高齢者虐待防止法と老人福祉
健康支援と社会保障制度 / 福祉法・人権関連法
解説
高齢者虐待防止法とは、正式名称を「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」といい、2006年に施行された法律です。今回は高齢者虐待防止法と、その基盤となる老人福祉法について解説します。
高齢者虐待防止法の概要
高齢化の進展に伴い、家庭内や施設内での高齢者虐待が深刻な社会問題となっています。この法律は、虐待を受けた高齢者の保護と、養護者(高齢者を現に養護する家族・親族等)への支援を目的としています。法律上の高齢者は65歳以上と定義されています。
虐待の主体と5類型
虐待を行う主体は、①養護者(家族等)と②要介護施設従事者等の二つに分類されます。虐待の類型は次の5つに整理されています。身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待(本人の年金や財産を不当に使用する行為)、そして介護・世話の放棄放任であるネグレクトです。経済的虐待が含まれる点は他の虐待防止法との大きな違いであり、国試でも頻出です。
通報義務と対応
虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者には、市町村への通報が求められます。生命または身体に重大な危険が生じている場合は通報義務、それ以外は努力義務です。通報先は市町村または地域包括支援センターであり、地域包括支援センターは高齢者虐待の発見・予防の中核機関として機能します。
やむを得ない事由による措置
高齢者虐待防止法第9条では、緊急時に老人福祉法に基づく「やむを得ない事由による措置」を行うことが定められています。具体的には、短期入所生活介護や特別養護老人ホームへの措置入所などにより、虐待を受けた高齢者を養護者から分離保護します。
養護者への支援
虐待は介護負担の蓄積から生じることが多く、養護者への支援も重要です。介護負担を軽減するレスパイトケアや短期入所、経済的支援、心理的相談などが提供されます。
老人福祉法に基づく施設
老人福祉法では、次の7種類の老人福祉施設が定められています。老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センター、老人介護支援センターです。
このうち一部の施設は介護保険法にも位置づけられています。老人デイサービスセンターは介護保険法上の指定通所介護事業所、老人短期入所施設は短期入所生活介護、特別養護老人ホームは介護老人福祉施設として運用されます。
老人福祉計画
老人福祉計画は市町村と都道府県が策定主体となり、介護保険事業計画と一体的に3年を1期として策定されます。
看護師の役割
看護師等の医療従事者は、訪問看護や外来、入院対応の中で身体所見や家族関係から虐待を早期に発見しやすい立場にあります。疑わしい所見を認めた場合は速やかに市町村や地域包括支援センターへ通報し、多職種と連携して高齢者と養護者双方を支える視点が求められます。
まとめ
高齢者虐待防止法は、65歳以上の高齢者を養護者と施設従事者による5類型の虐待から守る法律です。通報先は市町村と地域包括支援センターであり、緊急時には特別養護老人ホーム等への措置入所が行われます。老人福祉法に基づく7種類の施設や、介護保険法との関係、3年を1期とする老人福祉計画など、関連制度を一体的に理解しておきましょう。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
高齢者虐待防止法は年に施行され、法律上の高齢者は歳以上と定義されている。
- 2.
高齢者虐待防止法における虐待の主体は、養護者との二つに分類される。
- 3.
高齢者虐待の5類型は、身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、虐待、介護・世話の放棄放任()である。
- 4.
虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合、通報先はまたはである。
- 5.
高齢者虐待防止法第9条に基づく「やむを得ない事由による措置」では、緊急時にに基づき特別養護老人ホーム等への措置入所が行われる。
- 6.
老人福祉法に定められている老人福祉施設は種類で、特別養護老人ホームは介護保険法ではと位置付けられる。
- 7.
老人福祉計画は市町村とが策定主体で、介護保険事業計画と一体的に年を1期として策定される。
- 8.
高齢者虐待の発見・予防の中核機関はであり、養護者の介護負担を軽減する支援としてなどが提供される。
