ショックと敗血症
成人看護学 / 周術期・救急
解説
ショックとは、急性循環不全により全身の組織が必要とする酸素需要を満たせなくなった重篤な状態をいいます。今回はショックの分類と敗血症について、看護学生が押さえるべき基礎から順に解説します。
ショックの基本病態と5徴候
ショックの本質は、血圧低下そのものではなく、組織への酸素供給不足にあります。臨床では古典的な5つの徴候(5P)が知られています。蒼白(Pallor)、虚脱(Prostration)、冷汗(Perspiration)、脈拍微弱(Pulselessness)、呼吸不全(Pulmonary insufficiency)の頭文字をとった所見群です。
重要なのは、脈拍は血圧低下より早期にショックを示唆する敏感な指標であるという点です。代償機構が働いている初期には血圧はまだ保たれており、頻脈・皮膚蒼白・冷汗・脈圧低下といった所見がまず出現し、血圧低下は代償が破綻した段階の所見となります。ショックの早期発見には、脈拍数の継続的なモニタリングが最優先となります。指標としてショック指数(脈拍数÷収縮期血圧)があり、1.0以上でショック、1.5以上で重症と評価します。
ショックの4分類
ショックは原因別に大きく4つに分類されます。
循環血液量減少性ショック
出血、脱水、熱傷などにより循環血液量そのものが減少して起こります。外傷では脾臓のような血流豊富な臓器の損傷により急速に腹腔内出血をきたし、出血性ショックに至ることがあります。被膜下血腫が遅れて破裂する二段階破裂にも注意が必要です。
心原性ショック
心臓のポンプ機能が急激に破綻し、心拍出量が著しく低下する病態です。最も頻度が高い原因は急性心筋梗塞で、ほかに重症不整脈などがあります。心筋虚血や心不全を反映して胸痛・胸部不快感が出現し、これに冷汗、顔面蒼白、血圧低下、尿量減少、意識レベル低下などの末梢循環不全所見を伴います。皮膚は冷たく湿潤するコールドショックの所見を示します。
血液分布異常性ショック
血管拡張や血管透過性亢進により血液分布が異常となるショックで、敗血症性、アナフィラキシー、神経原性が含まれます。アナフィラキシーショックに対してはアドレナリンを大腿外側に筋肉内注射することが第一選択です。
閉塞性ショック
肺血栓塞栓症、緊張性気胸、心タンポナーデなど、心臓や大血管が物理的に閉塞・圧迫されて起こります。
敗血症の定義と診断
**敗血症(sepsis)**とは、感染を契機に生じる全身性の炎症反応と、それに伴う臓器障害を特徴とする病態です。発熱、白血球増多、頻脈、頻呼吸といった全身性炎症所見を呈します。
現在の国際定義であるSepsis-3では、感染に加えてSOFAスコアが2点以上上昇した状態を敗血症と定義します。ベッドサイドではqSOFA(意識障害、収縮期血圧100mmHg以下、呼吸数22回/分以上のうち2項目以上)でスクリーニングします。
敗血症性ショックと多臓器不全
敗血症性ショックは、主にグラム陰性桿菌のエンドトキシン(リポ多糖)などによる全身性炎症反応を背景として循環不全をきたす病態です。初期には末梢血管が拡張し、四肢が温かく皮膚が紅潮するウォームショックを呈し、頻脈と低血圧を伴います。進行するとやがて末梢循環不全により四肢冷感・蒼白を示すコールドショックへ移行します。未治療のまま進行すると**多臓器不全(MODS/MOF)**に至る極めて重篤な病態です。
治療と看護の要点
敗血症の治療はSurviving Sepsis Campaign Guidelinesに基づき、1時間以内の広域抗菌薬投与、晶質液30mL/kgの急速輸液による蘇生、ノルアドレナリンなどの昇圧薬、酸素投与・人工呼吸、そして感染源コントロールを早期に行います。
看護では、意識レベル、尿量、末梢循環、乳酸値などを継続的に観察し、ショックの進行を早期に察知することが求められます。とくに外傷後の出血性ショックが疑われる場合は、脈拍数の連続モニタリングを最優先とし、時間経過でのヘモグロビン低下にも注意します。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
ショックの本質は、急性循環不全により組織の需要を満たせない状態である。
- 2.
ショックの5徴候(5P)には蒼白、虚脱、冷汗、脈拍微弱、が含まれる。
- 3.
ショックを早期に示唆する最も敏感なバイタルサインの指標はである。
- 4.
急性心筋梗塞を原因とするショックでは胸痛・胸部不快感がみられる。
- 5.
敗血症性ショックの主な原因物質はグラム陰性桿菌のである。
- 6.
敗血症性ショックの初期にみられる四肢が温かく皮膚が紅潮する状態をという。
- 7.
敗血症が未治療で進行すると、最終的に(MODS/MOF)に至る。
- 8.
敗血症のベッドサイドスクリーニングに用いられ、意識障害・呼吸数22回/分以上・収縮期血圧100mmHg以下のうち2項目以上で陽性となる指標をという。
- 9.
アナフィラキシーショックに対する第一選択薬はであり、大腿外側に筋肉内注射する。
- 10.
脈拍数÷収縮期血圧で算出され、1.0以上でショックと評価される指標をという。
