浮腫の原因
成人看護学 / 循環器系
解説
浮腫(edema)とは、細胞間質(組織間液)に水分が過剰に貯留した状態をいいます。体重の60%を占める体液のうち、組織間液は通常一定の量に保たれていますが、何らかの原因でこのバランスが崩れると浮腫が出現します。看護師国家試験では、浮腫の成因と疾患の組合せが頻出ですので、メカニズムをしっかり理解しておきましょう。
スターリングの法則と浮腫の発生機序
毛細血管における水分の移動は、スターリングの法則で説明されます。これは、毛細血管内の静水圧(血液を血管外へ押し出す力)と、血漿の膠質浸透圧(血液中に水分を引き戻す力)の差によって、水分の出入りが決まるという法則です。動脈側では静水圧が優位で水分が間質に染み出し、静脈側では膠質浸透圧が優位で水分が血管内に戻ります。このバランスが崩れたとき、間質に水分が溜まり浮腫が発生します。
浮腫の4大成因
浮腫の原因は大きく4つに分類されます。1つ目は毛細血管内圧の上昇で、心不全(特に右心不全)や静脈うっ滞でみられます。2つ目は血漿膠質浸透圧の低下で、低アルブミン血症が原因となり、肝硬変、ネフローゼ症候群、低栄養(クワシオルコル)などで生じます。血清アルブミン値が3.0g/dL未満になると浮腫が出現しやすくなります。3つ目は血管透過性の亢進で、炎症、アナフィラキシー、蜂窩織炎などでみられます。4つ目はリンパ還流障害で、乳がん術後の腋窩リンパ節郭清後や子宮がんの骨盤内郭清後にリンパ浮腫が生じます。これらに加え、ナトリウム貯留も浮腫の形成に関与します。
圧痕性浮腫と非圧痕性浮腫
浮腫は指で押したときに圧痕が残るかどうかで分類されます。圧痕性浮腫は水分が主体の浮腫で、心不全、肝硬変、ネフローゼ、低栄養などでみられます。一方、非圧痕性浮腫の代表は甲状腺機能低下症の粘液水腫で、ムコ多糖類が皮下に沈着するため圧痕が残りません。リンパ浮腫も蛋白質を多く含むため非圧痕性となります。
上大静脈症候群による上半身の浮腫
静脈の閉塞によって生じる局所性の浮腫として、国試で重要なのが上大静脈症候群です。上大静脈症候群とは、上大静脈が腫瘍やリンパ節腫大などにより圧迫・閉塞され、上半身からの静脈血が心臓へ戻れずにうっ滞することで発症します。原因の多くは肺がん(特に右上葉の原発巣や縦隔リンパ節転移)や悪性リンパ腫など縦隔の悪性腫瘍です。
機序としては、上大静脈の還流障害により、頭部・顔面・頸部・上肢・上胸部といった上半身に静脈うっ血が生じ、浮腫として現れます。代表的な症状は、顔面浮腫や眼瞼浮腫、頸部・上肢の腫脹、頸静脈怒張、前胸部の側副血行路(皮静脈の怒張)、顔面紅潮やチアノーゼ、頭痛、めまい、咳嗽、呼吸困難などです。下半身には浮腫が及ばず、上半身に限局するのが特徴で、下大静脈閉塞による下半身浮腫と対比して理解します。
部位別の特徴と看護
右心不全では下腿から始まる圧痕性浮腫に肝腫大や頸静脈怒張を伴います。肝硬変では腹水と下腿浮腫がみられ、ネフローゼ症候群では眼瞼浮腫から始まる全身浮腫が特徴です。看護では、浮腫部位の皮膚は乾燥・損傷しやすいため保湿と保護を行い、塩分制限、下肢挙上、弾性ストッキングの着用を促します。観察では部位、左右差、圧痕の有無、朝夕の変動を確認することが大切です。
まとめ
浮腫はスターリングの法則の破綻によって生じ、毛細血管内圧の上昇、膠質浸透圧の低下、血管透過性の亢進、リンパ還流障害の4つが主な原因です。局所性浮腫としては、上大静脈症候群による顔面・頸部・上肢の浮腫と頸静脈怒張も押さえておきましょう。疾患と機序、圧痕の有無を結びつけて覚えることで、国試の問題にも対応できるようになります。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
浮腫とは、細胞間質にが過剰に貯留した状態である。
- 2.
毛細血管における水分移動はの法則で説明される。
- 3.
血漿中で水分を血管内に引き戻す力をという。
- 4.
血漿膠質浸透圧の低下による浮腫は、血清値の低下が原因となる。
- 5.
右心不全ではの上昇により下腿に圧痕性浮腫が出現する。
- 6.
炎症やアナフィラキシーによる浮腫はの亢進が原因である。
- 7.
乳がん腋窩郭清後のリンパ浮腫はによって生じる。
- 8.
肝では低アルブミン血症により腹水と下腿浮腫がみられる。
- 9.
症候群では眼瞼浮腫から始まる全身浮腫が特徴である。
- 10.
甲状腺機能低下症でみられる非圧痕性の浮腫をという。
- 11.
肺がんなどによる縦隔腫瘍が上大静脈を圧迫・閉塞し、顔面・頸部・上肢の浮腫や頸静脈怒張をきたす病態をという。
