スプーンのような爪が語るもの 鉄欠乏性貧血を視診から見抜く
看護師国家試験 第109回 午前 第47問 / 成人看護学 / 血液・免疫系
国試問題にチャレンジ
貧血〈 anemia 〉を伴う患者の爪の写真を別に示す。欠乏している栄養素はどれか。
- 1.ビタミンB 12
- 2.ビタミンC
- 3.葉酸
- 4.鉄
対話形式の解説
博士
今日は写真問題じゃ。貧血患者の爪が写っておるが、残念ながら我らはその画像を直接確認できん。そこで設問と選択肢から何を問うているか推理してみよう。
サクラ
選択肢はビタミンB12、ビタミンC、葉酸、鉄ですね。貧血と関連する栄養素ばかりです。
博士
その通り。爪の写真と書かれているから、貧血の爪所見の代表である『匙状爪』、別名スプーンネイルやコイロニキアを写していると考えるのが自然じゃ。
サクラ
匙状爪とは、爪の真ん中がへこんでスプーンみたいに反り返っている状態ですよね。
博士
うむ。慢性的な鉄欠乏で爪甲が薄く脆くなり、先端が外側に反り返る。鉄欠乏性貧血に特徴的な身体所見じゃ。
サクラ
なぜ鉄が足りないとそうなるんですか?
博士
鉄はヘモグロビンのヘム合成だけでなく、爪・髪・舌などのターンオーバーが速い組織にも重要じゃ。不足すると爪の角質形成が不十分になり変形するのじゃ。
サクラ
他にどんな症状が出ますか?
博士
舌乳頭萎縮によるツルツル舌、口角炎、嚥下障害を伴うプランマー・ヴィンソン症候群、氷をガリガリ食べたくなる氷食症、易疲労、蒼白、労作時息切れ、動悸などじゃ。
サクラ
ビタミンB12や葉酸の欠乏は別の貧血ですよね?
博士
そう、どちらも巨赤芽球性貧血を起こす。B12は胃切除後やPernicious Anemia、葉酸は野菜不足や妊娠・アルコール多飲で不足しやすい。どちらも大球性貧血でMCVが高くなるのが特徴じゃ。
サクラ
ビタミンCは?
博士
欠乏すれば壊血病を起こし、歯肉出血や創傷治癒遅延が出る。爪変形の主因ではないが、鉄吸収を助けるので鉄剤と併用すると効果的じゃ。
サクラ
鉄欠乏性貧血の検査所見はどうなりますか?
博士
小球性低色素性でMCV↓、血清鉄↓、フェリチン↓、TIBC↑じゃ。フェリチンが低ければ鉄欠乏の確定、炎症下では評価が難しい点に注意じゃ。
サクラ
原因にはどんなものがありますか?
博士
女性なら月経過多や妊娠・授乳、男性や閉経後女性では消化管出血を必ず疑う。便潜血検査や内視鏡検査が鍵となる。
サクラ
看護として大事なポイントは?
博士
鉄剤の内服指導じゃ。空腹時が吸収良好じゃが胃腸症状が出やすければ食後でも可。茶やコーヒーのタンニンは吸収を阻害するから時間を空けるように伝える。黒色便は正常な変化だと説明し安心させることも大切じゃ。
サクラ
爪の所見ひとつから全身状態まで想像する力が必要なんですね。
博士
うむ。看護師は視診と問診の達人であるべし。普段から爪・舌・眼瞼結膜を観る習慣をつけるのじゃ。
POINT
写真の爪は匙状爪(スプーンネイル)で、慢性的な鉄欠乏性貧血に特徴的な身体所見である。鉄はヘム合成だけでなくターンオーバーの速い組織にも必要で、不足すると爪甲が脆くなり先端が反り返る。ビタミンB12や葉酸欠乏は巨赤芽球性貧血、ビタミンC欠乏は壊血病を起こすが、匙状爪の主因ではない。看護では鉄剤の服薬指導(吸収促進と副作用説明)、原因検索(月経過多・消化管出血など)、食事指導を行い、爪・舌・眼瞼結膜の視診から全身の栄養状態を読み取る観察力を磨くことが重要である。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:貧血〈 anemia 〉を伴う患者の爪の写真を別に示す。欠乏している栄養素はどれか。
解説:正解は 4 です。写真は実際の画像を確認できないが、設問文から『貧血患者の特徴的な爪所見』であり、選択肢と文脈から中央が陥凹してスプーンのように反り返った『匙状爪(スプーンネイル、コイロニキア)』を示していると判断できる。匙状爪は慢性的な鉄欠乏による爪甲の脆弱化が原因で、鉄欠乏性貧血の代表的な身体所見である。鉄はヘモグロビンのヘム合成に必須であり、不足すると小球性低色素性貧血となる。爪の変化に加えて舌炎・口角炎・嚥下困難(Plummer-Vinson症候群)、氷食症、易疲労、蒼白、動悸、労作時息切れなどを伴うことがある。
選択肢考察
-
× 1. ビタミンB 12
ビタミンB12欠乏は巨赤芽球性貧血(悪性貧血)の原因で、大球性貧血、ハンター舌炎、亜急性連合性脊髄変性症などを起こすが匙状爪はきたさない。
-
× 2. ビタミンC
ビタミンC欠乏は壊血病を起こし、歯肉出血・点状出血・創傷治癒遅延が特徴。鉄の吸収補助には重要だが匙状爪の直接の原因ではない。
-
× 3. 葉酸
葉酸欠乏もビタミンB12同様に巨赤芽球性貧血を起こすが、匙状爪の典型的原因ではない。妊婦では神経管閉鎖障害予防のための摂取が重要。
-
○ 4. 鉄
鉄欠乏による小球性低色素性貧血では、ヘモグロビン低下に加え爪の脆弱化で匙状爪、舌乳頭萎縮、口角炎、嚥下障害、氷食症などの症状が出現する。
画像を視認できない設問だが、鉄欠乏性貧血の古典的身体所見として匙状爪はほぼ必出。血液検査ではHb↓、MCV↓、MCH↓、血清鉄↓、フェリチン↓、TIBC↑、トランスフェリン飽和度↓が特徴。原因は女性では月経過多や妊娠・授乳、男性や閉経後女性では消化管出血を必ず疑い、便潜血・内視鏡検査を行う。治療は鉄剤内服(クエン酸第一鉄など)が基本で、空腹時が吸収良好だが消化器症状が出やすく食後投与も許容。ビタミンCは吸収を促進し、タンニン(茶・コーヒー)やカルシウムは吸収を阻害するため服薬指導に含める。
鉄欠乏性貧血に特徴的な匙状爪(スプーンネイル)を視覚情報から読み取り、原因栄養素を結びつける問題。
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