/dL未満が一般に輸血の目安となります。

看護のポイント

感染予防として手指衛生、含嗽、口腔ケア、マスク着用、面会制限、生もの・生水の制限などを徹底します。出血予防では、歯ブラシは軟毛のものに変更し、髭剃りは電気カミソリを用い、採血・注射後は十分に圧迫止血します。貧血に対しては転倒予防と労作時の休息確保、患者の自覚症状の観察が中心となります。骨髄抑制の出現時期を踏まえ、ナディアの時期に合わせた予防的ケアを計画することが看護師の役割です。

まとめ

抗癌薬は分裂のさかんな細胞を標的とするため、骨髄の造血細胞も障害されて骨髄抑制を生じます。投与後7〜14日のナディアでは好中球減少による感染、血小板減少による出血、赤血球減少による貧血が出現します。発熱性好中球減少症は緊急対応が必要であり、G-CSFや輸血、感染・出血予防の看護を組み合わせて患者を支えることが国試対策の要点です。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    抗癌薬が骨髄の造血幹細胞や血液前駆細胞の分裂を阻害し、白血球・赤血球・血小板が減少した状態をという。

  2. 2.

    骨髄抑制によって白血球・赤血球・血小板の三系統すべてが減少した状態をとよぶ。

  3. 3.

    抗癌薬投与後に血球が最も減少する時期をといい、好中球では投与後7〜14日に出現する。

  4. 4.

    好中球500/μL未満かつ38℃以上の発熱がみられる状態をといい、広域抗菌薬の速やかな投与が必要である。

  5. 5.

    好中球減少からの回復を促進する目的で投与される造血因子製剤はである。

  6. 6.

    血小板が/μL以下になると自発性出血のリスクが高まり、血小板輸血の適応となる。

  7. 7.

    抗癌薬の副作用のうち、投与後2〜3週間で出現することが多い、毛根細胞への障害による症状はである。

  8. 8.

    骨髄抑制時の出血予防として、歯ブラシはを選び、髭剃りは電気カミソリを用いるよう指導する。

抗癌薬と骨髄抑制」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。