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臨死期の身体変化を見逃さない─看取りの徴候を整理する

看護師国家試験 第112回 午前 第36問 / 成人看護学 / 終末期看護

国試問題にチャレンジ

112回 午前 第36問

臨死期の身体的変化はどれか。

  1. 1.尿量が増加する。
  2. 2.全身の筋肉が硬直する。
  3. 3.不規則な呼吸が出現する。
  4. 4.頸動脈が触れなくなった後、橈骨動脈が触れなくなる。

対話形式の解説

博士 博士

今日は臨死期の身体的変化の問題じゃ。臨死期とはどの時期を指すか分かるかな?

アユム アユム

亡くなる直前…数時間から数日前くらいですか?

博士 博士

おおむねその通り。死亡までの数時間から数日、身体機能が急速に低下する時期を指す。この時期に特徴的な変化を知っておくことは看取りケアで極めて重要じゃ。

アユム アユム

まず尿量はどうなりますか?

博士 博士

臨死期は心拍出量が低下し、腎血流量も減る。さらに経口摂取も減るので尿量は減少する。無尿に近づくことも多いぞ。

アユム アユム

じゃあ選択肢1の尿量増加は誤りですね。

博士 博士

そうじゃ。選択肢2の全身の筋肉硬直は『死後硬直』のことで、これは臨死期ではなく死後2〜3時間頃から始まる現象じゃ。

アユム アユム

臨死期の筋肉はどうなるんですか?

博士 博士

むしろ弛緩する。顎が下がって下顎呼吸になったり、括約筋が緩んで失禁することもあるのじゃ。

アユム アユム

不規則な呼吸というのはどんな呼吸ですか?

博士 博士

代表例はチェーン・ストークス呼吸。深い呼吸と浅い呼吸を周期的に繰り返し、無呼吸期間を挟む。ほかに下顎呼吸は顎をガクガク動かして呼吸する状態、鼻翼呼吸は鼻翼がピクピク動く呼吸じゃ。

アユム アユム

死前喘鳴もありますよね?

博士 博士

よう覚えたな。死前喘鳴は咽頭や気管に分泌物が貯留して呼吸時にゴロゴロと音が鳴る状態。患者本人の苦痛は少ないとされるが、家族には辛く映るので、事前説明と側臥位への体位変更、必要なら抗コリン薬で分泌を減らすケアを行うぞ。

アユム アユム

選択肢4の動脈の触知順序はどうなるんですか?

博士 博士

血圧が下がると末梢側から触れなくなる。橈骨動脈が最初、次に大腿動脈、最後に頸動脈の順じゃ。選択肢は逆になっておるから誤り。

アユム アユム

触知できる血圧の目安はありますか?

博士 博士

橈骨動脈が触知できれば収縮期血圧約80mmHg以上、大腿動脈なら約70mmHg以上、頸動脈なら約60mmHg以上の目安じゃ。

アユム アユム

なるほど、動脈触知で大まかな血圧が推定できるんですね。

博士 博士

その通り。臨死期は他にも意識レベル低下、四肢末梢のチアノーゼ・冷感・網状皮斑などが現れる。これらを総合的に観察するのが看取りケアの基本じゃ。

アユム アユム

家族への説明もこの知識があるとできますね。

博士 博士

そうじゃ。不規則な呼吸や死前喘鳴を見て家族が動揺することが多いから、事前に『こういう変化が起きます』と伝えておくことが大切なのじゃ。

POINT

臨死期には呼吸中枢の機能低下によりチェーン・ストークス呼吸、下顎呼吸、鼻翼呼吸、死前喘鳴といった不規則で努力性の呼吸が出現します。また心拍出量と腎血流量の低下により尿量は減少し、血圧低下に伴って橈骨動脈→大腿動脈→頸動脈の順で脈拍が触知できなくなります。全身の筋肉硬直は臨死期ではなく死後2〜3時間頃から始まる死後硬直の現象で、臨死期にはむしろ筋肉が弛緩します。これらの徴候を理解することは看護師にとって単なる知識ではなく、家族への予期的説明や穏やかな看取りを実現するための実践的な基盤となります。看取りのケアでは患者の安楽と家族の心理的支援を同時に行う視点が重要です。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:臨死期の身体的変化はどれか。

解説:正解は 3 です。臨死期には呼吸中枢の機能低下により、チェーン・ストークス呼吸、下顎呼吸、鼻翼呼吸、死前喘鳴といった不規則で努力性の呼吸パターンが出現する。これらは死が近づいた重要な徴候であり、家族への説明や看取りのケアの判断材料となる。

選択肢考察

  1. × 1.  尿量が増加する。

    臨死期は心拍出量低下と腎血流量減少により尿量は減少する。無尿に近づくこともある。経口摂取や飲水量の低下も相まって尿量は少なくなる。

  2. × 2.  全身の筋肉が硬直する。

    全身の筋肉硬直は臨死期ではなく死後2〜3時間ほどから始まる『死後硬直』の現象である。臨死期の筋肉はむしろ弛緩する。

  3. 3.  不規則な呼吸が出現する。

    臨死期にはチェーン・ストークス呼吸、下顎呼吸、鼻翼呼吸、死前喘鳴など不規則・努力性の呼吸が特徴的に現れる。

  4. × 4.  頸動脈が触れなくなった後、橈骨動脈が触れなくなる。

    血圧低下に伴い、末梢側の橈骨動脈から触知できなくなり、大腿動脈、最後に頸動脈の順で触知不能となる。選択肢は順序が逆である。

臨死期の徴候は『Signs of Impending Death』として整理されており、意識レベル低下・傾眠、下顎呼吸・死前喘鳴、四肢末梢のチアノーゼ・冷感・網状皮斑、尿量減少、血圧低下、脈拍微弱などが挙げられる。橈骨動脈の触知不能は収縮期血圧約80mmHg以下、大腿動脈は約70mmHg以下、頸動脈は約60mmHg以下の目安とされる。死前喘鳴は咽頭に分泌物が貯留して呼吸時にゴロゴロと音が鳴る状態で、患者本人の苦痛は少ないとされるが家族には大きな心理的負担となるため、事前の説明と体位工夫(側臥位)、抗コリン薬の使用などが考慮される。

臨死期の身体的変化(呼吸・循環・尿量・意識)と死後変化(死後硬直)を区別し、看取りのケアに必要な徴候を判別する問題。