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HIV感染症とAIDS

健康支援と社会保障制度 / 感染症対策と予防

解説

HIV感染症とは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)がCD4陽性Tリンパ球に感染して細胞性免疫を低下させ、最終的にAIDS(後天性免疫不全症候群)を引き起こす疾患です。今回はHIV感染症とAIDSについて解説します。

HIVの特徴と感染経路

HIVはレトロウイルス科に分類されるRNAウイルスで、宿主のCD4陽性Tリンパ球に侵入し、逆転写酵素を用いて増殖します。これによりCD4陽性T細胞数が徐々に減少し、細胞性免疫が破綻していきます。

感染源となる体液は血液、精液、腟分泌液、母乳であり、感染経路は性感染、血液感染、母子感染の3つに大別されます。母子感染では経胎盤、産道、母乳の3経路があります。日常的な接触や唾液・涙・汗による感染は起こりません。日本における新規HIV感染者は男性同性間性的接触によるものが中心です。世界的にはサハラ以南のアフリカに陽性者の約7割が集中し、女性の新規感染が多いことから母子感染対策と教育が重要課題となっています。HIV/AIDS対策の国際機関としてUNAIDS(国連合同エイズ計画)が1996年に設立されています。

臨床経過とAIDSの診断

HIV感染症は急性期・無症候期・AIDS発症期の3段階を経過します。感染後2〜4週の急性期にはインフルエンザ様症状が出現し、その後数年から十数年に及ぶ無症候期(臨床的潜伏期)に入ります。無症候期は自覚症状がないものの、体内ではウイルス増殖とCD4陽性T細胞の破壊が進行しており、この時期に発見して**ART(抗レトロウイルス療法)**を開始できるかが予後を大きく左右します。

CD4陽性T細胞数の正常値は800〜1200/μLで、500未満で帯状疱疹や口腔カンジダ症、200未満でニューモシスチス肺炎、100未満でサイトメガロウイルス網膜炎やトキソプラズマ脳症、50未満で非結核性抗酸菌症のリスクが高まります。AIDSの診断は、CD4陽性T細胞数200/μL未満、または日本で定められた23のAIDS指標疾患のいずれかを発症した場合に下されます。代表的な指標疾患にはニューモシスチス肺炎、カンジダ症、クリプトコッカス症、サイトメガロウイルス感染症、トキソプラズマ脳症、カポジ肉腫、非ホジキンリンパ腫、HIV脳症などがあります。ARTにより早期治療を行えば、ほぼ健常人と同等の寿命が期待できます。

予防と曝露時の対応

HIV検査は全国の保健所で無料・匿名で受けることができ、受検のハードルを下げる工夫がなされています。性行為ではコンドームによる感染予防が有効で、ARTでウイルス量が検出限界未満となれば性行為による感染リスクは著しく低下するという**U=U(Undetectable=Untransmittable)**の概念も普及しています。妊婦に対しては抗ウイルス療法、選択的帝王切開、断乳、児への予防投与を組み合わせることで母子感染率を1%未満に抑制できます。

針刺し事故によるHIV感染率は約**0.3%**で、HBV約30%、HCV約3%と比べて低いものの、発生時は流水と石けんで洗浄し、施設手順に従って報告したうえで、**曝露後予防内服(PEP)**を原則72時間以内(CDC指針では可能な限り2時間以内)に開始し、抗レトロウイルス薬2〜3剤を4週間継続します。リスクの高い人への曝露前予防(PrEP)も活用されています。

看護のポイント

HIV感染告知は本人に対して行うことが原則であり、プライバシーへの配慮が不可欠です。生活指導は性行動や服薬状況など機微な情報を扱うため、集団指導ではなく個別指導を第一選択とし、個々の生活背景やパートナーシップを踏まえた支援を行います。標準予防策として手袋・ゴーグルを着用し、血液・体液曝露を防止します。

まとめ

HIVはCD4陽性Tリンパ球に感染して細胞性免疫を低下させるレトロウイルスで、性感染・血液感染・母子感染の3経路で広がります。急性期、無症候期、AIDS発症期と進行し、CD4陽性T細胞数200/μL未満または23の指標疾患の発症でAIDSと診断されます。早期発見とART導入により予後は大きく改善し、針刺し事故時のPEPや妊婦への母子感染予防策、保健所での無料・匿名検査、個別指導によるプライバシー配慮など、看護師には正確な知識と倫理的対応が求められます。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    HIVは( )科に属するRNAウイルスで、主に( )陽性Tリンパ球に感染し細胞性免疫を低下させる。

  2. 2.

    HIVの感染経路は( )感染・( )感染・( )感染の3つである。

  3. 3.

    HIV感染症は急性期、( )期、AIDS発症期の3段階で経過し、( )期は数年〜十数年に及ぶ。

  4. 4.

    AIDSの診断基準は、CD4陽性T細胞数が( )/μL未満、または定められた( )疾患のいずれかを発症した場合である。

  5. 5.

    CD4陽性T細胞数が200/μL未満になると( )肺炎などの日和見感染症のリスクが高まる。

  6. 6.

    HIV感染症の治療の中心は( )(抗レトロウイルス療法)であり、ウイルス量を検出限界未満に保つことで性行為での感染リスクが著しく低下するという概念を( )という。

  7. 7.

    針刺し事故によるHIV感染率は約( )%で、曝露後予防内服(( ))は原則72時間以内に開始する。

  8. 8.

    HIV検査は全国の( )で無料・( )で受けることができる。

  9. 9.

    妊婦のHIV感染では、抗ウイルス療法・選択的( )・断乳・児への予防投与により母子感染率を( )%未満に抑制できる。

HIV感染症とAIDS」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。