DV防止法
健康支援と社会保障制度 / 福祉法・人権関連法
解説
今回はDV防止法について解説します。配偶者やパートナーからの暴力は家庭という閉鎖的な空間で繰り返され、被害者が自力で逃れることが難しい人権侵害です。日本ではこうした暴力に対応するため、2001年に配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(通称DV防止法)が制定されました。看護師は患者の身体所見や様子から被害を発見する立場にあり、法律の枠組みと支援機関の役割を理解しておく必要があります。
DV防止法の目的と暴力の定義
DV防止法は、配偶者からの暴力を防止し、被害者を保護することによって人権の擁護と男女平等の実現を図ることを目的としています。法律で対象とされる「配偶者からの暴力」は、身体的暴力だけにとどまりません。第1条では「身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの、又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動」と定義されており、暴言や人格を否定する発言、大声で怒鳴る、無視するといった精神的暴力や、性的暴力もこの法律でいう「暴力」に含まれます。
対象となるパートナーの範囲も段階的に拡大されてきました。法律上の配偶者だけでなく、事実婚の相手、離婚後(事実婚の解消後)に引き続き暴力を受ける場合の元配偶者、さらに2013年の改正以降は生活の本拠を共にする交際相手(同居している恋人)からの暴力も準用対象となっています。男女いずれが被害者であっても適用されます。
配偶者暴力相談支援センター
DV防止法に基づく支援の中核となる公的機関が配偶者暴力相談支援センターです。都道府県は設置義務、市町村は設置努力義務を負い、婦人相談所などがその機能を担います。
センターの主な業務は、被害者からの相談対応とカウンセリング、緊急時における被害者と同伴家族の一時保護、自立して生活するための情報提供や援助、被害者が利用できる居住施設の情報提供、そして後述する保護命令制度の利用に関する情報提供と援助です。一時保護は婦人相談所が自ら行うか、基準を満たす民間シェルター等に委託する形で行われます。就労支援や生活保護の決定そのものを行う機関ではない点に注意が必要です。
保護命令
DV防止法のもう一つの大きな柱が、地方裁判所が加害者に対して発令する保護命令です。被害者が申し立て、生命や身体に重大な危害を受けるおそれが大きい場合に、裁判所が次のような命令を出します。
代表的なものは、加害者が被害者につきまとったり住居や勤務先の近くを徘徊することを禁じる接近禁止命令で、期間は6か月です。被害者と同居している場合に、加害者を住居から退去させる退去命令は2か月とされています。さらに、電話やメール等を禁じる命令、未成年の子への接近禁止命令、被害者の親族等への接近禁止命令も定められています。これらの命令に違反した加害者には罰則が科されます。
看護師の役割
医療機関は被害者が外傷や体調不良で受診することを通じて、DVを発見する重要な接点となります。DV防止法では、配偶者からの暴力を受けていると認められる者を発見した者は、配偶者暴力相談支援センターまたは警察に通報するよう努めるものとされており、医師や看護師などの医療関係者にもこの努力義務が課されています。通報は被害者の意思を尊重しつつ行うことが原則です。
臨床的に注意すべき所見としては、外傷の部位や程度と本人の説明が一致しない、受診が遅れている、加害者とみられる人物が常に付き添い本人が話せない、表情が乏しい、繰り返し同じような外傷で受診する、などがあります。プライバシーが確保された場で、本人だけに声をかけ、責めずに話を聴き、配偶者暴力相談支援センターや警察などの支援先を紹介することが大切です。
まとめ
DV防止法は2001年に制定された、配偶者等からの暴力の防止と被害者保護を目的とする法律です。対象となる暴力には身体的暴力に加えて精神的暴力や性的暴力が含まれ、対象となる関係も配偶者から事実婚・元配偶者・同居交際相手へと拡大されてきました。支援の中核は配偶者暴力相談支援センターで、相談・一時保護・自立支援・保護命令の情報提供などを担います。地方裁判所は加害者に対し6か月の接近禁止命令や2か月の退去命令などの保護命令を発令できます。看護師はDVを発見した際に支援機関へ通報する努力義務を負っており、被害者の安全と尊厳を守る最前線の役割を担っています。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
配偶者からの暴力の防止と被害者の保護を目的として2001年に制定された法律の通称をという。
- 2.
DV防止法における「配偶者からの暴力」は、身体的暴力だけでなく、心身に有害な影響を及ぼす言動として暴力も含まれる。
- 3.
2013年の改正以降、DV防止法は事実婚や、生活の本拠を共にするからの暴力にも準用される。
- 4.
DV防止法に基づき、相談・一時保護・自立支援・保護命令の情報提供などを担う中核的な公的機関をという。
- 5.
緊急時に被害者と同伴家族を安全な場所に保護するために、配偶者暴力相談支援センターが行う支援をという。
- 6.
地方裁判所が加害者に対して、被害者へのつきまといや住居・勤務先付近の徘徊を禁じる命令をといい、期間は6か月である。
- 7.
被害者と同居している加害者を住居から退去させる保護命令をといい、期間は2か月である。
- 8.
DV防止法では、配偶者からの暴力を受けていると認められる者を発見した医療従事者に、配偶者暴力相談支援センターまたは警察への通報の義務を課している。
