レスキューを使いたくない患者さんに、看護師が最初にすべきこと
看護師国家試験 第114回 午前 第119問 / 成人看護学 / 終末期看護
国試問題にチャレンジ
<問118〜問120は同一の症例設定に基づきます。各問は前問までの状況を引き継いで解答してください。> 問118はこちら 次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(64歳、男性、外国籍)は、1年前に日本に移住し、娘(36歳、会社員)と娘の夫(42歳、会社員、日本人)と3人家族である。娘の夫は海外に長期出張中で、娘は日本語での簡単な日常会話はできるが、Aさんはほとんど日本語が理解できない。 Aさんは、2か月前から時々腰痛があり、市販薬で様子を見ていたが、徐々に腰痛が強くなり、娘に付き添われて受診した。検査の結果、肺癌(lung cancer)と診断され、胸膜と腰椎への転移が見つかり、疼痛コントロールの目的で入院した。 入院後、医療従事者との日常会話は、電子端末による翻訳を活用している。疼痛に対しては、モルヒネ徐放製剤の内服が開始され、レスキュードーズとして、モルヒネ速放製剤の内服が指示されている。激しい腰痛が1日に数回あるが、レスキュードーズを使いたくないと話し痛みを我慢している。 看護師の対応で優先度が高いのはどれか。
- 1.レスキュードーズを無理に使う必要はないことを伝える。
- 2.レスキュードーズを使いたくない理由を確認する。
- 3.レスキュードーズの使い方を説明する。
- 4.疼痛スケールの記載を勧める。
対話形式の解説
博士
今日はがん性疼痛のAさんじゃ。激しい腰痛が1日数回あるのに、レスキューを使いたくないと言って我慢しておる。どうする?
サクラ
痛みがあるなら使い方を説明して使ってもらえばいいんじゃないですか?
博士
気持ちはわかるが、それは早計じゃ。なぜ使いたくないか、理由を知らねば適切な支援はできん。
サクラ
どんな理由が考えられますか?
博士
いっぱいあるぞ。①麻薬への恐怖(中毒になる、最後の手段)、②便秘・嘔気・眠気の副作用への不安、③「死期を早める」という誤解、④宗教的・文化的価値観、⑤操作方法が分からない、⑥医療者への遠慮、⑦言葉の壁、などじゃ。
サクラ
Aさんは外国籍ですから、文化的・言語的な背景もありそうですね。
博士
そう。「痛みは耐えるべきもの」と考える文化もあれば、麻薬に対する強い偏見がある国もある。理由を聞かないと見えてこんのじゃ。
サクラ
選択肢1の「無理に使う必要はない」と伝えるのは?
博士
それは1日数回も激痛がある状況では不適切。WHO方式がん疼痛治療の除痛目標に反する。痛みを我慢させるのは患者のQOLを大きく損なう。
サクラ
選択肢3の「使い方を説明する」は?
博士
使い方が分からないのが理由なら有効じゃが、依存への不安が理由なら効果がない。やはり理由確認の後じゃ。
サクラ
選択肢4の疼痛スケール記載は?
博士
疼痛評価は大事じゃが、拒否の理由が解決していない段階で勧めても、コントロールにはつながらん。
サクラ
だから優先度が高いのは2の「使いたくない理由を確認する」なんですね。
博士
その通り。理由がわかれば、誤解には心理教育、副作用への不安には予防策、文化的価値観には配慮、言葉の壁には医療通訳、というふうに対応を組み立てられる。
サクラ
そういえばモルヒネのレスキューって、ベースの1日量の何分の1でしたっけ?
