ホルモン負荷試験のしくみ——『どこが壊れているか』を見破る検査
看護師国家試験 第106回 午前 第52問 / 成人看護学 / 内部環境と内分泌系
国試問題にチャレンジ
ホルモン負荷試験について正しいのはどれか。
- 1.ホルモン分泌異常を生じている部位の推定に用いる。
- 2.分泌異常が疑われるホルモンを投与する。
- 3.前日の夕食から禁食にする。
- 4.入院が必要である。
対話形式の解説
博士
今日は内分泌疾患でよく使われるホルモン負荷試験を学ぶぞ。内分泌疾患ではホルモンを1回測っただけでは判断が難しいことが多いんじゃ。
アユム
なぜ1回の測定だけではダメなんですか?
博士
ホルモンは日内変動やストレスで大きく上下する。さらに、値が低いからといって必ずしもその内分泌腺自体が悪いとは限らんのじゃ。
アユム
というと、どういうことでしょう?
博士
たとえば甲状腺ホルモンが低い場合、甲状腺そのものが悪い一次性甲状腺機能低下症か、下垂体のTSH分泌が悪い二次性か、視床下部のTRH分泌が悪い三次性かで治療も予後も違うんじゃ。
アユム
なるほど。だから『どこに原因があるか』を突き止める必要があるんですね。
博士
そこで登場するのが負荷試験。上位ホルモンを投与してみて、下位の反応をみれば、どのレベルでブロックされているかがわかる。
アユム
上位ホルモン、というのは『視床下部→下垂体→末梢腺』の上流のホルモンということですか?
博士
その通りじゃ。たとえば下垂体機能を調べたければTRHやCRH、GnRHといった視床下部ホルモンを投与して下垂体ホルモンの反応をみる。これを刺激試験と呼ぶ。
アユム
逆に、過剰分泌を調べる試験もあるんですか?
博士
あるぞ。クッシング症候群を疑うときのデキサメタゾン抑制試験や、先端巨大症のOGTTなど、抑制試験と呼ばれるものじゃ。正常ならコルチゾールやGHが抑制されるはずが、腫瘍性に自律分泌していると抑制されないんじゃ。
アユム
選択肢2で『分泌異常が疑われるホルモンを投与する』とありましたが、これは間違いですね?
博士
その通り。投与するのはあくまで上位の調節因子じゃ。異常ホルモン本体を入れても何も評価できんし、病態も悪化しかねん。
アユム
検査の前の絶食や入院はどうなんでしょう?
博士
当日朝から絶食程度で済むものが多く、水分は可とする場合がほとんど。ほとんどは外来で2〜3時間の検査じゃ。ただしインスリン負荷試験のように低血糖を誘発するものは入院で行うこともある。
アユム
看護のポイントは何ですか?
博士
採血時刻の厳守、副反応の観察、安静保持が基本。特にインスリン負荷では低血糖症状(発汗・動悸・意識障害)に備えてブドウ糖を準備しておくんじゃ。
アユム
仕組みがわかると、検査時の観察項目も納得です。
POINT
ホルモン負荷試験は、内分泌疾患における分泌異常の『局在』を明らかにするために行う検査で、上位の放出ホルモンや刺激/抑制物質を投与して標的ホルモンの反応を経時的に観察します。分泌不全を疑う刺激試験と過剰分泌を疑う抑制試験の2系統があり、TRH・CRH・GnRH負荷、デキサメタゾン抑制試験、OGTTなど多彩な検査が臨床で用いられます。多くは外来で2〜3時間程度、当日朝絶食で実施可能ですが、インスリン負荷試験など低血糖リスクを伴うものは入院管理が必要です。看護師は採血時刻の厳守、副反応の観察、結果の信頼性を担保するための体位・活動制限の説明など、検査精度を支える重要な役割を担います。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:ホルモン負荷試験について正しいのはどれか。
解説:正解は 1 です。ホルモン負荷試験(内分泌負荷試験)は、標的ホルモンの上位調節ホルモンや刺激/抑制物質を投与し、そのあとの血中ホルモン動態を経時的に追うことで、分泌異常が『視床下部・下垂体・末梢内分泌腺』のどの部位に由来するかを推定する検査である。分泌不全を調べる刺激試験と、分泌過剰を調べる抑制試験の2系統がある。
選択肢考察
-
○ 1. ホルモン分泌異常を生じている部位の推定に用いる。
下垂体−標的腺系(甲状腺、副腎、性腺など)のどのレベルで異常が起きているかを切り分けるための検査である。例えばGnRH負荷試験ではLH・FSHの反応から下垂体障害か視床下部障害かを鑑別する。
-
× 2. 分泌異常が疑われるホルモンを投与する。
投与するのはあくまで『上位の放出ホルモン』や刺激物質・抑制物質であり、異常が疑われるホルモンそのものではない。異常ホルモン自体を投与すると病態が悪化したり、反応の評価ができない。
-
× 3. 前日の夕食から禁食にする。
絶食の指示は検査項目により異なる。多くは当日朝からの絶食で水は可とする場合が多く、一律に前日夕食から禁食とするわけではない。検査の種類に応じた個別の前処置が必要である。
-
× 4. 入院が必要である。
多くの負荷試験は2〜3時間程度で終了し外来で実施可能である。複数項目を連続して行う場合や低血糖を誘発するインスリン負荷試験など有害事象リスクが高い試験では入院下で行われることもある。
代表的な負荷試験には、下垂体機能評価のTRH負荷(TSH・PRL反応)、CRH負荷(ACTH・コルチゾール反応)、GHRH負荷やGH分泌刺激試験(インスリン低血糖・アルギニン)、GnRH負荷(LH・FSH反応)、アジソン病を疑う際のACTH(迅速)試験、クッシング症候群を疑う際のデキサメタゾン抑制試験、先端巨大症を疑う際のOGTT(75gブドウ糖によるGH抑制)などがある。看護師は検査中の採血時刻の厳守、低血糖やフラッシュ症状などの副反応観察、検査体位の保持が重要である。
ホルモン負荷試験の目的(分泌異常の局在診断)と実施方法の原則(上位ホルモンを投与する/外来で可)を問う問題。
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