髄膜炎と神経系検査処置
成人看護学 / 脳・神経
解説
髄膜炎は、脳と脊髄を包む髄膜(硬膜・くも膜・軟膜の三層)のうち、主にくも膜と軟膜の間にあるくも膜下腔に病原体が侵入し、強い炎症を引き起こす疾患です。原因により細菌性、ウイルス性、結核性、真菌性に分類され、なかでも細菌性髄膜炎は進行が極めて速く、抗菌薬の開始が数時間遅れるだけで予後が大きく悪化する救急疾患として位置づけられています。看護学生がまず押さえておきたいのは、髄膜が炎症を起こすと「髄膜刺激症状」と「頭蓋内圧亢進症状」という二つの大きな症候群が現れる、という枠組みです。
髄膜炎の症状と髄膜刺激徴候
細菌性髄膜炎の古典的三徴は、発熱・頭痛・項部硬直であり、これに意識障害を加えて四徴とすることもあります。項部硬直とは、仰臥位の患者の頭部を他動的に前屈させようとしたときに、頸部の筋が反射的に緊張して抵抗があり、あごが胸につかない状態をいいます。これは炎症を起こした髄膜が伸展されることによる防御反応です。
同じ機序で出現する徴候として、ケルニッヒ徴候とブルジンスキー徴候があります。ケルニッヒ徴候は、仰臥位で股関節と膝関節を90度に屈曲した状態から膝を伸ばそうとすると、135度まで伸展できず疼痛が走るというものです。ブルジンスキー徴候は、頸部を他動的に前屈させると、刺激を避けようとして両下肢が反射的に屈曲する現象を指します。
さらに見逃せないのが羞明です。羞明とは、普段なら気にならない程度の光をまぶしく不快に感じる状態で、髄膜が過敏になっているために生じます。看護では、部屋の照明を落とし、騒音や面会も最小限にとどめ、刺激の少ない静かな環境を整えることが基本となります。頭蓋内圧亢進症状としては頭痛・嘔吐・うっ血乳頭がみられ、進行するとクッシング徴候(血圧上昇・徐脈・呼吸不整)が出現し、脳ヘルニアの危険を示唆します。
原因菌は年齢で異なり、新生児ではB群連鎖球菌や大腸菌、小児ではインフルエンザ菌b型(ヒブワクチン普及で減少)や肺炎球菌、成人では肺炎球菌と髄膜炎菌が中心となります。
髄液検査と神経系の画像検査
髄膜炎・脳炎の確定診断に欠かせないのが、腰椎穿刺による脳脊髄液検査です。第3〜4腰椎間または第4〜5腰椎間からくも膜下腔に針を刺し、髄液を採取します。細菌性髄膜炎では髄液が混濁し、好中球の著明な増加、糖の低下、蛋白の上昇がみられ、培養やグラム染色で起炎菌を同定します。ウイルス性脳炎ではリンパ球優位の細胞増加と蛋白軽度上昇がみられ、単純ヘルペス脳炎などはPCR検査でウイルスDNAを検出して診断を確定します。
中枢神経系の検査は、目的によって使い分けられます。頭部CTはくも膜下出血や脳出血など出血性病変の迅速診断に優れ、頭部MRIは脳梗塞の早期診断(拡散強調像)や脳腫瘍、脱髄疾患の評価に用いられます。脳波はてんかんや意識障害の評価、脳死判定に用いられる検査です。髄液検査は髄膜炎・脳炎のほか、CTで描出できないくも膜下出血のキサントクロミー、多発性硬化症のオリゴクローナルバンド、ギラン・バレー症候群の蛋白細胞解離など、多くの疾患の確定診断に貢献します。
脳血管造影・脊髄造影の看護
脳血管造影は、大腿動脈や上腕動脈からカテーテルを挿入し、脳動脈に造影剤を注入してX線撮影を行う検査です。動脈瘤や脳血管狭窄、動静脈奇形の評価に用いられます。最大の合併症は穿刺部の出血・血腫と、血栓による末梢動脈閉塞です。看護では、穿刺部の圧迫止血と数時間の安静臥床を保ち、穿刺側下肢を屈曲させないよう指導します。観察項目として最も重要なのは、穿刺部より末梢側の動脈拍動(足背動脈など)の触知です。拍動の減弱や消失、皮膚の冷感、しびれ、左右差は動脈閉塞のサインとなります。造影剤による腎症やアレルギー反応にも注意し、検査前後の十分な水分摂取で排泄を促します。
脊髄造影(ミエログラフィ)は、腰椎穿刺によりくも膜下腔に造影剤を注入し、脊髄や神経根を描出する検査です。MRIの普及により頻度は減りましたが、術前評価などで行われます。最大のリスクは、造影剤が頭蓋内へ流入した場合の髄膜刺激症状やけいれん発作で、検査後は頭部を挙上した体位で安静を保ち、けいれん・頭痛・悪心の有無を継続的に観察します。
まとめ
髄膜炎は髄膜刺激症状(項部硬直・ケルニッヒ徴候・ブルジンスキー徴候・羞明)と頭蓋内圧亢進症状を二本柱として捉え、暗く静かな環境調整と迅速な抗菌薬投与が看護と治療の要となります。確定診断は腰椎穿刺による髄液検査で行い、CT・MRI・脳波はそれぞれ得意とする病態が異なるため目的に応じて使い分けます。脳血管造影では穿刺部末梢の動脈拍動の観察、脊髄造影では造影剤の頭蓋内流入に伴うけいれんの観察が看護の最重要ポイントです。これらを一連の流れとして理解しておくことで、国家試験の応用問題にも対応できる力が身につきます。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
細菌性髄膜炎の古典的三徴は発熱・頭痛・であり、これに意識障害を加えて四徴とすることもある。
- 2.
仰臥位で股関節と膝関節を90度に屈曲した状態から膝を伸展させようとすると、135度まで伸ばせず痛みを訴える徴候をという。
- 3.
髄膜炎では髄膜が過敏になり、普段は気にならない光を不快に感じるが出現するため、部屋の照明を暗くする環境調整を行う。
- 4.
髄膜炎・脳炎の確定診断には、腰椎穿刺による(髄液検査)が必須である。
- 5.
細菌性髄膜炎の髄液所見では、混濁し好中球が増加し、糖は、蛋白は上昇する。
- 6.
脳血管造影後の看護では、血栓による動脈閉塞を早期に発見するため、穿刺部より側の動脈拍動を観察する。
- 7.
脊髄造影はに造影剤を注入する検査であり、造影剤が頭蓋内へ流入するとけいれん発作を起こす危険がある。
- 8.
頭蓋内圧亢進が進行するとみられる血圧上昇・徐脈・呼吸不整の三徴をという。