博士
ベース1日総量の1/6が1回量の目安じゃ。突出痛には30分後の効果評価で追加もできる。
サクラ
副作用への対策も大事ですね。
博士
便秘は予防的に下剤を併用、嘔気は予防的に制吐薬、眠気は数日で耐性ができることが多い、と説明する。これらを伝えるだけでも不安が和らぐぞ。
サクラ
痛みを我慢させない看護こそが、緩和ケアの基本なんですね。
POINT
がん性疼痛に対するレスキュードーズを拒む患者への看護では、まず「使いたくない理由」を確認することが最優先となります。背景には麻薬中毒への恐怖、副作用への不安、「最後の手段」という誤解、宗教的・文化的価値観、操作方法の不明、医療者への遠慮、言葉の壁など多様な要因があり、理由を把握して初めて心理教育・副作用予防・文化的配慮・通訳活用といった個別的支援を組み立てられます。WHO方式がん疼痛治療法ではベース薬剤と突出痛へのレスキュー(ベース1日量の約1/6)を組み合わせ、5原則に基づいた除痛を目指すことが推奨されており、レスキューを我慢させたままでは目標達成は困難です。Aさんは外国籍であり、文化的・言語的背景にも目を向ける必要があり、医療通訳と協働しながら本人の語りを丁寧に引き出す姿勢が求められます。痛みを我慢させない看護は緩和ケアの根幹であり、患者の語りから始まる個別対応が、QOLを支える鍵となります。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:<問118〜問120は同一の症例設定に基づきます。各問は前問までの状況を引き継いで解答してください。> 問118はこちら 次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(64歳、男性、外国籍)は、1年前に日本に移住し、娘(36歳、会社員)と娘の夫(42歳、会社員、日本人)と3人家族である。娘の夫は海外に長期出張中で、娘は日本語での簡単な日常会話はできるが、Aさんはほとんど日本語が理解できない。 Aさんは、2か月前から時々腰痛があり、市販薬で様子を見ていたが、徐々に腰痛が強くなり、娘に付き添われて受診した。検査の結果、肺癌(lung cancer)と診断され、胸膜と腰椎への転移が見つかり、疼痛コントロールの目的で入院した。 入院後、医療従事者との日常会話は、電子端末による翻訳を活用している。疼痛に対しては、モルヒネ徐放製剤の内服が開始され、レスキュードーズとして、モルヒネ速放製剤の内服が指示されている。激しい腰痛が1日に数回あるが、レスキュードーズを使いたくないと話し痛みを我慢している。 看護師の対応で優先度が高いのはどれか。
解説:正解は 2 です。Aさんは1日数回の激しい腰痛があるにもかかわらず、レスキュードーズの使用を拒んで痛みを我慢しています。患者がレスキューを使いたがらない理由には、副作用への不安、依存・中毒への誤解、文化的・宗教的価値観、操作方法が分からない、痛みを訴えることへの遠慮、ステロイドや麻薬への偏見など多様な背景があります。理由がわからないまま使用を勧めても効果的な疼痛コントロールにはつながらないため、まず本人の語りを聞き、何が障害になっているかを明らかにすることが看護の出発点であり最優先となります。
選択肢考察
-
× 1. レスキュードーズを無理に使う必要はないことを伝える。
1日数回の激しい腰痛がコントロールできていない状況で、使用しない選択を肯定すると、十分な除痛が得られず生活の質が著しく低下する。WHO方式がん疼痛治療における除痛目標に反する不適切な対応である。
-
○ 2. レスキュードーズを使いたくない理由を確認する。
拒否の背景には依存への誤解、副作用への懸念、文化的価値観、操作方法の不明など多様な理由がある。理由を把握して初めて適切な情報提供や心理的支援、文化的配慮が可能になり、最優先の対応となる。
-
× 3. レスキュードーズの使い方を説明する。
拒否の理由が「使い方がわからない」なら有効だが、それ以外(依存への不安、文化的価値観など)が理由なら効果がない。理由確認の後に必要に応じて行うべき対応である。
-
× 4. 疼痛スケールの記載を勧める。
疼痛評価は重要だが、レスキューを拒んでいる理由が解決しない限り、評価しても疼痛コントロールには結びつかない。理由確認のあとに行う支援としては有効でも、現時点での最優先ではない。
WHO方式がん疼痛治療法では、①経口的に、②時刻を決めて規則正しく、③除痛ラダーに沿って、④患者ごとの個別量で、⑤細かい配慮を持って、の5原則のもと、ベース薬剤(徐放製剤)と突出痛に対するレスキュー(速放製剤)を組み合わせる。レスキューはベース1日量の1/6を1回量とするのが目安。患者がオピオイドを拒む背景には、①麻薬中毒への恐怖、②便秘・嘔気・眠気などの副作用懸念、③「最後の手段」「死期を早める」といった誤解、④宗教的・文化的価値観、⑤医療者への遠慮や言葉の壁、などがある。看護師はこれらを丁寧に把握し、心理教育・副作用予防・文化的配慮を行い、QOLを保つ疼痛コントロールを支援する。
がん性疼痛のレスキュードーズを拒む患者への看護で、まず拒否理由を聞き取ることが最優先となる理由を理解する問題。
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