腹圧性尿失禁の正攻法―骨盤底筋訓練と早めのトイレ誘導
看護師国家試験 第106回 午後 第79問 / 成人看護学 / 泌尿器・性・生殖器系
国試問題にチャレンジ
腹圧性尿失禁( stress incontinence of urine )のケアとして適切なのはどれか。2つ選べ。
- 1.下腹部を保温する。
- 2.骨盤底筋群訓練を促す。
- 3.定期的な水分摂取を促す。
- 4.恥骨上部の圧迫を指導する。
- 5.尿意を感じたら早めにトイレへ行くことを促す。
対話形式の解説
博士
今回は腹圧性尿失禁のケアじゃ。まず腹圧性尿失禁とはどんな状態かな?
サクラ
えっと、咳やくしゃみで漏れてしまう、というタイプですよね?
博士
その通り。咳・くしゃみ・ジャンプ・重い物を持ったときなど、腹圧が急に上がった瞬間に尿道閉鎖圧が負けて漏れてしまうのじゃ。
サクラ
原因は何ですか?
博士
骨盤底筋群の脆弱化。妊娠・分娩、加齢、閉経、肥満、慢性咳嗽などで骨盤底筋や尿道支持組織が弱ると起きやすい。中高年女性に多いのじゃ。
サクラ
じゃあ筋肉を鍛えればいいんですか?
博士
その通り!第一選択は骨盤底筋訓練、いわゆるKegel体操じゃ。肛門・腟・尿道をキュッと締めて数秒保ち緩める、を繰り返すのじゃ。
サクラ
どのくらいやればいいんですか?
博士
目安は1日3〜4回、各10回×3セットくらい。効果が出るまで2〜3か月はかかるから継続が大事。
サクラ
早めにトイレに行くのも有効なんですよね?
博士
うむ、膀胱に尿が多いほど腹圧時に漏れやすい。定期的に排尿して膀胱を空にしておくと、咳やくしゃみで漏れにくくなるのじゃ。
サクラ
下腹部を温めるのは?
博士
それは切迫性尿失禁のケアじゃ。冷えで膀胱が刺激され尿意切迫感が出るタイプに対しては保温が有効。腹圧性では効果なし。
サクラ
恥骨上部を押すのはどうですか?
博士
それは逆効果。恥骨上部を押すと膀胱圧が上がり、腹圧性では漏れを誘発する。自己排尿困難な神経因性膀胱のクレーデ法とは話が別じゃ。
サクラ
水分摂取を促すのは?
博士
水分は尿路感染や脱水予防に大事じゃが、骨盤底筋の強化とは別の話。ケアとしては不正解じゃ。
サクラ
尿失禁ってほかにもタイプがありますよね。
博士
うむ、切迫性(過活動膀胱)、混合性、溢流性(前立腺肥大など)、機能性(認知症・ADL低下でトイレに行けない)、反射性(脊髄損傷)など。タイプ別にケアが変わる。
サクラ
超高齢社会では尿失禁ケアは本当に重要ですね。
博士
その通り。羞恥心からなかなか相談できない方も多い。看護師が気づいて声をかけ、適切なケアにつなげることがQOL向上につながるのじゃ。
サクラ
骨盤底筋訓練と早めの排尿、覚えました!
POINT
腹圧性尿失禁は咳・くしゃみ・運動などで腹圧が上昇した際に不随意に尿が漏れる状態で、骨盤底筋群の脆弱化が主な原因です。第一選択のケアは、骨盤底筋訓練(Kegel体操)で尿道閉鎖圧を支える筋肉を強化することと、早めのトイレ誘導で膀胱内尿量を少なく保つことです。下腹部保温は切迫性尿失禁に有効な介入で腹圧性には効果がなく、恥骨上部圧迫はむしろ漏れを誘発するため不適切です。羞恥心から相談されにくい症状だからこそ、看護師が積極的にアセスメントし、タイプに応じた適切な指導でQOLを支えることが重要です。
解答・解説
正解は 2 ・ 5 です
問題文:腹圧性尿失禁( stress incontinence of urine )のケアとして適切なのはどれか。2つ選べ。
解説:正解は 2 と 5 です。腹圧性尿失禁は、咳・くしゃみ・重い物を持ち上げる・ジャンプなどで腹圧が上昇した際に、骨盤底筋群の脆弱化と尿道閉鎖圧不足から不随意に尿が漏れる状態で、妊娠・分娩・加齢・閉経・肥満・慢性咳嗽が危険因子。中高年女性に多く見られます。ケアの基本は①骨盤底筋訓練(Kegel体操)で尿道を支える筋肉を強化すること、②腹圧がかかる前に尿を排泄しておくこと(早めのトイレ誘導・定期的排尿)です。下腹部保温は切迫性尿失禁で冷えによる膀胱刺激を防ぐ目的で用いるもので、腹圧性では適応がなく、恥骨上部圧迫は腹圧上昇により逆に漏れを誘発します。
選択肢考察
-
× 1. 下腹部を保温する。
下腹部保温は、冷えによる膀胱刺激で尿意切迫感が起こる切迫性尿失禁には有効だが、骨盤底筋の脆弱が原因の腹圧性尿失禁には効果がない。
-
○ 2. 骨盤底筋群訓練を促す。
Kegel体操は肛門・腟・尿道を意識的に収縮・弛緩させることで骨盤底筋を強化し、尿道閉鎖圧を高める第一選択の保存療法。エビデンスも確立している。
-
× 3. 定期的な水分摂取を促す。
水分摂取は尿路感染予防や脱水予防に重要だが、骨盤底筋の機能改善には関係せず、腹圧性尿失禁の直接的ケアではない。むしろ過剰摂取は失禁を悪化させる可能性がある。
-
× 4. 恥骨上部の圧迫を指導する。
恥骨上部(膀胱部)の圧迫は腹圧を上昇させ、腹圧性尿失禁では漏れを誘発する。自己導尿困難な神経因性膀胱での排尿誘発(クレーデ法)とは目的が異なる。
-
○ 5. 尿意を感じたら早めにトイレへ行くことを促す。
膀胱内尿量が多いほど腹圧上昇時に漏れやすい。尿意を感じたら早めに排尿して膀胱を空にし、くしゃみや咳の際の漏れを予防することが有効。
尿失禁の分類と主な原因:①腹圧性(骨盤底筋脆弱、中高年女性)、②切迫性(過活動膀胱、加齢・脳血管障害)、③混合性(腹圧性+切迫性)、④溢流性(尿排出障害、前立腺肥大等)、⑤機能性(認知症・ADL低下によりトイレにたどり着けない)、⑥反射性(脊髄損傷)。腹圧性のケアとしては骨盤底筋訓練(1日3〜4回、各10回×3セット目安)、体重コントロール、禁煙(慢性咳嗽の軽減)、便秘予防も重要。保存療法で改善しない場合はデュロキセチン(SNRI)、TVT/TOT手術などが選択される。
尿失禁のタイプ別ケアを理解しているかを問う問題。『腹圧性=骨盤底筋訓練+早めのトイレ誘導』『切迫性=下腹部保温・膀胱訓練』という区別がカギ。
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