プレドニゾロン60mg開始!副作用をどう説明する?
看護師国家試験 第106回 午後 第118問 / 成人看護学 / 血液・免疫系
国試問題にチャレンジ
Aさん(32歳、女性)は、営業で外出の多い業務を担当している。1か月前から発熱、倦怠感、関節痛および顔面の紅斑が出現し、近くの医療機関を受診したところ全身性エリテマトーデス〈SLE( systemic lupus erythematosus )〉と診断され治療目的で入院した。入院時所見は身長160cm、体重55kg。血圧142/80mmHg。血液検査データは、白血球4,400/μL、血小板17.5万/μL、Hb12.5g/dL、クレアチニン2.5mg/dL、抗核抗体は陽性であった。 Aさんはプレドニゾロン60mg/日のステロイド治療が開始となった。 Aさんへの説明で適切なのはどれか。
- 1.「食事の制限はありません」
- 2.「倦怠感が強いときは薬の中止を検討します」
- 3.「薬の影響で気分が大きく変動するかもしれません」
- 4.「職場復帰に備えて天気の良い日は散歩しましょう」
- 5.「治療で病状が改善すると抗核抗体が陰性になります」
対話形式の解説
博士
SLEのAさんにプレドニゾロン60mg/日の治療が始まる。高用量ステロイド治療じゃから、副作用の説明がとても重要じゃ。
アユム
ステロイドの副作用っていっぱいありますよね…どれを優先して伝えますか?
博士
まず副作用を全部列挙してみよう。代表的なのは感染症、糖尿病、骨粗鬆症、高血圧、脂質異常、消化性潰瘍、白内障、精神症状、満月様顔貌、中心性肥満、副腎抑制…
アユム
多すぎて覚えきれません!
博士
全てを一度に伝える必要はないが、患者の不安に直結するものを事前に話すのは大事じゃ。特に精神症状は見逃されやすい。
アユム
選択肢3の『気分が大きく変動するかもしれません』が正解ですか?
博士
その通り。高用量ステロイドは多幸感、不眠、抑うつ、躁状態、ステロイド精神病などの精神症状を起こしうる。事前に説明することで患者が気づきやすくなり、不安も軽減する。
アユム
患者さんが『薬のせいで気分がおかしい』と気づけることは重要ですね。
博士
うむ。対応としては減量や中止の検討が必要になるが、これは医師判断じゃ。
アユム
選択肢1の『食事制限なし』は?
博士
これはダメじゃ。ステロイドは食欲亢進、体重増加、耐糖能異常を起こすから食事管理は必要。しかもAさんは腎機能低下もあるから低蛋白・減塩・カリウム制限も必要じゃ。
アユム
選択肢2の『倦怠感が強いときは中止』は?
博士
これは危険。ステロイドを急に止めるとステロイド離脱症候群が起こり、血圧低下、悪心、倦怠感、ショックになりうる。また原疾患の再燃も起こる。中止や減量は必ず医師の指示じゃ。
アユム
なぜ離脱症候群が起こるんですか?
博士
長期使用で内因性の副腎皮質ホルモン分泌が抑制される。そこに外からの補充(ステロイド薬)を急に切ると、内因性ホルモンが出ないから副腎不全になるのじゃ。
アユム
選択肢4の『天気の良い日は散歩』は?
博士
SLEは光線過敏が特徴で、紫外線暴露は蝶形紅斑や全身症状の悪化要因じゃ。屋外活動は日焼け止め、帽子、日傘、長袖で十分な紫外線対策が必要。Aさんは営業で外出が多い仕事じゃから特に注意じゃな。
アユム
選択肢5の『治療で抗核抗体が陰性になる』は?
