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甲状腺術後合併症を解剖から理解

看護師国家試験 第110回 午後 第46問 / 成人看護学 / 内部環境と内分泌系

国試問題にチャレンジ

110回 午後 第46問

成人患者の甲状腺全摘出術後における合併症とその症状との組合せで正しいのはどれか。

  1. 1.乳び漏 ――――――――――――――― 嘔気
  2. 2.術後出血 ―――――――――――――― ドレーン排液の白濁
  3. 3.反回神経麻痺 ―――――――――――― 口唇のしびれ
  4. 4.低カルシウム血症( hypocalcemia ) ―― テタニー

対話形式の解説

博士 博士

今日は甲状腺全摘術後の合併症じゃ。まず甲状腺の周囲には何があるかの?

アユム アユム

背側に副甲状腺が4つ、気管の横に反回神経が走っています。

博士 博士

うむ、その解剖を押さえれば合併症も自然に理解できるのじゃ。

アユム アユム

副甲状腺を傷つけるとどうなりますか?

博士 博士

PTHが低下してカルシウムの吸収と再吸収が減り、低カルシウム血症になるのじゃ。

アユム アユム

それでテタニーが出るのですね。

博士 博士

そうじゃ。手足や口周囲のしびれに加え、手指が独特の形に固まる助産師の手が特徴的じゃ。

アユム アユム

クボステック徴候やトルソー徴候も低カルシウム血症のサインでしたね。

博士 博士

その通りじゃ。次に反回神経麻痺は何が出る?

アユム アユム

嗄声や嚥下障害、両側なら呼吸困難です。

博士 博士

正解じゃ。声帯の動きが悪くなるから声がかすれるのじゃ。

アユム アユム

術後出血は?

博士 博士

頸部は血腫ができると気道を圧迫して窒息するリスクがあるから、ドレーン排液の増加と頸部腫脹・呼吸困難に注意じゃ。

アユム アユム

乳び漏はリンパ管からの漏れで、脂肪を含む白濁した液体がドレーンに出るのですね。

博士 博士

うむ、頸部リンパ節郭清をしたときに起こりやすいぞ。

アユム アユム

低カルシウム血症とテタニーが組み合わせとして正しい理由がよくわかりました。

博士 博士

解剖的に周辺臓器が何かを押さえれば、術後合併症は怖くないぞい。

POINT

甲状腺全摘術では背側の副甲状腺損傷により低カルシウム血症をきたし、口周囲や四肢のしびれ、テタニー(手指屈曲・母指内転)、クボステック徴候、トルソー徴候が出現します。反回神経麻痺は嗄声・嚥下障害、術後出血はドレーン鮮血と頸部腫脹・気道狭窄、乳び漏はリンパ管損傷による白濁排液が特徴で、症状と合併症を解剖学的に結びつけて理解することが重要です。特に低Ca血症による窒息リスクや反回神経麻痺による誤嚥など、生命に関わる合併症は早期発見が鍵となります。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:成人患者の甲状腺全摘出術後における合併症とその症状との組合せで正しいのはどれか。

解説:正解は 4 です。甲状腺全摘術では甲状腺背側にある副甲状腺が損傷または摘出されることがあり、副甲状腺ホルモン(PTH)分泌低下から低カルシウム血症をきたします。神経筋の興奮性が亢進し、手足や口周囲のしびれ、手指の屈曲・内転を特徴とするテタニー(助産師の手)やトルソー徴候・クボステック徴候が出現します。

選択肢考察

  1. × 1.  乳び漏 ――――――――――――――― 嘔気

    乳び漏は頸部リンパ節郭清時などに胸管や乳び槽が損傷して起こる合併症で、脂肪分を含む乳白色のリンパ液がドレーンから大量に排出されるのが特徴です。嘔気は主症状ではありません。

  2. × 2.  術後出血 ―――――――――――――― ドレーン排液の白濁

    術後出血ではドレーン排液は鮮紅色〜暗赤色となり、量も増加します。頸部腫脹や圧迫感、気道狭窄による呼吸困難が早期発見のサインです。白濁は乳び漏の所見です。

  3. × 3.  反回神経麻痺 ―――――――――――― 口唇のしびれ

    反回神経麻痺では声帯運動が障害され嗄声・誤嚥・嚥下障害が主症状となります。両側麻痺では声門閉鎖による呼吸困難もきたします。口唇のしびれは低カルシウム血症の症状です。

  4. 4.  低カルシウム血症( hypocalcemia ) ―― テタニー

    副甲状腺の損傷・摘出によりPTHが低下するとCa吸収と再吸収が減り低Ca血症となります。神経筋興奮性亢進により口周囲・手足のしびれやテタニー(手指屈曲・母指内転の特徴的肢位)が生じます。

甲状腺全摘術の主な合併症は(1)術後出血(窒息リスク、気管切開セット準備)、(2)反回神経麻痺(嗄声・誤嚥)、(3)副甲状腺機能低下による低Ca血症(テタニー)、(4)乳び漏(頸部郭清時)、(5)甲状腺クリーゼ(Basedow病手術時)などです。低Ca血症はクボステック徴候(顔面神経叩打で顔面筋れん縮)やトルソー徴候(血圧計加圧で手の特徴的肢位)で早期発見可能です。

甲状腺術後の代表的合併症と症状の組み合わせを正確に結びつけられるかを問う問題で、解剖学的位置関係から機序を理解することが重要です。