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悪性腫瘍の特徴と転移

疾病の成り立ちと回復の促進 / 腫瘍・薬理・その他

解説

悪性腫瘍とは、体内の細胞が制御を失って増殖し、周囲組織を破壊しながら遠隔臓器にまで広がる病的な細胞集団のことをいいます。今回は悪性腫瘍の特徴と転移について解説します。

腫瘍とは

腫瘍とは、正常な制御を逸脱して自律的に増殖した細胞の塊を指します。腫瘍はその性質によって良性腫瘍と悪性腫瘍に大別され、両者では発育の仕方や予後がまったく異なります。看護にあたっては、まずこの両者の違いを理解することが基本となります。

良性腫瘍と悪性腫瘍の鑑別

良性と悪性の鑑別には、五つのポイントが用いられます。第一に発育様式で、良性は周囲を押しのける膨張性発育を示すのに対し、悪性は周囲組織にしみ込むように広がる浸潤性発育を示します。第二に被膜の有無で、良性は被膜をもつことが多く境界が明瞭ですが、悪性は被膜をもたず境界が不明瞭です。第三に増殖速度で、良性は緩徐、悪性は急速です。第四に細胞異型度で、良性は正常細胞に近く軽度ですが、悪性は核の大小不同や核分裂像が目立ち高度です。第五に転移・再発で、良性ではみられず、悪性では転移と再発を起こします。

悪液質

悪性腫瘍が進行すると、全身の代謝が乱れて悪液質(カヘキシー)とよばれる状態に陥ります。著しい食欲不振、体重減少、筋肉の萎縮、全身倦怠感などを呈し、患者の予後やQOLを大きく左右します。栄養管理と症状緩和が看護の重要な課題となります。

転移の3つのルート

悪性腫瘍の最大の特徴である転移には、三つの経路があります。一つ目は血行性転移で、腫瘍細胞が血管に侵入して血流に乗り、肺・肝・骨・脳などに飛び火します。二つ目はリンパ行性転移で、リンパ管を経由してまず所属リンパ節に転移します。三つ目は播種性転移で、腫瘍細胞が胸腔や腹腔内にこぼれ落ちて漿膜面に着床するものです。

TNM分類

悪性腫瘍の進行度は、国際的にTNM分類で表現されます。Tは原発巣(primary Tumor)の大きさや進展度、Nは所属リンパ節(lymph Node)への転移、Mは遠隔臓器への転移(Metastasis)を示し、これらの組み合わせから病期(ステージ)が決定されます。治療方針の決定や予後予測の基準となる重要な分類です。

胃癌の特殊な転移

胃癌では、固有名詞のついた三つの特徴的な転移が知られています。

Virchow(ウィルヒョウ)転移

Virchow転移は、左鎖骨上窩リンパ節への転移です。胃の周囲からのリンパ液は腹腔内のリンパ節を経て胸管を上行し、左静脈角(左内頸静脈と左鎖骨下静脈の合流部)に注ぎます。この経路の途中で腫瘍細胞が左鎖骨上窩リンパ節に到達すると、皮下から触知できる硬いリンパ節として現れ、トロワジエ徴候とよばれます。リンパ行性転移であり、進行胃癌のサインで、根治手術の適応外となります。

Schnitzler(シュニッツラー)転移

Schnitzler転移は、ダグラス窩(直腸子宮窩・直腸膀胱窩)への腹膜播種です。腹腔内にこぼれ落ちた腫瘍細胞が最も低い位置であるダグラス窩にたまって増殖し、直腸診で硬結として触れます。

Krukenberg(クルッケンベルグ)腫瘍

Krukenberg腫瘍は、卵巣への転移で、スキルス様の腫瘤を形成します。腹膜播種または血行性に成立すると考えられています。

なお胃癌の血行性転移では、胃の静脈が門脈に注ぐため、まず肝臓に最多に転移し、次いで肺・骨・副腎へ広がります。

転移性脳腫瘍

成人の脳腫瘍のうち約半数を占めるのが転移性脳腫瘍であり、原発性脳腫瘍より多くみられます。原発巣として最多なのは肺癌で、約50〜60%を占めます。肺静脈から左心系を経由して脳血流に乗りやすいことが理由です。症状は頭蓋内圧亢進による頭痛・嘔吐に加え、麻痺、けいれん、認知機能低下などの局所症状が出現します。治療には全脳照射、ガンマナイフなどの定位放射線、外科的摘出、分子標的薬が用いられます。

まとめ

悪性腫瘍は浸潤性に発育し、転移と再発を起こす点で良性腫瘍と区別されます。転移には血行性・リンパ行性・播種性の三経路があり、進行度はTNM分類で表されます。胃癌のVirchow転移、Schnitzler転移、Krukenberg腫瘍は国試頻出であり、機序と部位を確実に押さえておきましょう。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    良性腫瘍は周囲を押しのける性発育を示すのに対し、悪性腫瘍は周囲組織にしみ込む性発育を示す。

  2. 2.

    悪性腫瘍が進行すると、食欲不振・体重減少・筋肉萎縮を呈する全身状態を(カヘキシー)とよぶ。

  3. 3.

    悪性腫瘍の転移経路は、血行性・の3つに大別される。

  4. 4.

    悪性腫瘍の進行度を表す国際的分類はTNM分類で、Tは原発巣、Nは転移、Mは転移を示す。

  5. 5.

    胃癌で左鎖骨上窩リンパ節に転移したものを(ウィルヒョウ)転移といい、リンパ行性転移である。

  6. 6.

    胃癌の腹膜播種でダグラス窩に転移したものを(シュニッツラー)転移、卵巣に転移したものを(クルッケンベルグ)腫瘍という。

  7. 7.

    胃癌の血行性転移では、門脈を経由してに最も多く転移する。

  8. 8.

    成人の転移性脳腫瘍の原発巣として最も多いのはである。

悪性腫瘍の特徴と転移」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。