シクロホスファミドの膀胱を襲う毒『アクロレイン』とは
看護師国家試験 第112回 午後 第50問 / 成人看護学 / がん看護
国試問題にチャレンジ
シクロホスファミドを投与している患者で注意が必要なのはどれか。
- 1.緑内障(glaucoma)
- 2.間質性肺炎(interstitial pneumonia)
- 3.歯肉の肥厚
- 4.出血性膀胱炎(hemorrhagic cystitis)
対話形式の解説
博士
今回はシクロホスファミド投与時の注意点を問う問題じゃ。
アユム
シクロホスファミドって抗がん剤ですよね?
博士
その通り。アルキル化薬というグループに属する代表的な抗がん剤で、乳がん・肺小細胞がん・悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫などに広く使われる。自己免疫疾患の免疫抑制療法にも使用される薬じゃ。
アユム
特徴的な副作用は何ですか?
博士
いろいろあるが、他の抗がん剤と比べて特に特徴的なのが『出血性膀胱炎』じゃ。血尿・頻尿・排尿時痛が出現する。
アユム
なぜ膀胱に副作用が出るんですか?
博士
ここがポイントじゃ。シクロホスファミドは肝臓で代謝される過程で『アクロレイン』という有害な代謝産物を生じる。これが尿中に排泄される時に膀胱粘膜を強く刺激し化学的に傷害する。
アユム
だから膀胱炎になるんですね。予防はどうするんですか?
博士
第一に『アクロレインを膀胱に溜めない』ことじゃ。1日3リットル以上の大量輸液で尿を希釈し、頻回排尿で膀胱内滞在時間を短くする。夜間も排尿を促すことが重要じゃ。
アユム
解毒薬もあるんですか?
博士
『メスナ』という薬があるぞ。2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムという化合物で、尿中でアクロレインと結合して無毒化する。高用量シクロホスファミドでは必ず併用される。
アユム
看護師の役割は何ですか?
博士
水分摂取励行、尿量測定、尿色の観察、排尿時痛の有無確認などじゃ。血尿が出れば早期に医師へ報告する。
アユム
他の選択肢の副作用はどの薬で有名ですか?
博士
緑内障はアトロピンやステロイドで注意。間質性肺炎はブレオマイシン・メトトレキサート・ゲフィチニブが有名。歯肉肥厚はフェニトイン・ニフェジピン・シクロスポリンの3剤が代表じゃな。
アユム
抗がん剤の分類も整理したいです。
博士
ざっくり分けると、アルキル化薬(シクロホスファミド、イホスファミドなど)、白金製剤(シスプラチン、カルボプラチン)、代謝拮抗薬(メトトレキサート、5-FU)、植物アルカロイド(ビンクリスチン、パクリタキセル)、抗腫瘍抗生物質(ブレオマイシン、ドキソルビシン)などがある。
アユム
シクロホスファミドの他の副作用は?
博士
骨髄抑制、悪心嘔吐、脱毛、性腺機能低下による不妊、二次発がん、免疫抑制など多岐にわたる。性腺機能低下は若年患者では妊孕性温存の課題にもなるから、事前に卵子・精子凍結保存の話し合いが重要じゃ。
アユム
抗がん剤のばく露対策も看護師は知っておくべきですね。
博士
その通り。投与時は手袋・ガウン・ゴーグルを着用し、CSTD(閉鎖式薬物移送システム)を使う。患者の排泄物処理にも防護具が必要じゃ。
アユム
副作用管理とばく露対策、両方に気を配るのが抗がん剤看護ですね。
POINT
シクロホスファミドはアルキル化薬に属する抗がん剤で、代謝産物アクロレインが尿中で膀胱粘膜を傷害することにより出血性膀胱炎を引き起こすのが代表的かつ特徴的な副作用です。予防には1日3L以上の輸液、頻回排尿、解毒薬メスナ(2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム)の併用が重要で、看護師は尿量・尿色・排尿時痛を綿密に観察します。他の副作用として骨髄抑制・悪心嘔吐・脱毛・性腺機能低下・二次発がん・免疫抑制があり、若年患者には妊孕性温存の相談も必要です。緑内障・間質性肺炎・歯肉肥厚はそれぞれ異なる薬剤の副作用として有名で、薬剤ごとの特徴的副作用を区別して覚えることが抗がん剤看護と国試対策の両方で重要となります。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:シクロホスファミドを投与している患者で注意が必要なのはどれか。
