広汎子宮全摘後の排尿トラブル、なぜ起こる?退院指導のカギ
看護師国家試験 第112回 午前 第52問 / 成人看護学 / 泌尿器・性・生殖器系
国試問題にチャレンジ
広汎子宮全摘出術を受けた患者への退院後の生活に関する説明で正しいのはどれか。
- 1.「術後2週から性交は可能です」
- 2.「定期的に排尿を試みてください」
- 3.「調理のときは手袋をしてください」
- 4.「退院当日から浴槽の湯に浸かることができます」
対話形式の解説
博士
今日は広汎子宮全摘出術を受けた患者さんへの退院指導じゃ。術式の侵襲範囲を理解すれば、なぜ特定の指導が必要かが見えてくるぞ。
アユム
広汎子宮全摘出術って、単純子宮全摘とどう違うんですか?
博士
単純子宮全摘は子宮体部と頸部だけを摘出するが、広汎術式は子宮・卵管・卵巣・腟の一部・基靱帯、さらに骨盤内リンパ節までを広範に摘出する。主に子宮頸癌のⅠB期・Ⅱ期で行われるのじゃ。
アユム
そんなに広く取るんですね。影響も大きそうです。
博士
その通り。基靱帯を切離する際に、骨盤内自律神経である下腹神経や骨盤内臓神経が損傷されやすい。これが排尿や排便をコントロールする神経なのじゃ。
アユム
だから排尿障害が起こるんですね。
博士
そう。膀胱の感覚が鈍って尿意を感じにくくなったり、膀胱の収縮が弱まって残尿が増えたりする神経因性膀胱が生じる。これが選択肢2の根拠じゃ。
アユム
尿意がないなら、時間を決めて排尿するしかないんですね。
博士
その通り。2〜3時間ごとの時間排尿、残尿測定、必要に応じて自己導尿を指導する。残尿が多いと尿路感染の温床になるからな。
アユム
性交については術後2週で大丈夫ですか?
博士
それは早すぎる。腟断端の治癒には通常6〜8週かかるから、性交再開は術後1〜2か月後に医師の診察で断端治癒を確認してからじゃ。
アユム
入浴も同じ理由で遅らせるんですね。
博士
そうじゃ。退院当日の浴槽入浴は腟断端や創部からの感染リスクが高い。しばらくはシャワー浴にとどめ、治癒確認後に入浴を再開する。
アユム
調理時の手袋は乳癌術後の指導でしたよね?
博士
その通り。腋窩リンパ節郭清を伴う乳癌術後では上肢のリンパ浮腫と皮膚感染予防のため手袋を勧める。子宮癌術後は下肢リンパ浮腫が問題で、手の保護は不要じゃ。
アユム
下肢リンパ浮腫の予防はどうするんですか?
博士
長時間の立位・正座を避け、弾性ストッキングを使用し、下肢の皮膚を清潔に保って蜂窩織炎を予防する。小さな傷や虫刺されから感染が広がることがあるからな。
POINT
広汎子宮全摘出術は子宮頸癌の根治術として行われ、基靱帯を含む広範な切除に伴い骨盤内自律神経が損傷されやすく、神経因性膀胱が高頻度で生じます。退院後は尿意が鈍くても時間を決めて排尿を試みる「時間排尿」が排尿リハビリの基本であり、残尿による尿路感染を予防する重要な指導です。性交や入浴は腟断端の治癒を待ってから再開し、下肢リンパ浮腫の予防として皮膚の清潔保持と弾性ストッキングの使用を指導します。術式の侵襲範囲と合併症の機序を結びつけて患者背景を理解することが、個別性のある退院指導につながります。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:広汎子宮全摘出術を受けた患者への退院後の生活に関する説明で正しいのはどれか。
解説:正解は 2 です。広汎子宮全摘出術では、子宮・卵管・卵巣・腟の一部・基靱帯・所属リンパ節までを広範囲に摘出するため、膀胱・直腸を支配する骨盤内自律神経(下腹神経・骨盤内臓神経)が損傷されやすく、術後に神経因性膀胱(排尿困難、尿意の消失、残尿の増加)が高頻度で生じます。退院後は尿意が乏しくても時間を決めて排尿を試みる「時間排尿」が重要で、残尿感・発熱・排尿時痛があれば尿路感染を疑って受診するよう指導します。
選択肢考察
-
× 1. 「術後2週から性交は可能です」
腟断端の治癒と感染予防の観点から、性交再開は術後1〜2か月以降で、医師の診察により断端治癒を確認してから許可される。術後2週では早すぎる。
-
○ 2. 「定期的に排尿を試みてください」
広汎子宮全摘出術では骨盤内自律神経が損傷され、尿意の低下や排尿困難(神経因性膀胱)が起こりやすい。尿意に頼らず2〜3時間ごとなど時間を決めて排尿する指導が適切。
-
× 3. 「調理のときは手袋をしてください」
手袋で手指の外傷を防ぐ指導は、腋窩リンパ節郭清を伴う乳癌術後の上肢リンパ浮腫予防で行う。子宮全摘出術後は下肢や外陰部のリンパ浮腫が課題となるため、調理時の手袋は不要。
-
× 4. 「退院当日から浴槽の湯に浸かることができます」
腟断端が完治する前の浴槽入浴は、腟からの上行感染や創部感染のリスクを高める。退院後しばらくはシャワー浴とし、診察で治癒確認後に入浴を再開する。
広汎子宮全摘出術後に注意すべき主な合併症は、神経因性膀胱・下肢リンパ浮腫・腸閉塞・深部静脈血栓症・卵巣欠落症状(両側卵巣摘出時)。排尿リハビリテーションとしては、時間排尿、腹圧排尿、間欠的自己導尿、残尿測定などが行われる。下肢リンパ浮腫予防としては、長時間の立位・正座の回避、弾性ストッキングの使用、皮膚の清潔保持(蜂窩織炎予防)が重要。
広汎子宮全摘出術後に特有の合併症(神経因性膀胱)を踏まえた退院指導を問う問題。術式の侵襲範囲と合併症の機序を結びつけて考える。
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