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AIDSはどう診断するか ニューモシスチス肺炎が語る免疫破綻のサイン

看護師国家試験 第109回 午前 第45問 / 成人看護学 / 血液・免疫系

国試問題にチャレンジ

109回 午前 第45問

ヒト免疫不全ウイルス〈 HIV 〉に感染している患者で、後天性免疫不全症候群( acquired immunodeficiency syndrome )〈 AIDS 〉の状態にあると判断できる疾患はどれか。

  1. 1.季節性インフルエンザ( seasonal influenza )
  2. 2.ニューモシスチス肺炎( pneumocystis pneumonia )
  3. 3.ノロウイルス性腸炎( norovirus enteritis )
  4. 4.単純性膀胱炎( uncomplicated cystitis )

対話形式の解説

博士 博士

今日はHIV感染者におけるAIDSの診断について学ぶぞ。HIVに感染した人はみなAIDSと呼ぶわけではないのじゃ。

サクラ サクラ

えっ、そうなんですか?てっきりHIV陽性=AIDSだと思っていました。

博士 博士

そこが大事な点じゃ。HIVは病原体、AIDSはその結果起こる『病態』を指す。厚労省が定めた23項目の指標疾患を発症したとき初めてAIDSと診断される。

サクラ サクラ

23項目もあるんですね。どんな病気が含まれますか?

博士 博士

真菌症、原虫症、ウイルス感染症、細菌感染症、腫瘍、その他の6群に分かれておる。カンジダ症、クリプトコッカス髄膜炎、ニューモシスチス肺炎、トキソプラズマ脳症、サイトメガロウイルス網膜炎、カポジ肉腫、非ホジキンリンパ腫、HIV脳症などが代表じゃ。

サクラ サクラ

選択肢にあるニューモシスチス肺炎、いわゆる昔でいうカリニ肺炎ですね?

博士 博士

その通り。Pneumocystis jirovecii という真菌による日和見感染症で、CD4陽性T細胞が200/μL未満になると発症しやすい。日本のAIDS発症契機としても最も頻度が高いのじゃ。

サクラ サクラ

症状はどんな感じでしょう?

博士 博士

乾性咳嗽、呼吸困難、発熱が亜急性に進行し、胸部X線や高分解能CTでびまん性のすりガラス陰影を呈する。重症化すれば高度低酸素血症となるから、SpO2と呼吸状態の観察が重要じゃ。

サクラ サクラ

他の選択肢、インフルエンザやノロウイルス腸炎、単純性膀胱炎はどうでしょう?

博士 博士

いずれも免疫正常者でも起こる日常的な感染症で、指標疾患には含まれない。ただしHIV感染者では重症化しやすいから注意は必要じゃ。

サクラ サクラ

CD4数で病状の進行がわかるんですよね?

博士 博士

うむ。正常は800〜1200/μL、500未満で帯状疱疹や口腔カンジダ、200未満でニューモシスチス肺炎、100未満でCMV網膜炎やトキソプラズマ脳症、50未満で非結核性抗酸菌症が出やすい。

サクラ サクラ

治療はどのように進みますか?

博士 博士

現在は抗レトロウイルス療法、ARVを複数組み合わせて用いる。CD4数を維持すればAIDS発症を予防でき、予後も大きく改善しておる。

サクラ サクラ

看護で大切なことは何でしょう?

博士 博士

服薬継続の支援、機会感染の早期発見、守秘義務とプライバシー保護、差別・偏見への配慮じゃ。HIVは標準予防策で十分対応でき、必要以上に隔離する病気ではないことを理解しておくのじゃ。

サクラ サクラ

早期発見と治療継続が鍵なんですね。

博士 博士

まさに。検査の敷居を下げ、正しい知識を広めることが公衆衛生としても大切な課題じゃ。

POINT

AIDSはHIV感染に加えて23項目の指標疾患のいずれかを発症した状態と定義され、ニューモシスチス肺炎は日本で最も頻度の高い発症契機となる代表的日和見感染症である。CD4陽性T細胞数は病期と日和見感染の種類を予測する最重要指標で、200/μL未満でニューモシスチス肺炎リスクが顕著に高まる。現代は抗レトロウイルス療法によりAIDS発症を予防し長期予後を改善できるようになり、早期検査と服薬継続支援が鍵となる。看護では標準予防策の徹底と同時に、守秘義務・差別防止・心理的支援を含む包括的ケアが求められる。

解答・解説

正解は 2 です

問題文:ヒト免疫不全ウイルス〈 HIV 〉に感染している患者で、後天性免疫不全症候群( acquired immunodeficiency syndrome )〈 AIDS 〉の状態にあると判断できる疾患はどれか。

解説:正解は 2 です。AIDSはHIV感染によりCD4陽性T細胞が減少し、細胞性免疫が低下して日和見感染症や悪性腫瘍を発症した状態を指す。日本の厚生労働省基準では、HIV感染に加え23項目の指標疾患(indicator disease)のいずれかを発症した場合にAIDSと診断する。23項目はカンジダ症・クリプトコッカス症・ニューモシスチス肺炎などの真菌症、トキソプラズマ脳症などの原虫症、サイトメガロウイルス感染症などのウイルス感染症、非結核性抗酸菌症などの細菌感染症、カポジ肉腫・非ホジキンリンパ腫などの腫瘍、HIV脳症・消耗性症候群などその他に分類される。ニューモシスチス肺炎(旧称カリニ肺炎)はこの指標疾患の代表格であり、AIDSを疑う最も重要な日和見感染症である。

選択肢考察

  1. × 1.  季節性インフルエンザ( seasonal influenza )

    インフルエンザウイルスによる一般的な呼吸器感染症で、免疫正常者にも発症するためAIDS指標疾患ではない。

  2. 2.  ニューモシスチス肺炎( pneumocystis pneumonia )

    真菌Pneumocystis jiroveciiによる日和見感染症で、CD4数が200/μL未満に低下した免疫抑制状態で発症する。AIDS指標疾患の代表であり、日本でもHIV感染者のAIDS発症契機として最多である。

  3. × 3.  ノロウイルス性腸炎( norovirus enteritis )

    食中毒・感染性胃腸炎の原因で免疫正常者にも広く発症し、AIDS指標疾患に含まれない。

  4. × 4.  単純性膀胱炎( uncomplicated cystitis )

    大腸菌などによる一般的な尿路感染症で、AIDS診断の指標にはならない。

CD4数はHIV感染症の進行度を示す最重要指標で、正常は800〜1200/μL程度。500/μL未満で帯状疱疹や口腔カンジダ症、200/μL未満でニューモシスチス肺炎、100/μL未満でサイトメガロウイルス網膜炎やトキソプラズマ脳症、50/μL未満で非結核性抗酸菌症などが出現しやすい。現代ではARV(抗レトロウイルス療法)によりCD4数を維持できればAIDS発症を予防でき、予後は大きく改善している。早期発見・早期治療が重要で、検査へのアクセスと差別・偏見への配慮が看護の課題となる。

AIDS診断基準である23の指標疾患の代表として、ニューモシスチス肺炎を押さえているかを問う。