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糖尿病16年の会社員・Aさんの足のしびれ ― 3大合併症の『し・め・じ』

看護師国家試験 第109回 午前 第94問 / 成人看護学 / 内部環境と内分泌系

国試問題にチャレンジ

109回 午前 第94問

次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 56 歳、男性、会社員)は、デスクワークが多い仕事をしている。40 歳時の会社の健康診断で 2 型糖尿病( type 2 diabetes mellitus )と診断され、紹介されたクリニックで血糖降下薬を処方されて内服を継続していた。50 歳ころから視力の低下と持続性蛋白尿を指摘され、腎臓内科を受診し食事指導を受けた。しかし、仕事が忙しく食事指導の内容を守れていなかった。1 年前から、足のしびれが出現するようになった。 Aさんの現在の状況のアセスメントで適切なのはどれか。

  1. 1.緑内障( glaucoma )が疑われる。
  2. 2.運動療法が必要である。
  3. 3.糖尿病性神経障害( diabetic neuropathy )が疑われる。
  4. 4.高蛋白質の食事摂取が必要である。

対話形式の解説

博士 博士

今日はAさん56歳、会社員。糖尿病歴16年じゃ。最近足のしびれが出てきた。さて、アセスメントはどうじゃ?

アユム アユム

糖尿病の合併症…神経障害ですかね?

博士 博士

うむ。糖尿病の3大合併症といえば?

アユム アユム

神経障害、網膜症、腎症の3つです。『し・め・じ』で覚えました。

博士 博士

その通り!順番も発症しやすい順で『し(神経)』が一番早く、次に『め(目、網膜症)』、最後に『じ(腎症)』が来ることが多いのじゃ。

アユム アユム

Aさんは50歳から視力低下と蛋白尿があって、1年前からしびれ…。

博士 博士

順番が逆のようじゃが、最終的に3つとも揃っておる状態と見ることができる。足のしびれは両側遠位、対称性に出る感覚障害の典型じゃ。

アユム アユム

選択肢1の緑内障はどうなんでしょう。糖尿病で視力低下してるので気になります。

博士 博士

糖尿病の視力低下は網膜症が圧倒的に多い。重症化で血管新生緑内障を起こすことはあるが、足のしびれは眼疾患とは無関係じゃから除外じゃ。

アユム アユム

選択肢2の運動療法は?糖尿病といえば運動ですよね。

博士 博士

初期ならそうじゃ。しかしAさんは神経障害があれば転倒や足潰瘍のリスクがあるし、網膜症が進んでおれば眼底出血も起こしうる。腎症もあって運動強度は医師と相談せねばならん。『必要である』と断定するのは不適切じゃ。

アユム アユム

選択肢4の高蛋白食は明らかに違いますね。蛋白尿があるのに。

博士 博士

その通り。糖尿病性腎症では蛋白質制限が基本。進行度により0.6〜0.8 g/kg/日などに制限する。高蛋白食は糸球体内圧を上げ腎機能悪化を招く。

アユム アユム

神経障害の診断ってどうやるんですか?

博士 博士

振動覚(C128音叉)、アキレス腱反射の低下・消失、モノフィラメントによる触覚検査じゃな。自覚症状の問診と併せて評価する。

アユム アユム

自律神経障害もあるんですよね?

博士 博士

よい質問じゃ。起立性低血圧、便秘・下痢、勃起障害、無自覚性低血糖などがある。『神経障害=足のしびれだけ』ではないぞ。

アユム アユム

糖尿病の合併症は全身に及ぶんですね…。合併症予防のための血糖コントロールの重要性がわかりました。

POINT

糖尿病性神経障害は3大合併症(神経障害・網膜症・腎症)の中で最も早期に出現しやすく、高血糖による神経細胞の代謝異常と神経栄養血管障害により末梢神経・自律神経が障害されます。Aさんは糖尿病歴16年、視力低下(網膜症示唆)・持続性蛋白尿(腎症示唆)・足のしびれと、3大合併症すべてが揃ってきた状態と評価できます。運動療法や栄養療法は一律でなく合併症の病期に応じた個別対応が必要で、蛋白尿があるなら蛋白質制限が原則です。『し・め・じ』という語呂合わせとともに、各合併症の評価法・対応を整理しておきましょう。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 56 歳、男性、会社員)は、デスクワークが多い仕事をしている。40 歳時の会社の健康診断で 2 型糖尿病( type 2 diabetes mellitus )と診断され、紹介されたクリニックで血糖降下薬を処方されて内服を継続していた。50 歳ころから視力の低下と持続性蛋白尿を指摘され、腎臓内科を受診し食事指導を受けた。しかし、仕事が忙しく食事指導の内容を守れていなかった。1 年前から、足のしびれが出現するようになった。 Aさんの現在の状況のアセスメントで適切なのはどれか。

解説:正解は 3 の糖尿病性神経障害が疑われる、です。Aさんは40歳で2型糖尿病を発症して16年経過し、50歳から視力低下(糖尿病網膜症を示唆)・持続性蛋白尿(糖尿病性腎症を示唆)が出現しています。この3大合併症のうち視力低下・蛋白尿が既にあり、加えて1年前から足のしびれが出現したことから、3大合併症の最後のひとつ『糖尿病性神経障害』の発症を強く疑います。

選択肢考察

  1. × 1.  緑内障( glaucoma )が疑われる。

    糖尿病に関連した眼合併症としては糖尿病網膜症が最も多く、視力低下の原因として第一に考えるべき。重症の糖尿病網膜症から血管新生緑内障をきたす例はあるが、足のしびれは眼疾患と無関係。

  2. × 2.  運動療法が必要である。

    合併症が進行した本症例では運動療法の適応を個別評価する必要がある。神経障害があると転倒や足潰瘍、網膜症では眼底出血、腎症では蛋白尿悪化のリスクがあるため一律の推奨は不適切。

  3. 3.  糖尿病性神経障害( diabetic neuropathy )が疑われる。

    高血糖持続による神経細胞障害と血管障害で末梢神経が障害される。下肢の遠位から対称性・左右対称に出現する感覚異常(しびれ、痛み、感覚低下)は典型。両側下肢優位のしびれで糖尿病歴があれば第一に疑う。

  4. × 4.  高蛋白質の食事摂取が必要である。

    持続性蛋白尿は糖尿病性腎症を示唆し、病期に応じた蛋白質制限(一般に0.6〜0.8 g/kg/日)が推奨される。高蛋白食は糸球体内圧を上げて腎機能悪化を助長するため逆効果。

糖尿病の3大合併症は『し・め・じ』(神経障害→網膜症→腎症)の順で発症することが多いと覚える。神経障害は最も早く出現し、しびれ・感覚低下・自律神経症状(起立性低血圧、便秘、勃起障害)など多彩。診断には振動覚検査(C128音叉)、アキレス腱反射、モノフィラメント検査が用いられる。糖尿病足病変の予防には毎日の足の視診・清潔保持・適切な靴の着用が重要。糖尿病性腎症は『病期分類』で第1期腎症前期から第5期透析療法期に分けられ、Aさんは持続性蛋白尿があるため第3期(顕性腎症期)に相当する可能性が高い。

糖尿病3大合併症の症状の特徴を理解し、16年経過・他合併症併発という背景から足のしびれを糖尿病性神経障害と見抜けるかを問う問題。