胸腺腫と重症筋無力症の関係を理解しよう
看護師国家試験 第107回 午前 第71問 / 成人看護学 / 血液・免疫系
国試問題にチャレンジ
胸腺腫( thymoma )に合併する疾患で多くみられるのはどれか。
- 1.Parkinson< パーキンソン >病( Parkinson disease )
- 2.筋ジストロフィー( muscular dystrophy )
- 3.重症筋無力症( myasthenia gravis )
- 4.多発性硬化症( multiple sclerosis )
- 5.多発性筋炎( polymyositis )
対話形式の解説
博士
今日は胸腺腫に合併しやすい疾患についての問題じゃ。
サクラ
胸腺ってあまり聞き慣れない臓器ですが、どこにあるんですか。
博士
胸骨の裏側、心臓の前にある前縦隔という場所にあるぞ。T細胞を育てる免疫の学校のような役割を持っておる。
サクラ
なるほど、T細胞の教育機関なんですね。では胸腺腫はそこにできる腫瘍ですか。
博士
その通り。胸腺上皮細胞から発生する腫瘍で、40〜60代に多いのじゃ。
サクラ
胸腺腫は自己免疫疾患を合併しやすいと聞いたことがあります。
博士
よく知っておるな。特に重症筋無力症の合併は有名で、胸腺腫患者の2〜3割に認められるぞ。
サクラ
重症筋無力症ってどんな病気でしたっけ。
博士
神経と筋肉のつなぎ目、神経筋接合部にあるアセチルコリン受容体に対する自己抗体ができてしまう病気じゃ。神経の指令が筋肉に伝わりにくくなる。
サクラ
症状としては筋力低下や眼瞼下垂、複視などが出るんですよね。
博士
そうじゃ。特に夕方になると症状が悪化する日内変動や、繰り返し動かすと疲れやすくなる易疲労性が特徴じゃ。
サクラ
逆に重症筋無力症の患者さんにも胸腺異常が多いと聞きました。
博士
その通り、重症筋無力症患者の約70%に胸腺過形成、10〜15%に胸腺腫がみられ、胸腺摘出術が有効な治療となる場合があるぞ。
サクラ
他の選択肢のパーキンソン病や多発性硬化症は神経系の病気ですが胸腺とは関係ないんですね。
博士
そうじゃ。筋ジストロフィーは遺伝性、多発性筋炎は筋肉自体の炎症で、いずれも胸腺腫との直接的関連はないのじゃ。
POINT
胸腺腫は前縦隔に発生する胸腺上皮由来の腫瘍で、自己免疫疾患の合併が多いことが臨床上重要です。なかでも重症筋無力症は最も代表的な合併症で、20〜30%の胸腺腫患者にみられます。胸腺はT細胞の成熟の場であり、その異常が自己反応性T細胞の排除不全を招くと考えられています。胸腺腫患者では重症筋無力症症状の有無を必ず確認し、逆に重症筋無力症患者では胸部CTで胸腺病変をチェックすることが臨床の基本となります。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:胸腺腫( thymoma )に合併する疾患で多くみられるのはどれか。
解説:正解は3です。胸腺は前縦隔の胸骨裏に位置し、T細胞の分化・成熟を担う免疫器官で、思春期に最大となった後、加齢に伴い脂肪組織に置き換わっていきます。胸腺腫はこの胸腺上皮細胞から発生する腫瘍で、中年以降に好発します。胸腺腫の最大の特徴は自己免疫疾患を合併しやすい点であり、なかでも重症筋無力症の合併頻度が高く、およそ20〜30%の胸腺腫患者に併発するとされています。これは胸腺内で自己反応性T細胞の選択異常が起こり、アセチルコリン受容体に対する自己抗体(抗AChR抗体)が産生されることによると考えられています。逆に重症筋無力症患者の側から見ても、約70%に胸腺過形成、10〜15%に胸腺腫が認められ、胸腺摘出術が治療選択肢の一つとなります。
選択肢考察
-
× 1. Parkinson< パーキンソン >病( Parkinson disease )
中脳黒質のドパミン神経細胞の変性により振戦・筋強剛・無動・姿勢反射障害をきたす神経変性疾患で、胸腺とは無関係です。
-
× 2. 筋ジストロフィー( muscular dystrophy )
ジストロフィンなど筋構造蛋白をコードする遺伝子の変異による遺伝性筋疾患で、自己免疫機序ではなく胸腺腫との関連は認められません。
-
○ 3. 重症筋無力症( myasthenia gravis )
神経筋接合部のアセチルコリン受容体に対する自己抗体により筋力低下と易疲労性をきたす自己免疫疾患で、胸腺腫の代表的合併症です。
-
× 4. 多発性硬化症( multiple sclerosis )
中枢神経の髄鞘に対する自己免疫反応による脱髄疾患で、時間的・空間的多発を特徴としますが胸腺腫との関連性はありません。
-
× 5. 多発性筋炎( polymyositis )
骨格筋への自己免疫性炎症で四肢近位筋の筋力低下をきたす膠原病です。間質性肺炎や悪性腫瘍を合併しやすいですが、胸腺腫との典型的関連はありません。
胸腺腫に合併する自己免疫疾患としては、重症筋無力症のほか、赤芽球癆、低ガンマグロブリン血症(Good症候群)、SLEなどが知られています。胸腺腫の病期分類には正岡分類が用いられ、被膜浸潤の程度で重症度が決まります。覚え方として「胸腺=T細胞の学校→免疫の異常=自己免疫→筋無力症」と連想するとよいでしょう。
胸腺腫に高頻度で合併する自己免疫疾患を問う基本問題。胸腺と免疫の関係から重症筋無力症を導けるかがポイントです。
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