創傷・熱傷・止血処置
成人看護学 / 周術期・救急
解説
今回は創傷・熱傷・止血処置について解説します。創傷とは、外力によって生じる皮膚や粘膜、皮下組織の損傷の総称であり、看護師は損傷の種類・深さを正しく評価し、感染予防と止血、適切な創処置を行う必要があります。熱傷や鼻出血など、国試で頻出のテーマも含めて、基礎から整理していきましょう。
創傷の分類
外傷は皮膚の連続性が断たれているか否かにより、開放性損傷と非開放性損傷の2つに大別されます。日本語では「創」が開放性(皮膚が破れている)、「傷」が非開放性(皮膚が破れていない)を表すと整理すると覚えやすいです。
開放性損傷(創)
皮膚が裂けて外界と交通している損傷で、出血・疼痛・感染のリスクがあります。代表例は切創(鋭利な刃物による直線的な創)、擦過創(こすれて表皮がはがれる、いわゆるすり傷)、刺創(細く深い、釘や針などによる創)、咬創(動物や人の咬みつきによる創、口腔内常在菌で感染リスクが高い)、裂創(鈍的外力で皮膚が裂ける)です。これらは皮膚の連続性が断たれているため、破傷風予防を含む感染対策が不可欠です。
非開放性損傷(傷)
皮膚は破れていないものの、皮下組織・筋・腱・神経・骨・関節・内臓が損傷を受けるものです。打撲傷、捻挫、脱臼、皮下出血、内臓損傷などが含まれます。外見上は軽症に見えても内臓損傷では致命的となり得るため、バイタルサインや腹部所見の観察が重要です。
創傷の管理と感染予防
汚染された開放性損傷では、受傷から6時間以内(ゴールデンピリオド)に十分な洗浄とデブリドマン(壊死組織の除去)を行うことが推奨されます。これは細菌が組織内で増殖し感染を成立させる前に汚染を取り除くという考え方です。創の洗浄には大量の生理食塩水または流水を用い、消毒薬の過度の使用は正常組織を傷害するため避けます。湿潤環境を保つことで上皮化が促進されるという湿潤療法(モイストヒーリング)の考え方も現在の標準的な創傷ケアです。
熱傷の深度分類
熱傷は損傷の深さによりⅠ度・Ⅱ度(浅達性/深達性)・Ⅲ度に分類され、深さによって症状・治癒経過・瘢痕形成が異なります。鑑別のポイントは「色調」「水疱の有無」「疼痛の程度」の3点です。
Ⅰ度熱傷
表皮までの損傷で、紅斑を呈し、水疱はみられません。ヒリヒリとした疼痛がありますが、数日で瘢痕を残さず治癒します。日焼けが典型例です。
浅達性Ⅱ度熱傷
真皮浅層までの損傷で、鮮紅色の水疱底面と強い疼痛が特徴です。知覚は保たれており、瘢痕を残さず1〜2週間で上皮化します。国試では「鮮紅色・水疱・強痛」の所見からこの深度と治癒期間を判定させる出題が頻出です。
深達性Ⅱ度熱傷
真皮深層までの損傷で、水疱底面は白色〜淡紅色で混濁し、知覚は鈍麻します。治癒には3〜4週以上を要し、瘢痕を残しやすいのが特徴です。
Ⅲ度熱傷
皮下組織にまで及ぶ全層損傷で、皮膚は乾燥して革様または白色・黒色炭化し、神経終末が破壊されているため無痛となります。自然治癒は困難で植皮を要します。
熱傷面積の評価と全身管理
受傷面積の評価には成人では9の法則、小児では5の法則やLund and Browder法を用います。9の法則では頭部9%・上肢各9%・体幹前面18%・体幹後面18%・下肢各18%・陰部1%と覚えます。広範囲熱傷では循環血液量減少性ショックを来すため、Baxter(バクスター)式などに従った輸液療法による全身管理が必要です。
止血処置の基本
止血の基本手技は直接圧迫止血法で、清潔なガーゼで創部を直接圧迫します。多くの外出血はこれにより制御可能です。四肢の大出血では患肢を心臓より高く挙上し、止血が得られない場合に限り止血帯の使用を検討します。止血帯は組織壊死のリスクがあるため、装着時刻を必ず記録します。
鼻出血への対応
鼻出血の好発部位は鼻中隔前方のキーゼルバッハ部位で、毛細血管が密集しており、全鼻出血の約80〜90%を占めます。残り約1割は蝶口蓋動脈などからの後方出血です。 キーゼルバッハ部位からの出血に対する基本的対応は、座位でやや前屈させ、鼻翼を両側から5〜10分間圧迫することです。前屈姿勢をとるのは、血液が咽頭に流れ込んで嚥下・誤嚥するのを防ぐためで、仰臥位や上を向く姿勢は誤りです。氷枕で鼻根部を冷却すると血管収縮を促し、止血効果が高まります。 圧迫だけで止血できない場合は、アドレナリンガーゼによる血管収縮、電気凝固、後方出血ではベロックタンポンへとステップアップします。抗凝固薬・抗血小板薬の服用、高血圧、白血病などの血液疾患があると止血困難となりやすいため、必ず病歴を聴取します。
まとめ
創傷は皮膚の連続性が断たれた**開放性損傷(創)と、皮膚が破れていない非開放性損傷(傷)**に大別され、切創・擦過創・刺創などは前者に含まれます。汚染創ではゴールデンピリオドである受傷後6時間以内の洗浄・デブリドマンが感染予防の鍵です。熱傷は色調・水疱・疼痛で深度を判定し、鮮紅色水疱と強い疼痛を呈する浅達性Ⅱ度熱傷は1〜2週間で瘢痕を残さず上皮化します。鼻出血ではキーゼルバッハ部位が好発部位であり、座位前屈位での鼻翼圧迫が基本対応となります。これらの分類と対応を整理して理解することで、創傷・熱傷・止血に関する国試問題に確実に対応できるようになります。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
外傷のうち、皮膚の連続性が断たれている損傷をといい、切創や擦過創、刺創などが代表例である。
- 2.
皮膚が破れず、皮下組織や筋、内臓などに損傷が及ぶものをといい、打撲傷や捻挫、脱臼などが含まれる。
- 3.
汚染された開放性損傷では、受傷から時間以内に洗浄とデブリドマンを行うことが感染予防上望ましく、この時間帯はゴールデンピリオドと呼ばれる。
- 4.
鮮紅色の水疱底面と強い疼痛を呈し、1〜2週間で瘢痕を残さずに上皮化する熱傷はである。
- 5.
皮膚が乾燥した革様または炭化した状態となり、神経終末が破壊されて無痛となる熱傷の深度はである。
- 6.
成人の熱傷面積を評価する方法で、頭部9%・上肢各9%・体幹前後面各18%・下肢各18%とする方法をという。
- 7.
鼻出血の約80〜90%を占める好発部位で、鼻中隔前方に位置する毛細血管の密集部をという。
- 8.
鼻出血時の基本的な体位と止血法は、でやや前屈させ、鼻翼を両側から5〜10分間圧迫することである。
