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糖・脂質・蛋白質の代謝

人体の構造・機能 / 消化器・代謝・内分泌

解説

今回は糖・脂質・蛋白質の代謝について解説します。三大栄養素である糖質・脂質・蛋白質は、消化吸収された後にそれぞれ固有の代謝経路を経て、エネルギー産生や生体構成成分の合成に利用されます。それぞれの代謝は肝臓を中心に営まれ、ホルモンや酵素によって厳密に調節されています。国家試験では各栄養素の最終代謝産物や代謝の場、関連するホルモンの作用が頻出します。

エネルギー代謝の分類(異化と同化)

生体内で営まれるエネルギー代謝は、大きく異化同化の2つに分類されます。異化とは、糖質・脂質・蛋白質などの高分子化合物を分解してエネルギーを放出する代謝過程をいい、グリコーゲンの分解、脂肪酸のβ酸化、アミノ酸の脱アミノ反応などが該当します。一方の同化は、放出されたエネルギーを利用して低分子から高分子を合成する代謝過程で、グリコーゲン合成、脂肪酸合成、蛋白質合成などが含まれます。両者は相反する反応ですが、生体内ではバランスをとりながら絶えず進行しており、絶食時や術後早期には異化が優位、栄養状態が良好な回復期や成長期には同化が優位となります。

なお、角化(表皮細胞がケラチンを蓄積して扁平化する皮膚の分化現象)、石灰化(組織にカルシウム塩が沈着する病的変化)、瘢痕化(創傷治癒の最終段階での線維化)はいずれも組織の形態変化や治癒過程を表す用語であり、エネルギー代謝の分類ではない点に注意が必要です。

糖質代謝

糖質は小腸で単糖類まで分解されてグルコースとして吸収され、門脈を経て肝臓に運ばれます。余剰のグルコースは肝臓と骨格筋でグリコーゲンとして貯蔵されます。食後に血糖が上昇すると、膵ランゲルハンス島β細胞からインスリンが分泌され、細胞内へのグルコース取り込み促進、グリコーゲン合成促進、糖放出抑制が起こります。逆に空腹時には、α細胞からグルカゴンが分泌され、肝臓のグリコーゲンを分解(グリコゲノリシス)してグルコースを血中に放出し、血糖を維持します。

血糖維持に直接寄与できるのは肝臓のみです。骨格筋にもグリコーゲンは存在しますが、グルコース-6-ホスファターゼを欠くため、分解しても筋細胞内でしかエネルギーとして利用できません。長時間の絶食ではアミノ酸や乳酸、グリセロールからグルコースを新生する糖新生が肝臓で行われ、コルチゾールやアドレナリンもこれを促進します。

脂質代謝

脂質は皮下や腹腔内に中性脂肪(トリグリセリド)として蓄えられます。腹壁の皮膚直下に蓄積するものを皮下脂肪、腸間膜や大網に蓄積するものを内臓脂肪と呼びます。皮下脂肪型肥満は洋梨型と呼ばれ女性に多く、内臓脂肪型肥満はりんご型と呼ばれ、インスリン抵抗性・脂質異常症・高血圧を伴ってメタボリックシンドロームの中核病態となります。

絶食時や術後異化期、糖尿病で糖質がエネルギー源として使えない状況では、トリグリセリドが分解されて遊離脂肪酸が血中に放出されます。遊離脂肪酸は肝細胞ミトコンドリアでβ酸化を受けてアセチルCoAとなり、その縮合からアセト酢酸・β-ヒドロキシ酪酸・アセトンの3種類のケトン体が生成されます。ケトン体は脳や心筋、骨格筋でエネルギー源として利用されますが、過剰産生時には糖尿病性ケトアシドーシスや飢餓ケトーシスを引き起こします。術後早期はカテコラミンやコルチゾールの上昇により脂肪分解が亢進し、Mooreの分類の傷害期に相当します。

蛋白質代謝

蛋白質は20種類のアミノ酸がペプチド結合で連なった高分子で、体内で合成できない9種類を必須アミノ酸(バリン・ロイシン・イソロイシン・メチオニン・フェニルアラニン・トリプトファン・トレオニン・リジン・ヒスチジン)といいます。消化は胃のペプシンに始まり、膵液のトリプシン・キモトリプシン、小腸刷子縁酵素により段階的にアミノ酸まで分解され吸収されます。

アミノ酸が分解される際の脱アミノ反応で生じるアンモニアは神経毒性が強いため、肝臓の尿素回路(オルニチン回路)で無毒な尿素に変換され、腎臓から尿中に排泄されます。肝硬変では尿素回路が機能不全となり、血中アンモニアが上昇して肝性脳症を生じます。治療にはラクツロースや分岐鎖アミノ酸製剤が用いられます。

核酸代謝

アデニンやグアニンといったプリン体は、ヒトでは尿酸酸化酵素(ウリカーゼ)を欠くため、最終代謝産物が尿酸となり腎臓から排泄されます。血清尿酸値が7.0mg/dLを超えると高尿酸血症と診断され、産生過剰型・排泄低下型・混合型に分類されます。痛風発作時はNSAIDsやコルヒチンで炎症を抑え、発作が落ち着いてからアロプリノールやフェブキソスタットなどの尿酸降下薬を開始します。

まとめ

エネルギー代謝は分解によりエネルギーを放出する異化と、エネルギーを使って物質を合成する同化に大別されます。糖質はインスリンとグルカゴンによって血糖が調節され、肝臓のグリコーゲンが血糖維持の要となります。脂質は飢餓や術後に分解されてケトン体となり、内臓脂肪の蓄積はメタボリックシンドロームの基盤です。蛋白質代謝で生じるアンモニアは肝臓の尿素回路で尿素に、核酸のプリン体は尿酸となって腎臓から排泄されます。各栄養素の代謝の場と最終代謝産物、調節ホルモンを結びつけて理解することが国試攻略の鍵となります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    血糖が低下した際に、肝臓でグリコーゲンを分解してグルコースを血中に放出させるホルモンはである。

  2. 2.

    肝臓と骨格筋はともにグリコーゲンを貯蔵するが、血糖維持に直接寄与できるのはのみである。

  3. 3.

    ケトン体(アセト酢酸・β-ヒドロキシ酪酸・アセトン)の前駆物質となり、肝細胞ミトコンドリアでβ酸化を受けるのはである。

  4. 4.

    内臓脂肪の過剰蓄積を中核とし、インスリン抵抗性・脂質異常・高血圧を伴う病態をという。

  5. 5.

    体内で合成できず食事から摂取する必要があるアミノ酸をといい、ヒトでは9種類ある。

  6. 6.

    アミノ酸の脱アミノ反応で生じた神経毒性の強いアンモニアは、肝臓の尿素回路で無毒なに変換される。

  7. 7.

    核酸のアデニンやグアニンといったプリン体の最終代謝産物はであり、主に腎臓から排泄される。

  8. 8.

    肝硬変などで尿素回路の機能が低下し、血中アンモニアの上昇により意識障害を呈する病態をという。

  9. 9.

    高分子化合物を分解してエネルギーを放出する代謝過程をといい、エネルギーを使って低分子から高分子を合成する代謝過程をという。

  10. 10.

    角化・石灰化・瘢痕化は組織の形態変化や治癒過程を示す用語であり、の分類ではない。

糖・脂質・蛋白質の代謝」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。