博士
抗核抗体は病状と直接対応せず、症状が寛解しても陽性のまま持続することが多い。治療効果の指標は抗ds-DNA抗体価や補体(C3、C4)、臨床症状じゃ。
アユム
抗核抗体は診断時に陽性確認する、という使い方ですね。
博士
その通り。それと治療モニタリングには抗ds-DNA抗体や補体低下を使う。病勢と相関するからの。
アユム
ステロイド治療って副作用も多いけど、SLE治療の主軸なんですね。
博士
うむ。寛解導入では高用量から始め、症状改善とともに徐々に減量、維持療法に移行する。ベリムマブ、ミコフェノール酸モフェチル、シクロホスファミド、タクロリムス、ヒドロキシクロロキンなどと併用することもある。
アユム
感染予防、骨粗鬆症予防、血糖管理、精神症状モニタリング…看護師の役割も多いですね。
博士
そう、包括的な観察と患者教育が求められる。特にSLEは若い女性に多い慢性疾患じゃから、妊娠・出産・就労・心理面のサポートまで含めた長期的な関わりが重要じゃ。
アユム
ステロイド治療は副作用を含めて全体像で支えるんですね。
POINT
プレドニゾロン高用量治療では精神症状(不眠・多幸感・抑うつ・ステロイド精神病)が出現しうるため事前説明が重要です。急な自己中断はステロイド離脱症候群や原疾患再燃を招くため禁忌で、減量は必ず医師指示に従います。SLEは光線過敏が特徴で紫外線対策が欠かせず、抗核抗体は治療で陰性化するとは限らず治療モニタリングには抗ds-DNA抗体や補体を用います。感染・糖尿病・骨粗鬆症・高血圧・消化性潰瘍など多彩な副作用を管理し、食事指導や生活指導を含む包括的なケアが看護の核となります。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:Aさん(32歳、女性)は、営業で外出の多い業務を担当している。1か月前から発熱、倦怠感、関節痛および顔面の紅斑が出現し、近くの医療機関を受診したところ全身性エリテマトーデス〈SLE( systemic lupus erythematosus )〉と診断され治療目的で入院した。入院時所見は身長160cm、体重55kg。血圧142/80mmHg。血液検査データは、白血球4,400/μL、血小板17.5万/μL、Hb12.5g/dL、クレアチニン2.5mg/dL、抗核抗体は陽性であった。 Aさんはプレドニゾロン60mg/日のステロイド治療が開始となった。 Aさんへの説明で適切なのはどれか。
解説:正解は3です。プレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイドには多彩な副作用があり、中枢神経系への作用として不眠、多幸感、抑うつ、不安、気分変動、精神症状(せん妄、躁・うつ状態)などの精神症状(ステロイド精神病)が出現しうることを事前に説明しておくのが適切です。急な自己中断はステロイド離脱症候群を招くため禁忌、SLEでは光線過敏で日光曝露は悪化要因、治療で抗核抗体が必ず陰性化するわけではない、ステロイドによる食欲亢進や体重増加・骨粗鬆症予防のため食事管理は必要、という点を総合的に押さえます。
選択肢考察
-
× 1. 「食事の制限はありません」
ステロイドは食欲亢進・体重増加・耐糖能異常・骨粗鬆症・高血圧・脂質異常症などを招く。また腎機能低下があるため低蛋白・減塩・カリウム制限も必要で、食事制限は必要。
-
× 2. 「倦怠感が強いときは薬の中止を検討します」
ステロイドの急な自己中断はステロイド離脱症候群(血圧低下、悪心、倦怠感、ショック)や原疾患の再燃を招く。中止・減量は必ず医師の指示に基づいて行う。
-
○ 3. 「薬の影響で気分が大きく変動するかもしれません」
プレドニゾロン高用量(60mg/日)は不眠、多幸感、抑うつ、躁状態、ステロイド精神病などの精神症状を起こしうる。事前に説明することで患者の不安軽減や早期発見につながる。
-
× 4. 「職場復帰に備えて天気の良い日は散歩しましょう」
SLEは光線過敏が特徴で、紫外線曝露は蝶形紅斑や全身症状の悪化要因となる。屋外活動は日焼け止め・帽子・日傘・長袖など十分な紫外線対策のうえで行う必要がある。
-
× 5. 「治療で病状が改善すると抗核抗体が陰性になります」
抗核抗体は病状改善とは直接対応せず、治療で症状が寛解しても抗体価は陽性のまま持続することが多い。治療効果の指標は抗ds-DNA抗体価や補体、臨床症状を総合的に評価する。
ステロイドの主な副作用:感染症(易感染)、糖尿病、骨粗鬆症、高血圧、脂質異常、消化性潰瘍、白内障・緑内障、不眠・精神症状、Cushing様症状(満月様顔貌・中心性肥満・バッファローハンプ)、皮膚菲薄化、創傷治癒遅延、副腎抑制、筋力低下など。対応として、感染予防、血糖管理、骨粗鬆症予防(ビスホスホネート、Ca・VitD)、胃酸抑制薬、眼科フォロー、精神症状モニタリング、自己中断禁止の指導が重要。SLE治療は寛解導入→維持療法と段階的に減量し、生物学的製剤(ベリムマブなど)や免疫抑制薬を併用することもある。
高用量ステロイド治療開始時の患者説明として、副作用(特に精神症状)、自己中断禁止、光線過敏、食事管理などを総合的に理解しているかを問う問題。
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