解説:正解は 4 です。シクロホスファミドはアルキル化薬に属する抗がん剤で、乳がん・悪性リンパ腫・白血病などのほか自己免疫疾患にも用いられる。肝臓で代謝されて生じる代謝産物『アクロレイン』が尿中に排出される際に膀胱粘膜を強く刺激し、出血性膀胱炎を引き起こす。血尿・頻尿・排尿時痛などが出現するため、予防には十分な水分摂取と強制利尿、必要に応じて解毒薬メスナ(2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム)の併用が行われる。膀胱内にアクロレインが長時間停滞することが発症の最大要因である。
選択肢考察
-
× 1. 緑内障(glaucoma)
緑内障はシクロホスファミドの代表的副作用ではない。緑内障に注意が必要なのはアトロピンやステロイドなどで、シクロホスファミドとは関連が低い。
-
× 2. 間質性肺炎(interstitial pneumonia)
間質性肺炎は他の抗がん剤(ブレオマイシン、メトトレキサート、ゲフィチニブなど)で注意される副作用。シクロホスファミドでも稀に報告はあるが、代表的・頻度の高い副作用とはいえない。
-
× 3. 歯肉の肥厚
歯肉肥厚はフェニトイン(抗てんかん薬)、ニフェジピン(カルシウム拮抗薬)、シクロスポリン(免疫抑制薬)などの代表的副作用。シクロホスファミドは歯肉肥厚を起こさない。
-
○ 4. 出血性膀胱炎(hemorrhagic cystitis)
シクロホスファミド代謝産物のアクロレインが膀胱粘膜を傷害して出血性膀胱炎を起こす。予防には大量輸液、頻回排尿、解毒薬メスナの併用が有効で、看護として水分摂取励行と排尿状況・尿色の観察が重要となる。
シクロホスファミドは代表的なアルキル化薬で、乳がん・肺小細胞がん・悪性リンパ腫・白血病・多発性骨髄腫などに広く使われる。副作用は骨髄抑制(白血球減少・血小板減少)、悪心嘔吐、脱毛、出血性膀胱炎、性腺機能低下による不妊、二次発がん、免疫抑制など多岐にわたる。出血性膀胱炎予防にはメスナ併用・1日3L以上の輸液・頻回排尿・夜間も排尿を促すことなどが行われる。アルキル化薬は抗がん剤分類上、白金製剤(シスプラチンなど)・代謝拮抗薬(メトトレキサートなど)・植物アルカロイド(ビンクリスチンなど)・抗腫瘍抗生物質(ブレオマイシンなど)と並ぶ主要グループで、それぞれ特徴的副作用がある。
シクロホスファミドの代表的副作用である出血性膀胱炎を問う問題。代謝産物アクロレインによる膀胱粘膜障害と予防策(メスナ・大量輸液)が要点。
「がん看護」の関連記事
-
乳房温存療法の放射線治療——マーキングはなぜ必要?
乳房温存療法における放射線治療の特徴と副作用、患者教育内容を問う問題。マーキングの意義と外部照射の被曝特性を…
114回
-
がん患者を蝕む「悪液質」の正体
がん悪液質を「単なる低栄養」ではなく「代謝異常を背景とした骨格筋減少を主体とする多因子性症候群」と理解し、そ…
114回
-
造血幹細胞移植の前処置!全身放射線照射が果たす2つの使命
造血幹細胞移植の前処置(TBI)の目的は、患者の免疫を抑えて拒絶を防ぐことと、残存腫瘍細胞を根絶することの二点。…
114回
-
がん性疼痛評価の定番NRSを押さえよう
疼痛評価スケールの種類と特徴、とくに「数値で回答する=NRS」であることを正確に識別できるかを問う問題です。
113回
-
上大静脈症候群を見抜こう
顔面浮腫の鑑別として、全身性浮腫(低蛋白・心不全・腎不全)と局所性浮腫(静脈・リンパ還流障害)を区別し、CT所…
113回