医療安全管理体制と法令
看護の統合と実践 / 医療安全と職業安全
解説
医療安全管理体制とは、医療機関において医療事故を防止し、患者と職員の安全を確保するために整備される組織的な仕組みのことです。今回は医療安全管理体制と関連する法令について解説します。
医療安全管理が法令で義務化された背景
1999年に発生した患者取り違え事故などをきっかけに、医療事故防止が社会的課題となりました。これを受けて医療法および医療法施行規則が改正され、すべての医療機関に組織的な安全管理の取り組みが義務付けられました。医療安全は個人の注意力だけに依存するのではなく、システムとして担保するという考え方が基本となっています。
医療法と医療法施行規則による義務付け
医療法第6条の12および医療法施行規則第1条の11により、病院・有床診療所の管理者には医療安全管理体制を整備する義務が課されています。これは病院の規模を問わず適用される基本的な要件です。
医療安全管理体制の4本柱
施行規則で定められている柱は次の4つです。第一に、医療安全管理のための指針の整備を行います。第二に、医療安全管理委員会の設置により組織横断的に対策を検討します。第三に、職員研修を年2回程度および必要時に実施し、全職員の安全意識を高めます。第四に、医療事故等の院内報告体制の整備を行い、事例の収集・分析・改善につなげます。
医薬品・医療機器の安全管理責任者
これらに加えて、医薬品安全管理責任者と医療機器安全管理責任者の配置も義務付けられています。医薬品の使用に関する手順書の作成や、医療機器の保守点検・研修などを統括する役割を担います。
院内感染対策
院内感染対策についても、指針の策定、院内感染対策委員会の設置、職員研修の実施が義務付けられており、医療安全と並ぶ重要な柱となっています。
特定機能病院等での加重要件
特定機能病院や臨床研修病院等では、一般の病院に求められる体制に加えて、専従の医療安全管理者の配置、医療安全管理部門の設置、高難度新規医療技術や未承認新規医薬品を用いる際の事前審査体制などが追加で義務化されています。高度医療を提供する施設にはより厳格な安全管理が求められています。
医療事故調査制度
2014年の医療法改正により、2015年10月から医療事故調査制度が施行されました。医療に起因する予期しない死亡または死産が発生した場合、医療機関は医療事故調査・支援センターに報告し、院内調査を実施する義務があります。同センターは日本医療安全調査機構が国の指定を受けて運営しています。目的は責任追及ではなく、原因究明と再発防止です。
医療安全支援センターとの違い
医療安全支援センターは医療法第6条の13に基づき、都道府県・保健所設置市・特別区が設置する公的機関で、患者や住民からの医療に関する苦情・相談対応や情報提供を行います。医療事故調査・支援センターとは目的も設置主体も異なる点に注意が必要です。
インシデント/アクシデント報告と再発防止
院内では、患者に影響が及ばなかったヒヤリ・ハット事例をインシデント報告、実害が生じた事例をアクシデント報告として収集します。ハインリッヒの法則では1件の重大事故の背後に29件の軽傷事故と300件のヒヤリ・ハットがあるとされ、軽微な事例の収集が重大事故防止に直結します。スイスチーズモデルでは複数の防護壁の穴が重なったときに事故が発生すると説明され、多重の対策の重要性が示されます。報告事例は**RCA(根本原因分析)**などにより要因を分析し、改善策を全職員で共有します。
看護師の役割
看護師は患者に最も近い立場で医療行為に関わるため、安全管理の実践者として中心的な役割を担います。与薬時の6R(正しい患者・薬剤・用量・経路・時間・目的)の確認、患者誤認防止のためのフルネーム確認、転倒・転落予防、報告体制への積極的な参加などが求められます。
まとめ
医療安全管理体制は医療法と施行規則により病院等に義務付けられ、指針・委員会・研修・報告体制の4本柱を基本とします。医療事故調査制度や医療安全支援センターなどの公的仕組みと連動しながら、看護師を含む全職員が日々の業務で安全文化を実践することが求められています。
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- 1.
医療安全管理体制の整備は、医療法第条のおよび医療法施行規則第1条の11により、病院等の管理者に義務付けられている。
- 2.
医療安全管理体制の4本柱は、指針の整備、の設置、職員研修の実施、医療事故等の体制の整備である。
- 3.
医療安全に関する職員研修は、年回程度および必要時に実施することが求められている。
- 4.
医療機関には、医療安全管理体制に加えて安全管理責任者と安全管理責任者の配置が義務付けられている。
- 5.
2015年10月に施行された医療事故調査制度では、予期しない死亡事故が発生した場合、への報告と院内調査が義務付けられている。
- 6.
医療法第6条の13に基づき、患者や住民からの医療に関する苦情・相談対応を行うは、都道府県・保健所設置市・特別区が設置する。
- 7.
1件の重大事故の背後に29件の軽傷事故と300件のヒヤリ・ハットがあるとする経験則をの法則という。
- 8.
複数の防護壁の穴が重なったときに事故が発生するという安全モデルをモデルという。
- 9.
与薬時の安全確認である6Rには、正しい患者・薬剤・用量・・時間・目的が含まれる。
- 10.
特定機能病院では、一般病院の体制に加えての医療安全管理者の配置や医療安全管理部門の設置が義務化されている。
