StudyNurse

副腎疾患の病態

成人看護学 / 内分泌・代謝

解説

今回は副腎疾患の病態について解説します。

副腎の解剖と分泌ホルモン

副腎とは、左右の腎臓の上極に乗るように位置する小さな内分泌臓器です。外側の皮質と内側の髄質という二重構造をとり、それぞれが異なるホルモンを分泌します。皮質と髄質では発生学的な由来も役割もまったく異なるため、まずこの区別を押さえることが基本となります。

副腎皮質の三層構造

副腎皮質は外側から内側へ向かって、球状層・束状層・網状層の三層に分かれます。最も外側の球状層からは鉱質コルチコイドであるアルドステロンが分泌されます。アルドステロンは腎尿細管でナトリウムの再吸収とカリウムの排泄を促し、体液量と血圧を維持する働きをもちます。中間の束状層からは糖質コルチコイドであるコルチゾールが分泌されます。コルチゾールは糖新生の促進、抗炎症作用、血圧の維持、脂肪の再分布、性腺機能の抑制など多彩な作用をもつストレスホルモンです。最も内側の網状層からは副腎アンドロゲンが分泌され、男女ともに性ホルモン作用の一部を担います。

副腎髄質

副腎髄質は交感神経節と同じ神経堤由来の組織で、カテコールアミンであるアドレナリンとノルアドレナリンを分泌します。これらは心拍数増加、血圧上昇、血糖上昇など、いわゆる「闘争か逃走か」の反応を引き起こします。

クッシング症候群

クッシング症候群とは、コルチゾール過剰によってさまざまな全身症状が引き起こされる疾患の総称です。30〜50代の女性に多くみられます。

原因による分類

原因は大きく四つに分けられます。一つ目は副腎自体に腺腫や癌が生じてコルチゾールを過剰産生する原発性のもの、二つ目は下垂体腺腫からACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が過剰分泌され、二次的に副腎が刺激されて起こるクッシング病、三つ目は肺癌などからACTHが異所性に産生される異所性ACTH産生腫瘍、四つ目はステロイド薬の長期投与による医原性のものです。ACTH依存性か非依存性かによって血中ACTH値の動きが異なる点が重要です。

臨床像

代表的な四徴は、満月様顔貌(ムーンフェイス)中心性肥満、背部の水牛様脂肪沈着、腹部などにみられる赤紫色の皮膚線条です。コルチゾールによる脂肪再分布の影響で、四肢は逆に細くなり、体幹と顔面に脂肪が集中するという独特の体型をとります。これに加えて、高血圧、耐糖能異常による糖尿病、月経異常や無月経、易感染性、骨粗鬆症、不眠やうつなどの精神症状を合併します。女性での月経異常は性腺機能の抑制を反映したものです。

検査と治療

血中コルチゾールは高値を示し、ACTHはクッシング病や異所性ACTH産生腫瘍では高値、副腎性のものでは低値となります。確定診断にはデキサメサゾン抑制試験が用いられ、コルチゾール分泌が適切に抑制されないことを確認します。治療は原因腫瘍の摘出が原則で、医原性であればステロイドの漸減を行います。

褐色細胞腫

褐色細胞腫とは、副腎髄質のクロム親和性細胞から発生する腫瘍で、カテコールアミンを過剰に分泌する疾患です。

5H(5徴)

症状はカテコールアミンの作用そのもので、頭文字Hで始まる五つの徴候、いわゆる5Hとしてまとめられます。Hypertension(高血圧)、Headache(頭痛)、Hyperhidrosis(発汗過多)、Hyperglycemia(高血糖)、Hypermetabolism(代謝亢進)です。発作性の高血圧が特徴的で、動悸や顔面蒼白を伴うこともあります。

診断と術前管理

診断には血中および尿中のカテコールアミンと、その代謝産物であるメタネフリンおよびバニリルマンデル酸(VMA)の測定が用いられます。治療は手術による腫瘍摘出が基本ですが、術前管理が極めて重要です。まずα遮断薬で血管を拡張させて十分に降圧してから、必要に応じてβ遮断薬を追加します。β遮断薬を単独で先に投与するとα作用が相対的に優位となり、血圧がかえって急上昇するため禁忌である点は国試頻出です。

バセドウ病との鑑別

副腎疾患と紛らわしいのが甲状腺機能亢進症であるバセドウ病です。バセドウ病の三主徴はメルゼブルク三徴と呼ばれ、眼球突出・甲状腺腫大・頻脈からなります。動悸や発汗、体重減少などは褐色細胞腫と一見似ていますが、原因臓器も病態もまったく異なるため、症状と検査所見から区別する必要があります。

まとめ

副腎は皮質と髄質からなり、皮質はアルドステロン・コルチゾール・副腎アンドロゲンを、髄質はカテコールアミンを分泌します。クッシング症候群はコルチゾール過剰によって満月様顔貌・中心性肥満・水牛様脂肪沈着・皮膚線条の四徴と、高血圧・糖尿病・骨粗鬆症などを呈し、デキサメサゾン抑制試験で診断します。褐色細胞腫は副腎髄質由来でカテコールアミンを過剰分泌し、5Hの徴候を示すとともに、VMAやメタネフリンが診断の手がかりとなり、術前はα遮断薬による降圧管理が必須です。鑑別ではバセドウ病のメルゼブルク三徴を併せて押さえておくことが国試対策の要となります。

確認問題(穴埋め)

空欄をタップすると答えが表示されます。

  1. 1.

    副腎皮質の球状層から分泌され、ナトリウム再吸収・カリウム排泄を促して血圧を維持するホルモンはである。

  2. 2.

    副腎皮質の束状層から分泌され、糖新生・抗炎症・脂肪再分布などに関与するホルモンはである。

  3. 3.

    副腎髄質のクロム親和性細胞から分泌されるホルモンを総称してといい、アドレナリンとノルアドレナリンが含まれる。

  4. 4.

    クッシング症候群でみられる、顔が丸く膨らむ特徴的な顔貌をという。

  5. 5.

    クッシング症候群では体幹に脂肪が集中する中心性肥満や、背部のが四徴の一つとしてみられる。

  6. 6.

    下垂体腺腫からACTHが過剰分泌され、二次的にコルチゾールが過剰となるクッシング症候群をという。

  7. 7.

    クッシング症候群の確定診断に用いられ、コルチゾール分泌が抑制されないことを確認する検査をという。

  8. 8.

    副腎髄質のクロム親和性細胞から発生し、カテコールアミンを過剰分泌する腫瘍をという。

  9. 9.

    褐色細胞腫の診断に用いられるカテコールアミン代謝産物には、メタネフリンとがある。

  10. 10.

    褐色細胞腫の術前管理では、まずによる降圧管理を行ってからβ遮断薬を追加する。

副腎疾患の病態」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。