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透析導入期の頭痛に注意!不均衡症候群と血液透析の基本

看護師国家試験 第112回 午後 第79問 / 成人看護学 / 泌尿器・性・生殖器系

国試問題にチャレンジ

112回 午後 第79問

血液透析について正しいのはどれか。

  1. 1.合併症は腹膜炎(peritonitis)が多い。
  2. 2.食事はカルシウムを制限する。
  3. 3.導入初期には不均衡症候群(disequilibrium syndrome)が起こる。
  4. 4.導入の原因疾患はIgA腎症(IgA nephropathy)が最も多い。
  5. 5.透析に用いる半透膜はタンパク質が通過する。

対話形式の解説

博士 博士

今回は血液透析の問題じゃ。5つの選択肢があるから、一つずつ整理していこう。

サクラ サクラ

導入初期に頭痛や吐き気が出るというのはどういうことですか?

博士 博士

それが不均衡症候群じゃ。透析で血中の尿素などが急速に除去されると、血液脳関門のために脳内の尿素はすぐには減らず、血漿と脳内で浸透圧差ができる。水が脳に移動して軽度の脳浮腫が起こるのじゃ。

サクラ サクラ

だから頭痛や悪心、ひどいと意識障害まで起こすんですね。

博士 博士

その通り。導入初期は透析時間を短くし、血流量を下げ、小さいダイアライザーを使って緩やかに除去することで予防する。

サクラ サクラ

腹膜炎は血液透析の合併症ではないんですか?

博士 博士

腹膜炎は腹膜透析(CAPD)の代表的合併症じゃ。腹腔内にカテーテルを置いて透析液を出し入れするから、感染が起こると腹膜炎になる。血液透析の合併症は血圧低下、シャントトラブル、筋痙攣、掻痒、長期で透析アミロイドーシスなどじゃ。

サクラ サクラ

食事でカルシウムは制限するんですか?

博士 博士

いいや、制限するのはカリウム・リン・ナトリウム・水分じゃ。カルシウムはむしろ骨代謝維持のため補給することが多く、リン吸着薬(炭酸カルシウムなど)を使う。

サクラ サクラ

なぜカリウムとリンを制限するんですか?

博士 博士

カリウムは不整脈・心停止のリスクを上げ、リンは副甲状腺ホルモンの上昇と異所性石灰化、透析骨症につながるからじゃ。

サクラ サクラ

導入原因疾患で一番多いのは?

博士 博士

わが国では糖尿病性腎症が約40%で最多、次いで慢性糸球体腎炎、腎硬化症じゃ。IgA腎症は慢性糸球体腎炎の一種じゃが、最多ではない。

サクラ サクラ

半透膜の性質は?

博士 博士

分子量5000〜30000程度までの小分子は通すが、アルブミンのような大きなタンパク質は通さん。これにより尿素、クレアチニン、カリウム、リンなどの老廃物だけを除去できるのじゃ。

サクラ サクラ

シャントのケアで注意することは?

博士 博士

シャント側の腕で採血・血圧測定・重いもの運搬は禁止。スリル(振動)と血管雑音を毎日自分で確認してもらう。閉塞や感染、スチール症候群、静脈瘤などの合併症に注意じゃ。

サクラ サクラ

透析患者の生活指導で大事なのは?

博士 博士

塩分6g/日未満、水分管理、カリウム・リン制限、服薬遵守、体重管理、シャント保護、感染予防じゃ。週3回・1回4時間の透析は時間的・心理的負担も大きいから、QOLを支える看護が重要じゃな。

サクラ サクラ

透析の全体像が見えてきました。

POINT

血液透析の導入初期に特徴的な合併症が不均衡症候群で、尿素などの溶質が血中から急速に除去される一方、脳内の除去が遅れて浸透圧差が生じ、脳浮腫による頭痛・悪心・意識障害を引き起こします。予防には透析時間の短縮、血流量の低下、小さいダイアライザーの使用が有効です。腹膜炎は腹膜透析の合併症で、血液透析の主な合併症は血圧低下・シャントトラブル・筋痙攣・透析アミロイドーシスなどです。食事制限はカリウム・リン・ナトリウム・水分が中心で、わが国の透析導入原因疾患は糖尿病性腎症が最多、半透膜は小分子のみを通しタンパク質は通しません。長期透析患者への看護では、シャント保護・感染予防・食事管理・服薬遵守・QOL支援が一体となった支援が求められます。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:血液透析について正しいのはどれか。

解説:正解は 3 です。血液透析導入初期には『不均衡症候群』が起こりやすく、頭痛・悪心・嘔吐・倦怠感・痙攣・意識障害などの症状を呈します。これは透析で血中の尿素などの溶質が急速に除去される一方、血液脳関門のため脳内の溶質除去が遅れ、血漿と脳内の浸透圧差が生じて脳浮腫を起こすことが原因です。導入初期は時間短縮・血流量低下・小さいダイアライザー使用などで緩徐に透析を行い、回避します。

選択肢考察

  1. × 1.  合併症は腹膜炎(peritonitis)が多い。

    腹膜炎は腹膜透析(CAPD)の主な合併症。血液透析の主な合併症は血圧低下、シャントトラブル(閉塞・感染・瘤)、不均衡症候群、筋痙攣、長期で二次性副甲状腺機能亢進症・透析アミロイドーシスなど。

  2. × 2.  食事はカルシウムを制限する。

    血液透析患者の食事制限の中心はカリウム・リン・ナトリウム・水分。カルシウムはむしろ骨代謝維持のため適切に補給することが多く、制限対象ではない。

  3. 3.  導入初期には不均衡症候群(disequilibrium syndrome)が起こる。

    尿素などの溶質除去速度の差で血漿と脳内に浸透圧勾配が生じ、脳浮腫による頭痛・悪心・意識障害が起こる。初回透析で特に注意。

  4. × 4.  導入の原因疾患はIgA腎症(IgA nephropathy)が最も多い。

    わが国の透析導入原疾患は糖尿病性腎症が最多(約40%)で、慢性糸球体腎炎、腎硬化症と続く。IgA腎症は慢性糸球体腎炎の一部だが最多ではない。

  5. × 5.  透析に用いる半透膜はタンパク質が通過する。

    ダイアライザーの半透膜は分子量約5000〜30000程度までの小分子を通過させるが、アルブミンなど大きなタンパク質は通過しない。これにより老廃物のみを除去できる。

血液透析は週3回・1回4時間が標準。バスキュラーアクセスとしてシャント(動静脈瘻)が第一選択で、術後はスリル・音の確認、駆血・採血・血圧測定を避ける指導が必要。合併症は血圧低下(除水過多)、不均衡症候群(導入期)、筋痙攣、掻痒、透析アミロイドーシス(β2-MGの蓄積、手根管症候群)、長期で二次性副甲状腺機能亢進症(P上昇・活性型ビタミンD低下)。食事は塩分6g/日未満、カリウム2000mg/日以下、リン制限、水分はドライウェイトと尿量を考慮。

血液透析の主要合併症(不均衡症候群)、腹膜透析との違い、原因疾患、半透膜の性質、食事制限を総合的に問う問題。