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脊髄損傷の在宅看護

地域・在宅看護論 / 在宅難病・その他疾患

解説

今回は脊髄損傷の在宅看護について解説します。脊髄損傷とは、交通事故や転落事故などによって脊髄が損傷を受け、損傷部位より下のレベルで運動麻痺・感覚麻痺・自律神経障害が生じる病態です。在宅療養では、患者本人や家族が長期にわたって排泄・皮膚・体温などの自己管理を続ける必要があり、訪問看護師には合併症の予防と早期発見、本人の生活の質を支える視点が求められます。

脊髄損傷の障害レベルと残存機能

脊髄は上から頸髄・胸髄・腰髄・仙髄に分かれ、損傷レベルが高いほど麻痺の範囲が広くなります。頸髄損傷では四肢麻痺となり、上肢の運動が制限されるため日常生活動作にも介助が必要となります。これに対し胸髄や腰髄の損傷では下肢の対麻痺となり、上肢の機能が保たれるため、車椅子を自分で操作したり、移乗動作を自立して行うことができます。

第12胸髄(Th12)程度の損傷では、体幹下部から下肢にかけての運動・感覚が失われますが、上肢機能は保たれます。そのため、車椅子による生活、自動車の運転、間欠的自己導尿、プッシュアップ動作などのセルフケアが可能となり、就労や社会参加も十分に行えます。在宅看護では、こうした残存機能を最大限に活かす支援が中心となります。

褥瘡の予防と除圧

脊髄損傷者では、損傷レベル以下の感覚が失われているため、皮膚への圧迫や痛みを自覚できません。長時間車椅子座位を続けると、坐骨結節や仙骨部など骨突出部に持続的な圧迫がかかり、褥瘡を生じやすくなります。仙骨部の発赤は褥瘡の初期サインであり、放置すれば短期間で潰瘍化します。

褥瘡予防の中心は除圧です。車椅子生活者では、一定時間ごとに上肢で身体を持ち上げて臀部の圧迫を解除するプッシュアップ動作が基本となります。プッシュアップが困難な場合は、前傾姿勢やサイドリーン(側方への体重移動)も有効です。座面には体圧分散効果のあるエアセルやゲル素材のクッションを用い、局所に圧が集中する円座は避けます。本人が自覚症状を捉えにくい分、時間を決めた除圧行動と毎日の皮膚観察、栄養・湿潤管理を組み合わせることが重要となります。

排尿管理と間欠的自己導尿

脊髄損傷では、損傷レベルに応じた神経因性膀胱となり、自力での排尿が困難になります。在宅での標準的な排尿管理法が間欠的自己導尿(CIC)で、本人がカテーテルを尿道から膀胱に挿入し、定期的に尿を排出します。実施は4〜6時間ごと、1回の尿量は400mL以下を目安とし、膀胱内圧が過度に上昇しないよう管理します。

再使用カテーテルは洗浄後、消毒液入りの専用ケースに保管し、消毒液は毎日交換します。脊髄損傷者は感覚麻痺のため、残尿感や下腹部痛といった尿路感染の自覚症状を捉えにくく、発熱が感染を示す客観的サインとして最も信頼できます。急な発熱や尿混濁、悪臭などがみられた場合は、速やかに医師へ連絡する必要があります。なお胸髄第6(Th6)以上の高位損傷では、膀胱の過伸展が引き金となって自律神経過反射を起こし、血圧の急上昇・頭痛・発汗・徐脈などが出現することがあり、緊急対応を要します。

排便コントロール

脊髄損傷者は腸管の蠕動運動と腹圧が低下するため、慢性的な便秘になりやすく、緩下薬の内服と坐薬や浣腸を組み合わせた排便コントロールが行われます。排便の周期はおおむね2〜3日に1回が目安となり、訪問看護師はこの周期に合わせて支援を行います。便秘が続けば腹部膨満や悪心、麻痺性イレウス、自律神経過反射の誘因にもなり得るため、最終排便の日時は在宅ケアにおいて最優先で確認すべき情報です。

夏季の暑熱環境下で便秘と尿量減少が同時に出現した場合は、脱水を強く疑います。水分が不足すると便は硬くなって腸管通過が遅延し、尿量も減少します。緩下薬や浣腸を調整するよりも先に、根本原因である水分摂取の促進を行うことが優先されます。脊髄損傷者は発汗による体温調節機能も障害されやすく、不感蒸泄や熱中症、尿路結石、深部静脈血栓症のリスクが高まるため、水分出納の評価が欠かせません。

まとめ

脊髄損傷の在宅看護では、損傷レベルに応じた残存機能を活かしつつ、感覚麻痺に伴う合併症を予防することが中心になります。褥瘡予防にはプッシュアップによる除圧、排尿管理には間欠的自己導尿と発熱を指標とした感染早期発見、排便管理には緩下薬と坐薬・浣腸を組み合わせた周期的コントロールが基本です。猛暑下での便秘・乏尿は脱水のサインとして水分補給を最優先し、自律神経過反射などの重篤な合併症にも注意します。本人と家族のセルフケア能力を支え、生活の中で生じる変化を見逃さない視点が、訪問看護師の役割の要となります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    第12胸髄損傷では下肢の運動・感覚が失われるが上肢機能は保たれるため、両下肢が麻痺するとなる。

  2. 2.

    脊髄損傷者は損傷レベル以下の感覚が失われているため、長時間の車椅子座位で骨突出部に圧迫が続くとを生じやすい。

  3. 3.

    車椅子で長時間座位を続ける脊髄損傷者の褥瘡悪化予防として、上肢で身体を持ち上げ臀部の圧迫を解除する動作を勧める。

  4. 4.

    脊髄損傷では自力排尿が困難となるため、本人がカテーテルを用いて定期的に尿を排出するが在宅で広く行われる。

  5. 5.

    間欠的自己導尿を行う脊髄損傷者は感覚麻痺のため尿路感染の自覚症状を捉えにくく、感染を示す客観的サインとしてがみられた場合は医師に連絡する。

  6. 6.

    胸髄第6以上の高位脊髄損傷では、膀胱や直腸の過伸展が引き金となって血圧上昇や頭痛、発汗などを起こすがみられる。

  7. 7.

    脊髄損傷者の在宅排便管理では、緩下薬の内服に加え坐薬やを周期的に併用して便秘を予防する。

  8. 8.

    坐薬で周期的に排便管理を行う脊髄損傷者では、初回訪問のケア計画立案にあたり最終の日時の情報が最も優先される。

  9. 9.

    猛暑の時期に脊髄損傷者で便秘と尿量減少が同時にみられた場合、根本原因としてを疑い水分摂取を促す。

脊髄損傷の在宅看護」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。